青梅ってある意味ミステリアスかも
青梅ってどこにあるかご存知ですか?
大抵は聞いたことはある程度で、せいぜい「青梅マラソン」が精一杯でしょうか。
一応言っておきますが、青梅は東京都です。
東京駅から青梅駅までは、一番早い電車を使えば片道1時間17分(920円)で来れるんですけど、何となく捉えられ方が未知の世界なんですよね。実は筆者は青梅市民、でも出身は新潟で生粋の地元人ではないため、正直なところ筆者にとっても青梅はミステリアスかも、知っているようで知らない。
もう直ぐ新潟に戻ることになり、20数年お世話になった青梅を離れる前に、何か1つでも恩返しをと思い、これぞ青梅だ!と知らしめる記事作りに奮闘している次第です。
青梅駅界隈では、「昭和レトロ」 を全面売り出し中?!
青梅駅界隈では、町興しのテーマを昭和レトロにしているようです。青梅駅も俄然やる気満々。
今回は先を急ぐのでさらっと流しますが、映画看板と漫画家の赤塚不二夫さんも町興しの一環となっています。
機会があれば、また改めて青梅駅界隈の街並みをご紹介したいと思います。
青梅駅を境に景色が変わり、気分が不思議な感覚になってくる
青梅駅を出ると、辺りの景色が自然色濃くなって行きます。
えっ、ここ東京だよね?と、夢か現かちょっと混乱というか、不思議な感覚になります。
青梅市民でさえそうなるので、きっと都心の雑踏から来た人は、もっと激しいかも知れません。
地元の人達は口を揃えて、「これぞ青梅だ!」と胸を張って断言します。
ということで今回スポットを当てる場所は、東京の奥座敷といわれる御岳渓谷遊歩道界隈です。
都心の喧噪に疲れたら、ここに来ると心が癒されます
青梅駅から7つ目の御嶽駅で下車、駅前を左側に行って直ぐの御岳渓谷入口から、遊歩道に降りて行きます。
向かう先は今通り過ぎて来た沢井駅方面、せせらぎの音をBGMに、時折吹く風と戯れながら気ままに歩き出します。
国道から少し降りただけなのに、本当に不思議なくらい人口の音がしません。
自然の中の細い径を歩いていると、どんどん余計なものが削ぎ落されていくようです。
道すがら野菜や梅干しが売っていたりして、どこまでも非日常的な世界です。
毎日頑張っている自分へのご褒美に「命のお水」を
ほどなく目的地の小澤酒造に到着!御嶽駅からの道のりはそんなに遠くありません。
小澤酒造グループの「清流ガーデン澤乃井園」が、筆者が大好きな癒しの場所の1つです。
自然に囲まれた東屋の席とオープンテラスの席があり、ここで昼間から一杯やるのが至福のひと時です。
目に入ってくるもの、耳に入ってくるものが自然しかないこの感覚は、実際にこの場所に来ないとなかなか言葉だけでは伝わらないものがあります。
雨の日のガーデンもまた、しっぽりとした風情で格別です。是非お試し頂きたいですね。
創業300年の小澤酒造さんが造る本物の日本のお酒
せっかくなので今回は、東京にある蔵元である小澤酒造さんに直接お話しを伺って来ました。
こちらの蔵元では、1日4回に渡り45分間の見学ツアー(無料)を開催しています。
筆者も久し振りに見学して来ました。
なかなか雰囲気のある蔵元で、近代的なオートメーション工場などにはない、重厚感ある雰囲気を味わうことができます。
お酒造りに関しても、分かりやすく丁寧に説明して頂けて、最後には旬なお酒の味見までさせて貰えます。
小澤酒造さんのお酒は、自然の息吹が感じられます
170年前ほど前に蔵の裏に掘られた140mにも及ぶ横井戸の水を使用。
「腐造知らずの水」と呼ばれる横井戸から湧く岩清水は、ミネラル成分の多い中硬水で発酵力が非常に強いのが特徴で、これにより澤乃井独特のキレのあるコシの強さがを出せるとのこと。
また、平成15年から木桶仕込みによる酒造りを復活させました。
現代の機械化された製法は、微生物等のコントロールが容易で衛生的です。
一方木桶仕込みによる製法は、微生物の管理が非常に難しく、常に気が抜けません。
ですが、酵母にとっては桶仕込みの環境は最高であり、伸び伸び自由に飛び回れます。
よって難しい反面、個性豊かで奥深い旨味を出せる製法とのこと。
ただ、出来上がってみるまでは誰にも予測がつけられないそうで、言ってみれば「気高いじゃじゃ馬のお嬢様」という感じですね。
300年受け継がれる 「精進潔斎して努むべし」 の姿勢
小澤酒造さんの創業は元禄15年(1702年)で、300年以上の歴史ある蔵元です。
江戸時代の頃になりますね。凄いですよねぇ。
蔵元当主の祖先は甲斐・武田家にゆかりがあり、時代の事情により甲斐にはもう戻らず、この地を永住地と定めた一族の末裔が、蔵元当主の小澤家であるとのことです。
かっては武州三田村澤井という地名であったことから、酒銘を地名にちなんで「澤乃井」としたということです。
小澤家の家訓である 「精進潔斎して努むべし」 の一本筋の通った凛とした意気は、しっかりと酒造りにも受け継がれており、今なお全身全霊でその精神で作り上げる酒の味には、武家の血筋だからこその清廉でありつつ奥深さがあり、古の重みがロマンを掻き立てます。
自分の故郷を追われてどんな思いで生きて来たのか、どんな思いでお酒を造っていたのか、そんな古い時代に思いを馳せた筆者でした。
日本の伝統と心で造る本物の酒を世界に広めたい
今回、丁寧に真摯にお話しをしてくださった、小澤酒造さんの広報担当の吉崎さん。
「東京に蔵元があり、古い昔からその伝統と心意気を受け継ぎながら、今なお造り続けているお酒があることを知って欲しい」と語り始める吉崎さん。
「日本の伝統がたくさん詰まっている日本酒が、今では需要が減っているので悲しいですね」とも。
社を上げて精魂込めて造っていること、もっともっと沢山の人にこの美しい味を知って欲しいこと、などなど熱く語って頂き、その日本酒愛溢れるオーラに惹き付けられました。
また、「これから東京オリンピックもありますし、外国の方にも是非ともお試し頂きたいですね」と目を輝かせる吉崎さん。
「ただ、小澤酒造としては今目の前にあることに全力を注ぎ、今やるべきことを地に足を着けて地道にやるだけですね」 とあくまでも実直で謙虚な吉崎さん。
こういう一社員の姿からも、小澤酒造さんの武士の心意気が感じられ、心打たれる思いです。
300年の伝統技で作り上げた純米吟醸酒 「東京蔵人」
小澤酒造さんが、今一番おススメしたいという 「東京蔵人」。
こちらは2020年のオリンピックに向けて、世界的に発信できる本物の日本の味として、300年の歴史と伝統を全て盛り込んで造った一本です。
日本酒造りの原点である 「生酛造り」 による仕込みは、現代のスピード化、大量化の影に隠れてしまった昔ながらの製法です。
酵母を育てる 「酛」(酒母)を、水と米と米麹から手作業により4週間かけて作り上げます。
現代の作り方と比べると倍以上の時間と手間がかかり、そのうえ安定性を保持することが非常に困難な製法です。
但し、その味わいは口当たり滑らかで、「生酛造り」ならではの程よい酸味と旨味が、他では味わえない旨さであるとのこと。
今回は仕事のため試飲は出来ませんでしたが、次回は是非とも頂きたいと思います。
青梅の地元の人達の思い
小澤酒造さんではグループ事業として、この界隈にレストランや美術館など幅広く運営しています。今回はそのうちの一つ 「櫛かんざし美術館」 を覗いてみました。
丁度いらっしゃった館長さんにも、お話しを伺ってみました。
「4000点にものぼる品数で、櫛かんざしに特化した美術館は日本でここだけ。青梅にしかないから青梅に来て見て欲しい。そしてここに来たらこの自然の美しさに目を見張り、ゆっくり堪能して欲しい。うちだけでなく、この界隈のあちらこちらに見所があるので、併せて楽しんでいって欲しい。」とのことでした。
地元の人の声も何人かに伺ってみましたが、面白いくらいに皆さん仰ることが同じ。
「青梅と言えばこの自然よ!」 ということと、「この凄さは実際にここに身を置かないと分からない」ということ。
その点は筆者も同感、確かにこの不思議な感覚は口だけでは伝わらず、実際に体験して貰うしかないんですよね。
これと全く同じことを、小澤酒造の吉崎さんも仰ってました。
今回小澤酒造さんとお話しをさせて頂いて思ったんですけど、昨今の浮かれたニュースで溢れかえる中で、今時?と思うほどの実直さが逆に新鮮に感じます。
今時というと失礼かも知れませんが、今時こんなに真面目でコツコツ地道な世界があったのかと、この辺りも不思議な感覚になる一因でもあるかも知れません。
ホッとするような安心感と、同じ日本人である誇りがあいまって、何とも言えない感覚が湧き起こってくるんです。
皆さんにもこの感覚を味わって頂きたいですね。