人を引き込む方法
話を聞いて貰うには、まず観客の目を自分に向ける必要があります。
大きなジェスチャーを付ける
プレゼンを聞いている側はプレゼンターを見ています。
それなのに直立不動のまま話されては退屈なだけでしょう。
ヒトラーは演説の構成に合わせ、右手を激しく振り上げたり、また何かを抱き込むように両手を胸の前で抱えるような動作をよく行います。
それはジョブズも同様で、壇上で立ったままプレゼンを行う彼は、ヒトラーほど激しい身振りはありませんが、常に舞台の上を右へ左へと歩き回っている事に気が付くでしょう。
人は動いている対象を無意識に目で追ってしまいます。
つまりこの時点で、相手の意識をこちら側に向ける事に成功している事になります。
さらに『「一つ」と言って人差し指を立てる』たり、強い言葉の時に腕を振りあげるようなジェスチャーは、話の内容をイメージさせやすくし、自分の感情に相手を共感させるという効果があります。
シンプルに分かりやすく
専門用語や横文字を並べたてられても、理解できません。
一旦わからなくなったら、その時点で興味を失ってしまいます。
ジョブズは「今日は3つの革命的な新製品を発表します」といったように、冒頭で『何の話をするか』を一言で宣言し、相手に準備をさせます。
これだけで話の方向性が見えるので、ぐっと理解しやすくなります。
また、長い文章ではなく、「世界で最も薄いノートブック」のような、短いキーワードを使う事も重要です。
観客との一体感を図る
最も強い一体感を得るには『プレゼンターと観客の共通の敵を作る』方法があります。
ヒトラーにとっては当時の政権であり、ジョブズにとっては『使いにくい携帯電話』がそれに当るでしょう。
ただし、これは少なからず観客も不満に思っている事が前提です。
まったく的外れな事を言うと、説得力が無くなり何を言っても信じてもらえません。
沈黙する
ジョブズが意図的に行っていた手法です。
それまで饒舌に話していたのに、急に長い『間』を挟みます。
今までと雰囲気が変わったことを感じれば注目しますし、沈黙のあいだ、次に何を話し始めるかと『期待』をあおる事も出来るでしょう。
問題を提起し、解決策を提示する
観客を飽きさせない方法の一つでもありますし、同時に説得力や信頼感を持たせる方法でもあります。
話の中で、自ら問題点を示し、すぐにその解決策を提示する方法です。
ジョブズは従来のスマートフォンの問題を提起し、それに対する解答としてiPhoneの特徴を紹介していく流れは、タッチパネル式のスマートフォンが一般化した今でも引き込まれてしまいます。
言葉に説得力を持たせる方法
上手く観客の注目を集める事ができたら、次はプレゼンを説得する段階に移ります。
声の抑揚やトーンを操る
ヒトラーは主張するべきところでは、はっきりと力強く叫ぶ事で感情に強く呼び掛けますが、逆に観客が熱狂する場面ではトーンを落とし語りかけるような口調で話しています。
またジョブズは終始、淡々と語りかけるようなトーンで進めていますが、これにより信頼感を感じることが出来るでしょう。
魅力的なワンフレーズを投げかける
そのフレーズは、プレゼン後も強く印象に残り続けるでしょう。
ヒトラーが掲げた「全てのドイツ労働者に職とパンを!」というフレーズは、1929年の世界恐慌の最中にあったドイツにとって国民の全員が望んでいた事でした。
「アップルが電話を再発明する」というフレーズと、直後に出されたiPhoneは非常に衝撃的でした。
利点をイメージさせる
例えば、車が欲しくない人に対して、どれだけ低燃費や加速性能を説明したところで意味はありません。
それよりも、車で旅をした時に出会える情景や、車を中心にして家族と共に過ごす経験を説いた方が効果は高いでしょう。
ヒトラーは自分が政党を獲得する事により、国民に豊かさをイメージさせました。
ジョブズはiPhoneにより、新しいモバイルの未来をイメージさせました。
周到な準備を欠かさない
ヒトラーは自分を効果的に演出する為、何度も鏡の前で練習を繰り返しました。
ジョブズもまた、何時間ものリハーサルをたった数分の為に費やすのです。
緊張の大半は「失敗したらどうしよう」という不安からくるものです。
完璧に成功する事が分かっていれば不安など感じる必要はありませんよね。
原稿の全てを覚えるほどに重ねたリハーサルは、自信となって不安を取り去ってくれます。