『アクチュアリー』という職業
『Actuary』。日本語では『保険計理人』と訳されますが、『保険計理士』、『保険数理人』という呼ばれ方もします。
しかし意味が分かり難いうえに、アクチュアリーという仕事の一つしか説明できていませんので、そのまま『アクチュアリー』と呼ぶ事が一般的に定着しています。
アクチュアリーの仕事内容
日本語にしても意味が掴みにくい職業ですが、具体的には「企業が将来的に支払うお金を計算する仕事」というのが主な内容でしょう。
企業が「将来的に支払うお金」とはどのような物か。
それを知るには、アクチュアリーの始まりを考えると分かりやすいと思います。
アクチュアリーは生命保険から始まった
世界初のアクチュアリーはイギリスの生命保険からでした。
加入者が死亡した際、遺族が生活に困らない為に支払われる生命保険。その保険金は、加入者からの保険料から支払われる事になります。
その為、収入となる保険料よりも、支出となる保険金が上回った場合、保険会社は生命保険を支払うことが出来なくなり、社会的な責任を果たせずに倒産する事になるでしょう。
このような事態を防ぐためには、あらかじめ支払う金額(つまり死亡する人数)を考慮し、その準備金をそろえておく必要があります。
アクチュアリーは、その準備金を計算する為に必要となりました。
人の死亡時期が分かるのかという疑問があるでしょうが、統計学を使えば割合を求める事は可能です。
日本におけるアクチュアリー
日本国内で『アクチュアリー』といえば、それは『日本アクチュアリー会の正会員』であると考えてください。
もちろん正会員にならなくても、アクチュアリーの仕事に就く事は可能です。正会員を目指しながら仕事に励む人が数多く存在します。
2011年の段階で正会員数は1,254人。準会員などを合わせると4,472人。
アメリカに比べると総会員数では5分の1。正会員数に至っては10分の1というのが現状です。
日本で正会員になるには試験を合格する必要があり、それだけ難易度が高いと言えます。
しかし資格者が少ない分、非常に需要が高いと考える事も可能でしょう。
アクチュアリーの資格
アクチュアリーとして認められるには、日本アクチュアリー会が、毎年12月に実施する資格に合格する必要があり、試験は基礎科目の1次試験と、専門科目の2次試験に分けられています。
2つの試験のうち、1次試験合格者は準会員と認められ、2次試験を合格する事で正会員となることが出来ます。
しかし2次試験をうける条件として『準会員』である事があげられていますので、正会員になるには最低でも2年の時間を必要とします。
基礎:第1次試験
試験内容は『数学』『生保数理』『損保数理』『年金数理』『会計・経済・投資理論』の計5科目。
一度に全てを合格する必要はなく、翌年に不合格だった科目に挑戦し、結果全ての科目に合格する事で準会員の資格を得ることが出来ます。
しかし試験の難易度は非常に高く、求人条件を『科目合格者』とする企業も少なくありません。
専門:第2次試験
それぞれ2科目ある『生保』『損保』『年金』のコースを合格し、プロフェッショナリズム研修を受講する事で晴れて正会員となる事ができます。
アクチュアリーが必要とされる職場
主な職場としてあげられるのが、『生命保険』『損害保険』『企業年金』とされています。また『信託銀行』や『官公庁』でも、多くのアクチュアリーが必要とされていました。
しかし、アクチュアリーの高度な技術によるリスクマネジメントは、コンサルティングや資産運用の観点から保険業界以外からの注目も集まりつつあります。
アクチュアリーの転職状況
アクチュアリーの需要は年々高まっているのもかかわらず、その人数は不足しています。
その為、一度アクチュアリーとして働く事ができれば、転職は容易なものとなるでしょう。
また海外の保険会社が日本に流れている状況を考えると、転職先に外資系企業というのは十分選択肢となりえます。
1,000万円を超える年収
その難易度や人数の少なさから、同年代と比べ収入も高い傾向にあります。
求人を確認すると、低い所であっても年収500万円からというのが普通で、1,000万円や1,200万円を提示する企業も少なくありません。
アクチュアリーはキャリアアップがしやすい職業
アクチュアリーは保険や年金など、それぞれの分野に専門化していく事が多いようです。
しかし転職のチャンスが多いアクチュアリーでは、様々な企業で実績を重ねキャリアアップをする事は決して難しくはありません。
アクチュアリーという職業
アクチュアリーは非常に高度な数学知識を必要とする為、決して楽な道ではありません。
しかし知名度が上がれば、一般企業でも必要とされる将来性の高い職業でしょう。
アクチュアリーとして認められるまでが非常に大変な為、全ての人にすすめられる職業では決してありませんが、転職先の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。