社内公用語の英語化に尽力する企業の思惑とは何か|トピックスファロー

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2012年9月13日
社内公用語の英語化に尽力する企業の思惑とは何か

楽天が「社内で使われる言語である社内公用語を日本語から英語に統一し、英語が出来なければ取締役でもクビ」という驚くべき社内規則を発表したことは記憶に新しいところです。日本国内の企業が社内公用語を日本語から英語に変えることのメリットとはどのようなものなのでしょうか?

WEBライター
  

社内で使う言語を日本語から英語にシフトする意味とは何か?

旧約聖書では、バベルの塔が天に達する高さになる前に人々の使う言語が神の手によってバラバラになり、意思疎通が出来なくなった結果争いが起こって塔は崩れたとされています。
このように言語の相違は意思疎通を困難にし、共同作業を混乱させる原因になるのです。
だからこそ、使う言語は出来る限り統一しておきたいものですが、母国語でない言語が公用語であると習得に時間が掛かるだけでなく、使用に耐えうる実力がつきにくいもの。
出来れば、日本国内にいる間は日本語だけを使いたいものですがそうはいかなくなってきているのです。

社内で使う公用語を英語に統一する企業の増加

ネット通販大手の楽天、衣料品店「ユニクロ」の運営母体であるファーストリテイリングが、社内で使う公用語を日本語から英語に統一したというニュースは世間を大きく騒がせました。

楽天では「英語が出来なければたとえ取締役でも辞めさせる」「No English, no job.」と、ファーストリテイリングでは「TOEIC受験・英語取得は業務命令」「TOEIC受験等の英語勉強を行わない社員には給与に加算した受験料の返還を請求」と、かなりの本気度を持って社内公用語を英語に統一することに意欲を示しています。
なぜ企業は社内で使う言語を英語に統一しようとしているのでしょうか?

もう「国際化社会」じゃない、「国際社会」の時代だ

母国語を使う人口の方が圧倒的に多い国で、母国語以外の言語を使わなければならない状況とはどのようなものでしょうか。
それは「取引先がすべて国外にある」とか「海外に支社や工場を作る」というような、海外との連携を密にしなければならなくなっている場合です。

バブル経済前夜の1980年代以前から、日本では盛んに「これからは国際化社会だ」と声高に叫ばれてきました。国と国の境目が曖昧になるほど、国を越えた人と物の行き来が盛んになっていく社会が来る、そう喧伝されてきたのです。
しかし、1980年代後半のバブル経済によって、未曾有の好景気に達した日本は輸出大国となっただけでなく、十数年前までは限られた人しか行けなかった海外旅行へ誰でも気軽に出来るという時代に突入していきました。

このように現代はもはや、急速に国際化が完了した「国際社会」となっているのです。国際社会の中では自国に限定された商取引をやっていては会社を維持できないのです。

日本人は英語に自信がない?

多くの日本人は中・高6年間にわたって英語を習います。人によっては就学前から英語を勉強していて、国語の12年間を大きく上回っていることさえあります。
しかし、それだけ時間と労力をかけて英語を学んでいても、英語のネイティブスピーカーであるアメリカ人やイギリス人と話す時は、カチコチに緊張してしまい学んだ成果の10分の1も発揮できないことはよくあることです。

なぜ英語を学校内外で勉強しているのに、本番になればこれほどに頼りないのか。よく言われる理由の一つには「日本の英語教育は実践的ではない」ということがありますが、むしろ「日本人は英語をどれだけ勉強していても自信が持てない」のではないでしょうか。
自分の英語は通用すると思って意気揚々とネイティブスピーカーと話してみたら早口で聞き取れず、自分の発音が悪いのか何度も聞き返されてしまう…そんな経験がある人は少なくないはず。

どんなに勉強していても実践で活用できなければ意味がないし、どうせ通じない。そんな英語に対する諦めを日本人の多くが抱いているのです。

英語圏の有能な人材を集められる

日本人の多くが「自分の英語は通用しない」と感じていても、企業が社内公用語の統一を推し進めるのはなぜか。それは日本人社員からの反対があってもそれを黙らせるだけの利益につなげられるからです。
その利益というのが「英語を公用語とする国の有能な人材」なのです。

英語を公用語としている国は数多くありますが、中でも人件費が安い東南アジア方面、そしてIT分野に強いインドからの人材への注目度は高くなっています。
人件費の安さでいえば、中国が圧倒的に有利ですが反日感情の強さや人件費の高騰が始まっていて企業にしてみれば、今の中国は下請け先としての旨味がない状態なのです。

これからは人件費が安いだけでなく、高い能力を持った知的人材を世界から集めていく時代といえます。

社員の強みを活かすのが経営者の役目

このように英語の社内公用語化によって得られる利益は、優秀な頭脳を持った人材、そして海外との取引の円滑化であるといえます。しかし、その結果として会社に忠を尽くして支えてきた人材を失うことも十分ありうるのがデメリットといえます。

また、社内公用語としての英語の導入には大きなメリットがあるかもしれませんが、「英語が出来ない、通用しない」というコンプレックスを抱いている社員をあっさりと切り捨ててしまうというのであれば、それは経営者にとって重要な資質の欠如であると言わざるを得ません。

経営者たるものは、社員を無下に切り捨てるのではなく社員の強みに気づき、活かす道を示すのが役目です。それが出来なければ英語がどうとか口にするべきではないのです。

著者:塩屋 謙

WEBライター
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職業は編集・校正、そしてWEBライターでもあります。興味の範囲を広げつつ、様々な記事を書いています。