うつ病・うつ状態ってなぁに?
近年、聞くことが多くなった「うつ病」。最近では国民病とまで言われていますね。
平成18年厚生労働科学研究『心の健康についての疫学調査に関する研究』(http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/epi/Reports/H18WMHJR/H18WMHJR01.pdf)によれば、日本では過去12ヶ月にうつ病を経験した人数は、病院を受診していない人も含めて210万人以上という統計があり、だれにでもかかる可能性がある、決して見逃すことのできない病気なのです。
あなたの周りにもうつ病ないしは、うつ状態の人はいませんか?もし自分の大切な友人、家族がうつ病にかかったら・・・あなたはどうしますか?
うつ病、うつ状態を理解し、大切な人を守るというのは決して簡単なことではありません。それでも、周囲の理解がなければ、うつ病を患っている人はどんどん苦しんでしまいます。
この記事を通して、まずは「うつ病、うつ状態」について理解を深め、大切な人を守るためにできることを一緒に考えていくことを目的としています。
私自身も現在、双極性障害(躁うつ病)、人格障害など様々な精神病を患っています。その経験の上で感じたことや、「こう接してほしい」といったホンネまで共有できたらと思っています。
うつ病は病気であることを理解してほしい
まず、「うつ病」についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。心の病?気の持ちよう?マイナス思考?
おそらくうつ病というものに対して、認知度は高くてもその本質まで知っている人はあまりいないと思います。
ちなみに、上記の3つはいずれも間違いではありませんが、正解でもありません。
国際医療福祉大学教授の上島国利氏によれば、うつ病は「脳の病気」として定義されているほか、「気分が強く落ち込み憂うつになる、やる気がでないなどの精神的な症状だけでなく、眠れない、疲れやすい、身体がだるいといった“身体的”な症状が現れることのある病気」と記されています。
私も「うつは身体の病気でもある」というポスターを薬局や病院で度々目にしますし、身体的にも上記の他に微熱、痛みや痙攣(ぴくつき)といった症状とも闘っています。
私が記事の中で声を大にして主張したいのは「うつ病に対する理解を深めて欲しい」、「うつ病は決して気の持ちようなどではなく、れっきとした病気であり、心だけでなく身体の病気でもある」ということの2点です。
実際に病院で考えたこと
私がうつ病を患っていることは前に述べましたが、実際に精神科・心療内科に通院し始めたのは20歳頃(5年前)です。正直、初めて病院行くのにも勇気がいりました。
通う必要があると分かっていても、何となく「精神科」とかって文字を目の当たりにすると、なんかレッテルを貼られてしまうような気がするというか、病気と認めてしまうような気がするというか・・・。
しかし、実際病院へ行って驚いたのは、待合室で診察を待つ人の多さでした。ここだけの話、みんな元気そうで、どこも悪いところなんて無さそうというのが第一印象でした。私はその頃にはかなり衰弱していたので、余計にそう思えたのかもしれません。
でも、心の中では「元気そうに見えても、みんなどこかしら病んでいるものだなぁ」と改めて思ったのを今でも覚えています。
おなかいっぱいの薬を飲んだけれど、心と身体は限界に
いざ、診察が始まってみると、すぐに「うつ状態」とされ、後に正式に「うつ病」や「双極性障害」、「人格障害」など数えきれないほどの病気が告げられました。正直、薄々は感づいていたものの、いざ病名の宣告を受けるとショックでした。
結局、入院を私が拒否したため、それだけでお腹がいっぱいになるほどたくさんの薬を処方され、自宅療養と通院を余儀なくされました。
それでも薬で自分の身体と心をごまかしながら、大学をギリギリで卒業し、就職までしたものの、わずか二ヶ月半で病状はさらに悪化し、長期療養をすることになりました。慣れない寮生活に、病気の悪化。収入も無く、治療費ばかりかさむ不安に苛まれています。現在は仕事を一時的に休み、実家で静養するに至っています。
うつ病の人(筆者)のホンネとは
周りの目が気になるというのが一番苦しいところです。そういう病気なのだから、と割り切ってしまえばいいのだけれど、それが割り切れない病気でもあります。
というのも、うつ病を患っている人の大半が不安障害など、精神障害を併発している可能性が大きいからです。私もそうでした。
そんな中で感じたこと、ホンネの部分を明らかにしていこうと思います。それがうつ病で苦しむ人への接し方に関係があるからです。
まず、うつ病患者、周囲の人達に認めなければいけないのは、繰り返しますが、「うつ病」はれっきとした病気であり、決して「気の持ちよう」ではないのです。
健常者であれば、「気分」で済まされることであっても、うつ病を患っている人にとっては、それが精神状態の不安定を招くだけでなく、先に述べた身体症状としても現れてしまうのです。
長期療養中に仕事の話は避けて
うつ状態に苦しむ患者に「頑張って」は禁句だということは広く知られています。
私自身もよく言われた経験がありますが、「何を頑張ればよいのか」分からず、何かを頑張ろうと思っても、身体がついてこないことへのイライラが増幅するだけで、結果的に自分を追い込んでしまうことになります。
また、私は寮生活で、長期療養と決められてからもしばらく寮で静養していました。嫌でも会社の同期や先輩と顔を合わせることになるわけです。
そんなとき、食事に誘ってもらったり、「体調どうだ?」というように気軽に話しかけてくれるのはとてもありがたいことでした。
しかしながら、仕事の話になると気分が沈んでしまうのは事実です。周りの同僚にその気がなくても、仕事の話が始まると、「本来は自分も話に加われるはずなのに・・・」となんだか仲間外れというか、置いて行かれているような不安に駆られたのです。
そのため、私は実家へ帰ることを選択しました。要は、仕事の話など、当人が話に入れないような話題はNGであり、違う話題を提供してくれる方が気持ち的に楽になれました。
どんな言葉や態度がいいのか、悪いのか
前章で述べたように、うつ病に苦しむ人の傾向として、自分自身の中にストレスや気持ちを溜め込む癖があります(それが「病気」の傾向でもある)。そんな人に対して周囲はどう接していけばよいのかを考えてみたいと思います。
一番苦しい状態を理解してもらえないのはツライ
まず、「頑張って」という言葉が禁句なのは知っている人も多いですが、さらに心に深い傷を負わせる(少なくとも自分は傷ついたと感じる)言葉があります。
それは、
「お前だけが苦しい(辛い)わけじゃない」
「もっとお前より苦しい状況でも頑張っている人はいる」
「うつ病は贅沢病」
これは私自身が言われた経験がある言葉です。
上記の二つは頭では理解しているものの、現実問題として、うつ病というものは経験したことがある人にしか分からないような、とてつもない苦しさ、辛さがあります。正直、想像できないほど苦しいものです。
上記の言葉は、確かに正論かもしれませんが、接し方としては良くないです。なぜなら、うつ病に苦しむ人にとって、他人のことを考える余裕などなく、一番苦しいのはいつも自分であり、誰にも結局は分かってもらえないという不安を常に抱いているからです。
また「贅沢病」と言われた件については、自分の中では好きで仕事を休んでいるわけでもないのに「仕事休めてラッキーでしょ?」や、自分が執筆活動をしていることを知っている友人に「小説のネタにできるでしょ?」などと言われ、深く傷ついた経験がありました。
独りよがりなのは重々承知ですが、つまるところ、「僕の何が分かる?」という心理に陥って、結果的に孤立を深める原因にもなった言葉です。
声をかけられ、気持ちを共有してくれるとうれしい
また、私の場合、「話きくから何でも相談して!」というのもあまりいい言葉として受け入れることはできませんでした。というのも、うつ状態にある人は漠然とした不安に駆られているケースが多く、周りの人の反応や言動に過敏になっており、ちょっとしたことでも「裏切られた」、「特別扱いされている」、「同情されている」というような気持ちになってしまうのです。
多くの患者はこの状態を嫌うため、人に頼ることを嫌がります。それゆえ、自分から人に頼ることを拒絶し、自分の中にストレスを溜め込んでしまいがちなのです。少なくとも私は誰にも頼ることもせず、親にすらなかなか言い出せずにいました。
病気のことを知っている友人から「相談してね」と言われても、「普段から心配かけているのに相談なんてできるか」と、本当は話を聞いてもらいたいのに、相反する気持ちで自分の中で無理矢理気持ちの折り合いをつけようとしてしまっていました。そういった心理状態に追い込まれるのも病気の特徴でもあるのです。
さらに、うつ病に苦しむ人には原因が特になくただ漠然と不安を抱えているケースもあります。理由も無く、ただただ苦しくて、気分が沈んでいます。そういった人は、いくら元気を出させようと励ましても、かえってプレッシャーとなって逆効果になってしまうこともあることを覚えておいてください。
大事なのは、無理に励ますのではなく、気持ちを積極的に共有してあげることであると思います。言い出すのを待つのではなく、苦しんでいる友人がいたら、自分から声をかけて(出来る限り「気を遣っている」素振りを見せないで)あげるのがよいと思います。
難しいことですが、そういった気持ちから出る何気ない一言であってもそれで患者は充分に救われることもあるのです。
もしも大切な人がうつ病にかかったら?
まず、うつ病、うつ状態のサインを見逃さないことが大切です。苦しんでいる人は、自分の中では折り合いがつけられず、常に不安な気持ちでいます。
誰にも相談することができず、SNS等にあてもなく投稿することが多いです。これは間違いなく、SOSのサインです。
自分から誰かに相談することもできないため、誰でもいいから自分の気持ちを共有して欲しい、そういった心情の表れなのだと思います。
私自身もこの経験は多くありますが、それを見た友人から、電話やメールが届くだけで自分が見捨てられていないというか、孤独じゃないといった安心感を得られることができたのです。
あなたの周りにもこういった人はいないでしょうか?
タイムラインを見て、「いつもマイナス思考の発言ばっかり」とか「構ってちゃん」、「メンヘラ」(※著者は「メンヘラ」という言葉が好きではありません。一種の差別用語だとさえ思っています。当人は本気で悩んで苦しんでいるのですから)などと思わず、このSOSをきちんと受け止めてあげることが、たとえ患者の全てを理解できなくとも、大切な人を守るための大切な一歩なのだと思います。
自分じゃなくても誰かが助けてくれるだろう、と流すのは禁物です。誰からも返事がないと、より一層孤立を感じることになってしまうからです。
受け入れ、認め、尊重してあげる
実際、もし大切な人がうつ病にかかってしまったら、まずうつ病に対する理解を踏まえた上で言動に気を付けることが大切になってきます。
また、うつ病、うつ状態というものは患者の数だけその症状があるといっていいほど、対応が難しいものです。その人が今何を望んでいるのか、その人の性格や考えを尊重し、それに合った言動が求められます。
当然ですが、頭ごなしに否定するのはよくありません。一つの言葉を否定しただけのつもりでも、患者にとっては「自分そのもの」を否定されたと感じる可能性が高いからです。
そして、うつ病は長い時間をかけてゆっくりと症状を改善してゆく必要があります。ちょっと調子がよく見えても、無理させることなく、しっかり休ませてあげることも回復への大切な配慮です。
この病気を経験していない人にとって、患者と接することは歯痒い思いをすると思いますが、それも含めて大切な人を守るために受け入れて、認めてあげる、尊重してあげることが大事なのです。
大切な人をまもるために理解を深めてほしい
大事なことなので、何度でもこの言葉を繰り返します。うつ病はれっきとした病気であり、決して「気の持ちよう」ではありません。そして、心だけの病気でもありません。身体の病気でもあるのです。
あなたの周りのすでに苦しんでいる人、もしくはSOSを出している人、少なからずいるはずです。まず、あなたができることは、うつ病、うつ状態への理解を深め、その人に合った対応を取ることなのです。
その中に、その人を想う気持ちを織り込んで接してあげてください。うつは、絶対に一人では治せない病気です。ただ、周囲の理解と助けがあれば、必ず立ち直ることできるものであると私は信じています。
一人で治すのを待つのではなく、「あなた」が一歩を踏み出して、気持ちを共有しながら、周囲と恊働しながら大切な人を守っていく必要があるのです。うつは誰でもかかる可能性があるのです。
もしかしたら、あなただってうつ状態に陥る可能性すらあるのです。そんなとき、どんな言葉をかけてもらえたら嬉しいでしょう。どんな態度で接してもらえたら嬉しいでしょう。それを考え出すことこそが大切な人を守るための気持ちであり、その想いを具現化する一歩なのです。