地方で異なる「ふぐ」のオモシロ呼び名
「膨れる」「袋」など、語源には諸説ある「ふぐ」ですが、地方によってもさまざまな呼び名があります。
まず、ふぐの本場といわれる山口県や北九州地方では、「ふく」と呼ばれています。
これは、「ふぐ」という言葉が、「不具」「不遇」などのネガティブなイメージにつながるため、縁起の良い「福」にあやかったからだと言われています。
日本の消費量の6割のふぐが食べられているという大阪では、毒に「当たると死ぬ」ことから、「鉄砲」や「テツ」という呼び名が使われ、逆に、千葉県の銚子の周辺では、「当たりそうで当たらない」ことから、現在の宝くじにあたる「富くじ」から取った「トミ」と呼ばれています。
また、明治の頃には「測候所」と呼ばれ、さらに、ふぐを食べる際は、「測候所、測候所、測候所」と3回唱えると毒に当たらない、というおまじないがあったのだそうです。
これは、当時、測候所が発表する天気予報が、「たまにしか当たらない」ことから、皮肉を込めて呼び名として使ったのだと言われています。
このように、日本人は、昔から、毒に当たると死ぬと分かっていても、その美味しさから、どうしても、ふぐを食べるのをやめることができなかったようです。
どうして大阪で「ふぐ」が人気なのか?
山口県や九州が本場とされる「ふぐ」が、なぜ、これほど大阪で食べられているのか、ちょっと不思議になりますよね?
一節には、危険な毒を持つふぐを扱うための、資格に秘密があるとされています。
実は、ふぐを調理するための資格は、国家資格ではありません。
各都道府県が、ふぐの処理や取扱について条例を定め、調理や処理をするための試験を実施して、免許を与えているのです。
そのため、「ふぐ調理師」「ふぐ処理師」「ふぐ取扱者」などと、地域によって呼び名が違い、また、東京で取った資格を他の地域で使うことができないのです。
そして、1948(昭23)年に、日本で初めてふぐに関する条例を制定したのが、大阪府なのです。
さらに、注目すべきなのが試験を受けるための、受験資格です。
ほとんどの都道府県の試験の受験資格では、数年の実務経験が必要とされます。
例えば、東京都ふぐ調理師試験には、「東京都知事の免許を受けたふぐ調理師の下で、ふぐの取扱いに2年以上従事した者」、また、山口県のふぐ処理師試験には、「学校教育法第57条に規定する高等学校入学資格を有する者で、3年以上ふぐの処理の業務に従事した者」いう受験資格があります。
これに対して、大阪府では、ふぐ処理講習会を受講後に、大阪府知事に登録すれば、ふぐ取扱登録者になることができるのです。
大阪では、他の地域のような受験資格も必要なく、簡単に資格を取得できるといえます。
このことから、大阪にはふぐの調理人やふぐを出すお店が増え、安くて美味しいふぐが、多く食べられるようになったのです。