パタニティーブルー経験ありの父親は50%というデータも
妻が出産し、我が子ができて嬉しくて仕方がないと感じる一方で、慣れない育児や夜泣き、金銭的な面などさまざまなことが心と身体に影響を及ぼすことがあります。一見、「ただの疲れかな?」と思ってしまいますが、「パタニティーブルー」と呼ばれる心の病であることが考えられます。
「パタニティーブルー」という言葉を聞いたことがないという男性も多いことでしょう。
カップル専用アプリや子育て家族アプリなどの開発・運営をしている株式会社Timersで行われた調査結果では、
・「パタニティーブルー」という言葉を知らないと答えた夫婦:約80%
・パタニティーブルーを「経験した」もしくは「経験したかもしれない」と答えた子どもを持つ男性は50%
この結果からすると、「もしかしたら・・・」と思い当たることがあるかもしれません。
妊娠、出産しなくても産後うつのような症状が
「子どもが生まれて、幸せ絶頂な時期なのになぜ、うつ症状が出るのか?」と不思議に思われる方も多いかと思います。しかし、幸せだと感じている気持ちとは別に、無意識下で別な気持ちの動きもあるのです。それがどんどん大きくなることで、出産をしていない男性でも、産後うつのような症状が出始めます。子育て疲れや育児ノイローゼもストレスが元で起こりますが、これらとは少し違うものと考えてください。
パタニティーブルーは誕生後3ヶ月以内に起こる
1987年にパタニティーブルーという言葉を使ったのは、児童精神科医であるカイル・D・プルーエット博士です。彼は、子どもが生まれてから約3ヶ月までの間に自身の子どもに対して父親の心身に起こる症状を【パタニティーブルー】という言葉を用いて説明しています。日本では、1994年に精神科医の小此木 啓吾先生が「パタニティ・ブルーの心理」という論文を発表しています。
我が子が誕生した喜びの後に、心身に起こるさまざまな不快な症状の出現し、変化することをパタニティーブルーというのです。症状がひどくなってくると、うつ病になってしまう場合もありますので、注意が必要です。
眠れない、食べられない、追いつめられる
身体と心に起こるさまざまな症状についてみていきましょう。・睡眠不足
・わけもなく落ち込む
・食欲不振
・興味喪失
・疲労感
・追いつめられていると感じる
・頭痛
・胃痛
男性版「産後うつ」の発症原因
女性がかかる産後うつ「マタニティーブルー」は原因がはっきりしています。女性の場合は、ホルモンの異常です。しかし、男性の場合の「パタニティーブルー」は、はっきりとした原因がわかっていません。慣れない育児からくる疲れだけでなく、「仕事をしている自分」と「育児をしている自分」のギャップから起こるとも考えられています。
また、生活リズムが変化することが関係しているとも言われています。
育児によって生活リズムが大きく変わる
子どもが生まれて大きく変わるのが、生活のリズムです。慣れない育児(入浴や授乳のお手伝い)・夜泣きなど仕事から帰ってきてもなかなか休むことができなくなってしまうのが現状です。生まれる前は、テレビを観たり、趣味をしたり、奥様とのコミュニケーションを取る時間があったのに、子どもが生まれてからはそうはいきませんよね。子ども中心の生活に切り替わるため、この変化が心と身体に何らかの影響を及ぼします。
イライラするお母さんとさびしくなるお父さん
育児は予想以上に大変です。お父さんだけでなく、お母さんにとっても初めてのことばかり。そのため、妻は夫に時間をかけている暇がなくなります。それに産後1ヶ月は体調もすぐれないため、余計にイライラを募らせてしまう場合だってあるのです。「子どもが泣き止まないのはなぜ?」
「寝ているけど、大丈夫かしら?」
「お風呂に長い時間入れすぎでは?」
「うまく洋服を着せることができない!」
といった、たくさんの疑問や不安を抱えてながら生活しています。
そうなると、夫婦間に小さな溝ができてしまうことだってあり得ます。そして、夫は無意識の中に寂しさを感じてしまうようになるのです。
「我が子はかわいい、だけど自分の方にも向いて欲しい」と感じてしまうようになります。
パタニティーブルーの対処法とは
さまざまな症状が出てきて心身の不調が続く場合は、市販の薬を飲んでもドリンクを飲んでも完全に治るわけではありません。一時的に良くなったかのように感じるだけです。きちんと対処して、悪化しないようにすることが大切になります。
それだけでなく、パタニティーブルーにならないように早期に予防策を実施することもできます。これから子どもが誕生するといった男性は、予防策を打っておくといいでしょう。
不調を感じたら迷わず受診する
仕事に支障が出てきてしまうような症状が続くときは、迷わず受診が必要です。「仕事があるから病院に行けない」は理由にしかすぎません。土日祝日も診てくれる病院はあります。いきなり精神科や心療内科に行けとは言いません。内科でかまいませんので、身体の不調をなんとかすることから始めましょう。(心療内科もやっているところなら、なおいいです。)
身体をふれあうコミュニケーションが効果的
妻とコミュニケーションを取ることが心の状態を良くしてくれます。しかし、育児で疲れていたり、睡眠不足だからとコミュニケーションを取れないこともあるでしょう。夫が子どもをあやしながら話を聞いてもらうなどの方法を使ったり、ハグやキスを中心としたふれあいを持つことを大切にしてみてください。
私の主人は第一子が産まれたあと、胃痛や寝不足、疲れが取れないなどを訴えていました。
当時、私たちはお互いに仕事を抱えていましたので(私は産休を1ヶ月しか取りませんでした)、夜泣きしたら交代に起きて面倒をみるようにしていました。そうすればまとまった睡眠がそれぞれ4時間程度は取れると考えたからです。
ところが不調を訴えるので、受診を勧めました。でも病院はイヤだと行きたがりません。主人のことを「ただのダダっ子だ」と思いながらも具合が悪いのを放っておくことはできませんでした。
仕方がないので、痛がっている部分をなでてあげたり、夜は手をつないで寝たり(子どもはベビーベッドへ寝かせました)、仕事のグチを聞いてとことん味方についてあげるようにしました。出かけるときのキスとハグ、そして
「行ってらっしゃい」
「お帰りなさい」
「お疲れ様」
というねぎらいと思いやりを込めた言葉も積極的にかけるようにしました。
そうしたら1週間ほどで症状は改善され、2週間経った頃には「完全に良くなった」と主人が言ったのです。
この経験から、身体をふれ合うコミュニケーションがマタニティーブルーにも、パタニティーブルーにも良いものだと実感しました。
どんな男性に起きてもおかしくない心の病
子どもが産まれるのは素晴らしいこと。だから、父親がパタニティーブルーになるなんて考えられないかもしれません。しかし、誰の身に起きてもおかしくない心の病であることを知ってもらいたいのです。パタニティーブルーを経験したと子育て経験のある男性は、全体の1割といわれています。
「あれがそうだったのかも」という人を入れたら、前述の調査のように、もっと多いかもしれません。決して他人事と思わずに、おかしいと感じたらこの病を思い出してください。
そして、コミュニケーションの取り方を夫婦でよく考え、話し合いをして欲しいと思います。