貸金業法改正によって変わる「借り手のリスク」と「業者の姿勢」|トピックスファロー

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2012年6月21日
貸金業法改正によって変わる「借り手のリスク」と「業者の姿勢」

一度に多額の借金をしたり、いろんなところから借金をして多重債務に陥ったりする債務者を減らすため、貸金業者を規制する貸金業法が改正されました。改正貸金業法はどんな役割を持つのか、どんなことが変わるのか、といったことを簡単にご紹介します。

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2010年6月に貸金業法が改正

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貸金業務を行う日本の貸金業者を取り締まる法律の貸金業法が2010年6月18日に改正・施行されました。

今回の貸金業法の改正ポイントは主に4つで、

  1. 貸金業の適正化
  2. 過剰貸付の抑制
  3. 金利体系の適正化
  4. ヤミ金融対策の強化

となっています。

この貸金業法改正の目的は大きく二つあり、「安心して利用できる貸金業界の構築」と「多額の借金・多重債務問題の解決」です。そして上記の改正ポイントの1番目と3番目と4番目が前者、2番目が後者を目的とする改正です。


「安心して利用できる貸金業界の構築」について

改正ポイント1番目の「貸金業の適正化」では参入規制の強化や執拗な取立ての規制、債務者の自殺によって保険金が入る保険加入に対する規制、契約内容を書面で事前交付することを義務化することなどが定められました。

改正ポイント3番目の「金利体系の適正化」は出資法の上限金利を20%に引き下げることでグレーゾーン金利をなくす、というものです。

改正ポイント4番目の「ヤミ金融対策の強化」では、超高金利での貸付を行う業者や無登録で営業している業者に対する取り締まりや罰則を強化するという内容です。

このように、「こわくない貸金業の構築」を目指した法律となっていますね。


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「多額の借金・多重債務問題の解決」について

こちらが今回の法改正で話題となった、借り手に大きく影響を与える改正です。

改正ポイント2番目の「過剰貸付の抑制」を簡単に言うと、借りられる上限を設定するということと債務者の総借入残高を全貸金業者が把握するということが新たに定められたのです。

以下、こちらの「多額の借金・多重債務問題の解決」を図るための過剰貸付の抑制について簡単にご説明します。

過剰貸付の抑制はどのように行われるか?

債務者が債務問題に陥る原因で一番主なものは、返済能力を超える借り入れを行うから といえます。

こうした無理な借り入れを抑制するために今回の法改正でできたルールが

  1. 借りられる上限額を設定する 「総量規制」
  2. 債務者の信用情報を共有する 「指定信用情報機関制度」

の二つです。

二つのルールを要約すると、多額の借金を背負わないようにするのが総量規制、いろんな所から少しずつ借りて結局多額の借金を背負ってしまうということがないようにするのが信用情報制度です。

1.総量規制について

総量規制は貸金業者側から見ると、返済能力調査義務を負うということ、借り手側からすると自分の返済能力に見合ったお金しか借りられないということになります。

それをどう実現するかというと、
『個人向け貸付は借り入れ総額が借り手の年収の3分の1以下でなければ、してはいけない』
というルールで貸金業者の貸付を制限するのです。

これによって、業者は債務者の年収を調べ、返済能力を確認してから貸付を行わなければなりません。
そして、借りる側も自分の年収を証明する収入証明書類を貸金業者に提出し、返済できる範囲のお金しか借りることができなくなりました。

ただしこのルールが適用される条件は2つあり、1つ目は新たに借り入れする額が50万円以上の場合、2つ目は複数の貸金業者からの借り入れ総額、すなわち総借入残高が100万円以上になる借り入れの場合、のみが当てはまります。

前者は多額の借金を背負うリスクを回避するため、後者は多重債務を避けるためのルールといえます。
そして、後者の「総借入総額」を調べるために設けられたのが後で述べる「信用情報機関制度」になります。

総量規制の例外パターン

総量規制の趣旨に合わないいくつかの条件では例外措置がとられます。

  • 配偶者貸付

    総量規制は個人に対して適用されるため、収入が少ないか収入のない専業主婦(夫)は貸付上限額が非常に少なくなってしまうため、配偶者と自分の年収を合算した金額が総量規制に用いられます。その際は配偶者の同意書と配偶者であることを証明する書類(住民票など)が必要になります。

  • 個人事業主への貸付

    個人事業主が新規で多額の貸付を受ける場合も事業計画や収支計画、決算書などの審査で総量規制以上の借り入れが可能になります。

  • 例外となるその他の貸付

    そのほかにも緊急の医療費の貸付など、「社会通念上必要と認められる費用のための貸付」であれば総量規制の対象外となります。

2.指定信用情報機関制度について

指定信用情報機関制度は、貸金業者が借り手の総借入額などの信用情報を把握するためのものです。
国が指定する信用情報機関は全ての貸金業者から債務者の信用情報を受け取り、貸金業者からの問い合わせによってその情報を提供します。

信用情報としては、氏名、住所、電話番号、勤務先、本人確認書類情報、債務履歴、借入残高、支払いの遅延の有無、などが登録されます。

これによって借入残高の総額が100万円以上の貸付を受ける場合には年収の審査を受ける必要があり、多重債務問題を解決することができます

貸金業法の改正は債務者を守るため

借りられるお金が年収の3分の1以下となったため大きい額の借り入れはできなくなってしまいましたが、債務者の返済能力に見合った額のみを貸し付けるというのは借り手を守るためです。

本当に必要なお金の場合は例外措置をとってもらえるため、業者や法律の専門家に相談してみると良いでしょう。

貸金業法改正によって、「たくさん借りたい人」と「たくさん貸したい業者」が抑制され、「多額の借金で困る人」と「返済されずに困る業者」が少ない世界に変わっていくといいですね!

著者:塩屋 謙

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職業は編集・校正、そしてWEBライターでもあります。興味の範囲を広げつつ、様々な記事を書いています。