多重債務を解決するための借入一本化
業者Aへの返済を業者Bから借りたお金で賄い、業者Bへの返済は業者Cから借りて、業者Cへは業者Dからの借金で……というように、返済のための借入と返済を複数の金融業者にまたがって行う自転車操業状態は、多重債務の解決を再送りにしているだけにすぎず、やがては身の破滅を招くことになります。
このような複数の業者からの借り入れがある多重債務を解決するには、債務整理の手法である「借入の一本化」が重要になってくるのです。
借入の一本化とは?
借入の一本化とは、複数の金融業者からの借金をまとめて一つの業者への債務にして借金返済をスムーズにするという債務整理法です。
借入の一本化を行うメリットには「業者ごとに違う金利を一本化できる」「ひと月ごとの返済額を圧縮できる」「ブラックリストを回避できる」ということが言えます。
まず、借入先や借入コースが異なれば借金に掛かる金利は法定金利の範囲内で異なってくるものです。たとえば業者Aでは16%、業者Bは12%、業者Cは18%、業者Dなら10%という具合にです。この場合、一番低い業者Dで借り入れを一本化するのが賢いやり方といえます。
そして、返済しなければならない相手の頭数を減らすことで相対的に返済額は減少します。たとえば8つの業者から借入していて一か所あたり月2万円の返済を求められているのと、一つの業者に月5万円の返済を求められているのとではどちらが借金返済に有利でしょうか。もちろん後者です。
このように借り入れを一本化するということは毎月の返済に必要なお金をグンと減らすのにも効果的なのです。
そして何よりも重要なのは、ブラックリストに載らないで済むということです。「債務整理を行うとブラックリストに記名されて借金の申し込みが出来なくなる」というのは有名な話ですが、借入の一本化は一本化先として選んだ業者から借りたお金で他の業者への全額返済を行うので、他の業者にとっては債務放棄を行わなくて済むことになるのです。
借入一本化にはデメリットも…
一見すると都合の良い返済方法に見える借入の一本化にも、いくつかの欠点があります。
まず一つは、「借入制限枠を越えてしまうと完全に一本化出来ない」ということです
総量規制によって、年収の三分の一までしか借金出来ないことになっていますが、多重債務状態で一本化を行うと借入総額が制限枠を飛び越えてしまうことがあるのです。
そうなると一本化された大きな借金と一本化されていない複数の借入残高が出来てしまい、スムーズな返済が出来なくなってしまうのです。
第二には、「借金の完全返済に長い時間が掛かってしまう」ということです。
たとえば、5つの業者に20万円の債務残高がある人が借入の一本化を行って、一つの業者に100万円の債務残高がある状態になったとします。
5つの業者への毎月の返済額が各1万円と、一本化した業者への毎月の返済が1万円ではどちらが早く返済できるでしょうか。このように返済額の設定も考えていないと返済に時間が掛かって、利息で返済額が膨らむリスクが高まってしまうのです。
第三には「さらに多重債務を重ねる危険性がある」というデメリットがあります。
借入の一本化によって借金を一か所に集中すると、今まで借りていた業者に対する債務が無くなるため、再度の借入が可能になります。
また、サラ金では借入と返済をしっかり行っていれば借入枠が増大するため、借入の一本化前よりも債務額が大きくなってしまう可能性が高いのです。
借入の一本化はどうやって行う?
借入の一本化は弁護士・行政書士に依頼して取りまとめてもらう方法と、「おまとめローン」と呼ばれる返済プランを利用する方法があります。
弁護士・行政書士に債務整理の一環として一本化を行う方法では、着手金+債務残高に応じた成功報酬を支払う必要がありますが、支払ったお金に見合うだけの精度がある債務整理法であるといえます。
一方、おまとめローンの場合は銀行やローン会社が取り扱っているローン商品で、融資限度額までの多重債務を一本化することが出来ます。
金利や融資限度額はおまとめローンの扱い先によって異なりますが、審査を通らなければ利用できないのがデメリットといえます。
悪徳業者にご用心!
借入の一本化は多重債務者にとってはまさに福音と言える方法ですが、世の中には人の弱みに付け込んで利益をむさぼるために、「借金を一本化してあげる」と持ちかけてくる人もいます。
このような「借金の一本化をする」と持ちかけて債務者を食い物にしようとたくらむ人を「整理屋」と言います。
整理屋の手口は、多重債務者に借入の一本化を持ちかけて手数料や返済額を支払わせてからドロンし、債務者の元には返済滞納通知が届くという騙し取るやり方、債務者が借りている業者がすべて同じグループで整理屋を入れなくても一本化出来るのにも関わらず「一本化できた」と依頼料を巻き上げるというやり方などがあります。
場合によっては整理屋と組んでいる弁護士や行政書士が居たりするので、整理屋から話を持ちかけられるケースや整理屋を紹介されるケースには十分注しなければなりません。