
不動産投資に成功した、著者ロバート・キヨサキ
「金持ち父さん貧乏父さん」(筑摩書房)は、2000年に日本語訳版が発売されてから四半世紀以上のロングセラー。投資やお金に関するリテラシーを説いています。
本の内容は、Webサイトや動画サイトでたくさん取り上げられていますが、簡単に要約すると以下の通りです。
「金持ち父さんとは投資での収入がある人、貧乏父さんとは労働の収入のみで生きている人を指します。そして、労働収入ではなくて、投資での収入を得られるようになると、ラットレースの人生から抜け出せると説きます。著者、ロバート・キヨサキの場合、それは不動産投資だったのです。」

初心者にはハードルが高い不動産投資
筆者がこの本を初めて読んだのは、30歳になる手前でした。この頃には労働者として定期的な収入を得ていたので、このラットレースという表現は斬新でしたが、不動産投資をやろうとは思いませんでした。これは現在でも変わっていません。
その理由は、国、時代背景が違うからです。
筆者が初めて「金持ち父さん貧乏父さん」を読んだ時のことについては、「NO.2:お金は貯まっていくが、その限界に気づき始めた社会人」をご参照ください。

ロバート・キヨサキは、経済と人口が伸びて土地の値段が上がっていた、20世紀にアメリカのハワイで不動産投資をしていました。少子高齢化社会で空き家問題が起きている、今の日本で、不動産投資で儲けられる可能性は高いとは思えません。
また、不動産投資自体が手軽にできる投資方法ではありません。不動産投資は、自己資金として初期費用にある程度大きな資金が必要になります。自己資金ではなく、不動産投資ローンを組む場合は、金融機関の審査が必要になり、属性や収入によっては審査に落ちることもあります。
投資はハイリターンより平均点を確実に取りにいく
ロバート・キヨサキは、不動産投資を数日間で儲けられる簡単な投資方法と言っていますが、そのためには、以下の4つのリテラシーを高める必要があると言います。
- 会計力
→財務諸表などを読み取る数字を読む力 - 投資力
→投資に必要な戦略と方式を決める力 - 市場の理解力
→世の中の経済的な動向を見て判断する力 - 法律力
→会社を作ることによる税金に関する知識。
そもそもこの4つのリテラシーを身につけること自体が、豊富な経験と知識が必須で、非常に労力がかかり難しいところなのです。

東大出身の成功した実業家などが、東大は過去問を研究すれば入れる、全科目の基礎力があれば誰でも合格できる可能性があると、よく言います。その過去問を研究、全科目の基礎力をつけること自体が一般の人には、非常に難しいのです。
凡人が投資も受験も大成功するためには、それなりの事前準備と努力が必要です。
またそれだけでなく、この本にも不動産投資家の成功例として登場する、不動産王のドナルド・トランプ(2025年2月現在、アメリカ大統領)のように、生まれながらのセンスや能力も必要でしょう。トランプ自身も40代の青年実業家時代の日本のインタビューで、自分は不動産投資に対する才能があったと発言しています。
筆者の個人的な人生感とも通じますが、庶民は投資、仕事、受験も圧倒的な大成功よりも、コスパよく平均よりリターンを出すことが大事だと思います。95点をとりにいくより60点を確実にとりにいくことです。
大学受験なら、受験科目が日本で一番多い東大を狙うより、3科目に絞ることができる早慶やマーチを狙う。
就職活動なら、大手企業の本体はなくその関連会社を狙う。
そして投資なら、リターンが高くてもハイリスクなものは避けて平均点を狙う。それこそ、本シリーズで推奨しているインデックス投資なのです。

インデックス投資こそ、コスパが良い
ロバート・キヨサキは、インデックス投資に関しては、銀行や証券会社の運用してくれるファンドマネージャーに高額な手数料を払う、やらないよりはマシ程度の投資方法として例を挙げています。
しかし、現代の日本では、非課税枠制度のNISAが誕生しました。実店舗がないネット証券で、オルカンやS&P500などの広く分散されたインデックス商品は、非常に安い信託報酬料で買えますし、NISAの枠内なら受取時に税金もかかりません。一度設定しておけば、ほったらかししておいてかまわない、インデックス投資はコスパが良いのです。

もちろん、ほったらかしと言っても、インデックス投資のこともある程度、理解するための勉強は必要です。また、不動産投資を絶対にやらない方がいいと言っているわけでもありません。
ロバート・キヨサキは、投資をする適性として、その対象物に興味や愛着があることを挙げています。なので、元来、土地や建物が好きな人、労働から解放されたくて、不労所得を得たい人は、リスクを犯してでも、不動産屋投資をしても良いのではないかと思います。
しかし、普段、会社員として働き、その余暇を家族や趣味に費やしている大半の人達にとって、時間と投資に費やせる時間やリスクを考えたら、インデックス投資に軍配が上がるのではないかと思います。
シンプルに労働で得た収入で投資をする
中盤以降は不動産投資に関する話が中心になりますが、その点を注意すれば、全体的には資産と負債の考え方など、投資の基礎的な考え方が分かり読む価値がある本です。
労働しているだけでは、経営者から搾取されて一生を終えてしまうことになります。しかし、投資をしていけば、労働者、経営者よりも上に立てる、投資家というフェーズになることができます。「金持ち父さん、貧乏父さん」ではそのことが感じ取れれば充分だと思います。

筆者自身もそうですが、労働と投資を同時に二刀流でやるのが、一般の人には理想的だと思います。その理由を2つ挙げます。
①定期的な収入
ロバート・キヨサキは、労働者を経営者に搾取される「貧乏父さん」と断罪していますが、会社員は福利厚生の恩恵を受けることができて、定期的な収入を得られるメリットは大きいです。その収入の余剰資金を積立投資に充てることができます。
②労働する人がいるから成り立つ世の中を実感できる
1990年代前半の日本のバブル崩壊、2008年アメリカから始まったリーマンショックなどでは、株価が大きく下がり、たくさんの投資家が損失を出して、世の中、全体の景気も非常に悪くなりました。バブル崩壊もリーマンショックも実体以上に不動産に価値がついてしまい、ある時に大暴落してしまったのです。
やはり投資をする上でも、自らも労働をして、実体経済があるからこそ、世の中が成り立っているということを実感するべきだと思います。その感覚がないと、実体経済とかけ離れたバブル状態になった時、その不自然さに気づかず共倒れをしてしまう可能性があるからです。
労働で収入を得て、その収入の一部を積立投資にまわす。
このシンプルな単調作業に時間をかけていけば、お金が増えていく可能性が高いのです。

