よく、うつ状態は「心がくしゃみをしている状態」、うつ病は「心が風邪を引いた状態」などと言いますが、実際はどうなのでしょうか?
精神疾患のひとつである「うつ」って、そんな簡単に言い切れてしまえるものなのだろうか?と思ってしまいます。
それに、「うつの卵」の人から「大うつ」の人まで、うつひとつとっても、それこそピンキリですからね。
ここでは、そんなうつになった人の体験談をもとに、検証していきたいと思います。
スポーツ、運動でうつ病克服
リサイクルショップオーナー・文彦さんの場合
「それキモチ悪いですよ、店長」
なんて、常連のお客さんから忠告を受けても、
「だって、殺すのって可哀想じゃない」
なんて、ニコニコしながら答えるので、ついつい周りも文彦さんのペースに巻き込まれてしまう、といった感じでした。
こんな文彦さんにある転機がやってきました。
お店の家賃の値下げ交渉で、土地のオーナーともめたのです。
もう10数年土地を借りてるのに、土地のオーナーが値下げに全く応じないばかりか、聞く耳さえ持ってくれなかったそうです。
交渉に踏んばる文彦さんに対し、土地のオーナーは次第に文彦さんを忌み嫌い、遠ざけ、
やがてはだんだんと迫害を与えるようになったのです。
底意地の悪い陰湿な嫌がらせの数々。
これには日頃穏やかな文彦さんも頭を抱え込みました。
文彦さんはお店を閉めた後、しばらく無職となりました。
そして学生の頃大好きだったフットサルに精を出すようになりました。
毎日フットサルで汗だくになるまでプレイし、家へ帰って熱いお風呂に入る日々。
そのころの文彦さんは、完全にうつ病一歩手前の状態だったそうです。
また、お店を閉鎖した後、空の巣症候群になってしまい、何をするのもやる気が起きず、ふと思いついたのが、かつて若いころ夢中になっていたフットサルだけだった、危なかった、とも言ってました。
今、文彦さんは元気に別の地域でリサイクルショップを経営しています。
客として私は、店長である文彦さんと仲が良かったものですから、心配もしましたし、新しいお店は私の家からは遠いけれど、文彦さんの為にはこれで良かったんだ、と思っています。
既婚の躁鬱患者がホステスに一目ぼれ、その結末は・・・
理髪店経営・耕治さんの場合
耕治さんは自分の理髪店をとても綺麗にしています。
「ルルルル~ヘイヘ~イ」
鼻歌交じりで朝、開店前から掃除にご機嫌な様子ですが、耕治さんには実は、躁鬱に関する、思い出したくもない苦い思い出があるのです。
躁鬱にかかってるとき、街中で、ある女性に一目ぼれしたのです。
結婚しているにもかかわらず!
その時耕治さんは躁状態でしたから、ナンパ目的でわくわくしながらその女性の後をつけて行ったんです。
すると、その女性・真理子(仮名)はスナックに勤めるホステスだという事が判明しました。
こうなったらもうたまりません。
耕治さんは躁状態も手伝って、毎日、真理子(仮名)のいるスナックに通い、入り浸るのに時間はかかりませんでした。
家に帰っても、女房の顔なんか見たくもありません。
そうしてあっという間にうつがやって来ます。
しかし、夜、スナックの開店時間間際になると一気にそう状態がよみがえってくるのです。
耕治さんはある日、真理子(仮名)に1万円のブローチをねだられました。
可愛いもんじゃありませんか。
耕治さんはすぐさま百貨店に駆け込み、真理子(仮名)の望んだブローチを無事に手に入れ、プレゼントしました。
その時の真理子(仮名)の嬉しそうな様子が耕治さんにとってはそう状態のピークでした。
しかし、物事はそう簡単にはいかないようになってるんですね。
真理子(仮名)のねだるものはどんどん高価になってきました。
1万円が3万円に、5万円が10万円に・・・まるで蟻地獄ですが、そう状態の耕治さんには何の不思議もありません。
そこで50万円の札束を用心深くカバンの底に入れてから、
「呆れた・・・!」
という声を必死でこらえて、
「潮時だな・・・」
とやっとのことで、郵便局前で待っていた真理子(仮名)に言ったのです。
この時耕治さんの状態は、すっかり鳴りを潜めていました。
躁鬱の場合、こんなこともあるんですね。
躁鬱はホントにつかみにくい疾患ですね。
被害額がそんなに大口でなかったことも、耕治さんにはよい社会勉強になったのではないのでしょうか。