
DIE WITH ZEROの概要
「人生が豊かになりすぎる究極のルール」、というサブタイトルがついた「DIE WITH ZERO」は、お金の増やし方などの話は一切ありません。この本の結論は、タイトル通り資産を0にして人生を終えようという内容です。
それを以下の9つのルールに分類して説明しています。
- 「今しかできないこと」に投資する
- 一刻も早く経験に金を使う
- ゼロであの世へ行く
- 人生最後の日を意識する
- 子供には生きているうちに与える
- 年齢にあわせて「金、健康、時間」を最適化する
- やりたいことの「賞味期限」を意識する
- 45-60歳に資産を取り崩し始める
- 大胆にリスクをとる

思い出の複利効果と子供への生前贈与
筆者が「DIE WITH ZERO」を読んで、印象に残ったのは以下の2つです。
- 人生で1番大切な仕事は思い出作り
- 金の価値を最適化できる年齢は26-35歳
思い出の複利効果
ルール2で、人間は最後に残るのは経験した思い出だけと言っています。
その理由は、体が動かなくなり、亡くなる直前まで楽しめるのは思い出に浸ることだからです。
その根拠として、その思い出には、配当という複利効果があるといいます。
複利とは、元本の利益部分が更に利益を生み出す、お金が雪だるま式に増えていく資産運用で使われる用語です。若い頃にした経験というのは、その後の人生で何度も思い返すことができる、それを思い出の配当、複利効果という表現を使っています。

子供への生前贈与
ルール5で、自分の子供へ財産を残すことに関しては、亡くなる前に予め決めた財産の額を子供に渡すべきとも言っています。
その理由は、子供も親が亡くなる中年以降の世代になった時より、まだ若い世代のうちにもらった方が有意義に使えるからです。その根拠として、子供が様々な経験をできる20代後半から30代のうちが理想的だからです。
また、日本の場合、相続税対策にもなります。
ただし10代だと少し早すぎで、大金を手にして勘違いして使いこなせない可能性もあります。ルール8の45歳から60歳で資産の取り崩しを始めていくという主張にも論理的に繋がっていきます。

また、寄付に関しても、生きているうちにするのが理想と言っています。
子供がいない人などで莫大な財産がある人は、遺言で死んでから寄付をする人たちもいます。
確かに寄付自体はいつしようが素晴らしいですが、もし寄付をするなら生きている時にした方がいい、それはその寄付を必要として困っている人が将来ではなく、現在にもたくさんいるからです。
「DIE WITH ZERO」を読んだ多くの読者が、なるほどと思い納得するのが、この2つではないでしょうか。
ここから少し反論をしてみたいと思います。
お金があることによる安心感
昔からあの世にお金は持っていけないと言われます。
確かにその通りなのですが、実際問題として、貯金を0にしてあの世へ行くことは厳しいと思います。人間である以上、いつかは命が尽きますが、具体的な日時まで予測することはできません。
仮に亡くなる直前に貯金が底に尽きそうな状態になったら、それは不安でしんどいと思います。ある程度、お金には余裕を持って人生を終えるべきだと、筆者は考えます。

確かにお金を使おうが使わないが、人生で経験、思い出を作ることは大切です。しかし、お金に余裕があると、人生の選択肢をたくさん用意することができるメリットがあります。
例えば、一般的な労働者は、日々の生活のために会社にしがみついて仕事をします。しかし、お金があればいつでも辞めることができるという、精神的な余裕が生まれます。また逆に仕事に多少の不満があっても、自分はお金があるからいつでも辞められると、開き直り会社に居続ける余裕も生まれてくる可能性が高いです。
お金は消費より生産
個人的な話になりますが、過去の記事(「NO.1:収入額より資産額、学生時代までに身に着いたお金の価値観」)でもお伝えした通り、筆者は子供の頃から、財布にお金がたくさん入っていると安心する習性がありました。お金があれば、実際に買わないにしても、◯◯を買うことができると想像するのが楽しかったのです。
これは人生を通じた資産形成をする上でも、実際には、大切な考え方だと思います。
お金はあるけど使わない、という選択肢を持つことで、見栄や他人に自慢したいだけの無駄な出費を抑えることができると考えます。
世の中は、SNSを通じて、美味しい物を食べ、旅行に行ってきらびやか日常を発信する人で溢れています。

しかし、その大半は単なる消費活動にしか過ぎません。資本主義が提供する企業活動に課金しているだけです。
副業や投資をするのも良いですが、本業の仕事を頑張ってお金を稼ぐ生産活動も、「DIE WITH ZERO」で言う、立派な思い出の配当だと思います。
資産をゼロにするより、お金は消費するより生産するという意識を持つことによって、資産形成を加速させた方が人生は充実するのではないでしょうか。

著者やインフルエンサーのポジショントーク
「DIE WITH ZERO」の著者であるビル・パーキンスをはじめ、この本をYouTube などで絶賛しているインフルエンサーには共通点があると思います。
ビル・パーキンスは、1億2000万ドルを抱えるヘッジファンドのマネージャーとありますし、この本を帯で絶賛するコメントを寄せている人達の肩書きは、大学教授、俳優、ベストセラー作家、大企業の経営者となっています。
総じて、成功者であって、一生お金に困らないような人たちなのです。
お金があり余るような彼らの目線から、お金を使いきれと言われても現実感がないと感じます。

若い段階での相続に関する話でも、相続税対策を含めて合理的な話ではありますが、実際にはお金に余裕がある人しかできないでしょう。
一般的に45歳から60歳というのは、まだまだ資産の取り崩し時期ではなく、資産形成を加速させなくてはならない時期だからです。45歳から60歳というのは、子供がいる家庭なら、子育ての後半期から解放される時期に突入していることが多いのではないかと思います。
子供の進学費用に頭を悩ませ、住宅ローンの返済もまだ完了してないかと思います。老後までもまだ時間があり、若い段階から積立投資などでしっかり資産形成をしていないと、この年代で子供に積極的に相続していくのは躊躇してしまうかと思います。

ライフステージに合わせて柔軟な対応
金持ち目線からのポジショントーク感が拭いきれないとはいえ、それをさっ引いて読めば「DIE WITH ZERO」に書かれている、根本的な哲学の部分は、どのようなステータスの人でも一読の価値があると思います。
資産形成、資産取り崩し、どちらもバランスが大切なのではないでしょうか。
積立投資に多くの時間を割くことができる、20-30代半ばまでは、積立投資額は抑えて、経験にお金を使うようにする。40代以降は、積立投資額を多めにして、経験に使う時間とお金は抑える、など自らのライフステージに合わせて、柔軟に考えていくことが大切ではないでしょうか。

40代半ばになり資産形成のフェーズに入る筆者
本記事を執筆している独筆者は、40代の後半に突入しましたが、まさに30代までは経験にお金を使い、現時点でも経験にお金を使いつつも、資産形成に比重を置いています。
筆者の場合、独身なので教育費やローンなどがかからなかったので、海外渡航や野球観戦、ライブなどの推し活にお金を注ぎ込んできましたが、30代までそこまで資産形成を意識しなくてもそこそこお金が貯まっていました。
それを元手にNISA枠をフル活用して積立投資を加速させています。2024年から新NISAにより非課税枠が拡大され投資がしやすくなりました。最短5年で非課税枠の1800万円を埋めていきたいと考えています。その時はちょうど50歳になっているので、区切りが良い時期に新NISAが始まったと思っています。

資産形成の極意は、まずは結婚、子供、住宅ローン、車の所有の有無関係なく、目の前のステータスの現実を認め、そのステータスの利点、欠点を精査して、最大限に攻めていくことだと、個人的に考えています。
「DIE WITH ZERO」のように資産をゼロに使い切るという理想論もいいですが、世間の常識に従うとお金が貯まりにくくなるのが、現代社会の現実です。
お金は、趣味などに消費するより、仕事、副業、投資などの生産を高めることを意識する、趣味もお金がかからないもの作ってみるなどの工夫が必要です(資産形成における趣味に関する記事も書けたらと考えています)。
お金を生産することに喜びを感じられるようになれば、「DIE WITH ZERO」のように、お金を使い切ってからあの世へいくという、極端な考え方も薄まるのではないでしょうか。
下記、記事も参考にしていただければ幸いです。
NO.8:結婚式と新婚旅行は、資産形成にはデメリット
NO.9:「大学へ進学」よりも、「高卒で就職と投資」が勝つ?
NO.10:独身者は実家暮らし、既婚者は実家の近くで資産形成