パニック障害ってそもそも何?
「パニック障害」という言葉を聞いたことがある人はいるでしょうか。近年、心の病について注目が高まってきていることもあり、パニック障害という言葉を耳にする機会が増えてきました。しかし耳にしても具体的にどんな病なのか、なかなか想像がつかないという方が多いかと思います。
パニック障害というのは、特徴的なパニック発作が起き、発作の間はずっと不安を感じている状態の「不安障害」の一種です。日本人の100人に3~4人はパニック障害の患者がいるという調査データも出ているくらい、誰もがなる可能性があります。
パニック障害の代表的な症状5つをチェック
さて突然ですが、ここで簡単なパニック障害のセルフチェックをご紹介します。○突然、脈が速くなったり息苦しくなったりすることがある。
○手足が震えたり、大量の冷や汗をかいたりすることがある。
○上記の症状が出ると「自分は死ぬのではないか」と考える。
●上記の症状が出た後に「また同じ症状が出るのではないか」と考える。
●症状が出た場所を避けるような行動をとるようになる。
当てはまった部分はありましたか?この表にある5つの症状は、パニック障害の代表的な症状になります。特に●の症状2つはパニック障害かどうかを診断するのに重要な質問になってきます。
○の症状3つをまとめて「パニック発作」といいます。
発作が起こりやすい状況としては、満員電車に乗っているとき、歩道を歩いているときなどが挙げられます。特に3つ目の「自分は死ぬのではないのか」というのは、強い不安を覚えるというパニック障害の特徴的な症状です。
『症状が出た後に「また同じ症状が出るのではないか」と考える』と挙げましたが、これは「予期不安」といい、こちらもパニック障害の特徴的な症状の1つになります。
パニック発作がとても怖くなってしまい、余計に不安を感じてしまって、またパニック発作を起こす・・・、このような悪循環が生じます。
表の1番下に『症状が出た場所を避けるような行動をとるようになる』と挙げましたが、これは「広場恐怖」といいます。これもまた、パニック障害の特徴的な症状の1つです。パニック発作を繰り返していくうちに「発作が起きた場所から逃げられない」と強い妄想を抱くようになります。
この妄想がひどくなると引きこもりがちになり、生活に支障が出てきます。このような状態が1ヶ月以上続いていたら、パニック障害の可能性が考えられます。
パニック障害になる原因は身近にあった!
皆さんは、心の病と聞くと「原因はストレス」と考えるかと思います。パニック障害はまさに、皆さんが考える「ストレス」が原因で引き起こされる病気です。「身近な家族が亡くなった」「人間関係が上手くいかない」というものから、「仕事で些細なミスをしてしまった」「上司や先輩に怒られて自信を無くした」というものまで、ストレスの原因は様々あります。
このようなストレスに上手く対処できず、どんどんストレスが蓄積されていくとある日、突然爆発してパニック発作を起こすようになります。また、生活で「遅刻しそうになったから朝食を食べずに急いで蒸し暑い朝の満員電車に乗ったら、体調が悪くなった」ということがキッカケで、パニック障害になってしまう人も居ます。
こうして見てみると、100人に3~4人がパニック障害になるといわれるもの何だか頷けますね。
こんな人もいる!パニック障害を患った芸能人たち
お笑い芸人の中川家・剛さんやシンガーソングライターでFLOWER FLOWERのボーカルYUIさん、アイドルKinKi Kidsの堂本剛さんなど数多くの芸能人もパニック障害を患っています。元・野球選手でタレントの長嶋一茂さんもパニック障害を患い、その体験談を本にして出版しています。
筆者と家族が体験したパニック障害のリアル
筆者は高校生の時にパニック障害を患いました。そんな筆者とその家族が体験したパニック障害のリアルな症状と経過を元に、同じような状況で悩んでいる人たちの力になれたらと思います。
パニック障害との出会いは突然に・・・
筆者がパニック障害だと言われたのは、高校1年生の時です。高校に通い始めて数週間、電車の中で突然「動悸」と「息苦しさ」を感じるようになりました。最初は電車に酔っただけだと思っていたのですが、次第に酷くなっていき、1駅区間の電車も乗れない程になりました。
電車に乗るのが怖くなり、駅に近づくことも出来なくなりました。「またあんな風に体調が悪くなるのかな」と考えると、引きこもるようになり、不登校になったのです。心配した母親がメンタルクリニックに連れていったのですが、そこで初めて自分が「パニック障害」と言われました。当時は何も考えられずに、ただその言葉を聞いているだけでした。
病気を拒絶し、薬も飲まずに悪化
筆者も家族も「パニック障害」という「心の病」を受け入れることができませんでした。このような心の病を患っているということを「恥ずかしい」と感じていました。これは精神疾患に対する日本人の典型的な考え方と言っても良いと思います。
「精神病を患って恥ずかしい」「家族に精神病患者がいるなんて・・・」と考えることで、「パニック障害」というものに対して「認識」が薄くなっていたのです。
そのためきちんと治療に向き合わず、処方された薬も飲まないでいました。そのせいで症状はどんどん悪化し、自分自身や家族、そして数少ない友人を傷つけるまでになりました。
「心が風邪をひいているだけ」祖母のひとことで変われた
パニック障害を受け入れるキッカケは祖母のひとことでした。「体が風邪を引いて咳き込むのと同じで、心が風邪をひいて咳き込んでいるだけ。体が風邪ひいたか心が風邪ひいたか、たったそれだけの違いだよ。」そんな祖母の言葉に筆者も家族も「なるほど、そうか」と思い、そこからきちんと病気と向き合うようになりました。
今も病気と寄り添い、立ち向かっている
その後、パニック障害は落ち着きましたが、克服はしきれていません。電車で具合が悪くなったら、自分の好きな音楽を聴いたりして駅までとりあえず乗り続け、駅から自宅までは家族に迎えに来てもらったりなど、家族とも協力し合って病気と立ち向かっています。
家族は筆者と病気に対して「優しく」なった
家族は祖母の言葉を聞いてから、良い意味で病気に対して優しくなったと思います。真正面から否定をするのではなく、「辛いね」「よく頑張ったね」とねぎらいの言葉をかけてくれるようになりました。また、薬の管理もしてくれるようになり、薬を飲まなかったら「きちんと飲もうね」と言うようになりました。
心と体はつながっていると実感
筆者はパニック障害と合併して別の病も患っています。そちらは残念ながらまだ落ち着いてはおらず、必死で今、闘っているところです。しかしこのパニック障害の一件を通して別の病も受け入れられるようになり「心と体は繋がっている。体が風邪をひけば、心だって当然、風邪をひく」と考えるようになりました。
心の風邪と向き合うこととは
パニック障害のみならず、精神病は「心の風邪」です。体が風邪をひけば、心だって風邪をひく時があります。「頭痛を気合で治せ!」と言われても無理ですよね。頭痛なら、きちんと薬を飲んで、寝ることで治ります。それと同じで、心の風邪もきちんと薬を飲んで、ゆっくり休むことで徐々に回復していきます。
そのような認識を持つと、不思議なことに病気と向き合うことができます。
薬を飲んでいても効果が出ないから・・・といって勝手に薬の服用をやめてしまう方が多いのですが、これは本当に危険なことです。周囲の人は「ちゃんと本人が薬を飲んでいるかどうか」ということに視点を置いてあげると、本人のためになる支え方ができますよ。