身近になりつつあるイスラエル
イスラエルと聞くと、パレスチナ問題などの紛争を思い浮かべる人も多いかと思います。しかし、美意識の高い若い女性の間で人気の「SABON(サボン)」というコスメティックブランドや、表参道などにある大行列のチョコレートショップ「マックスブレナー」も実はイスラエル発祥の会社なのです。案外、イスラエルは日本にとっては身近になり始めている国なのかもしれません。でも、イスラエルって観光に行くことはできるの?誰もがそう思いますよね。実は行くことはできるのです。その方法は「フラッグキャリア」と呼ばれる、その国を代表する航空会社の飛行機に乗ることが一番手っ取り早いのはいうまでもありません。直行便を求めるならなおさらです。
でも、「イスラエルの飛行機って・・・?」と疑問に思った方も多いのではありませんか?ここでは、イスラエルのフラッグキャリア「エル・アル航空」についてのトリビアをお届けします。
イスラエルの観光名所は?
冒頭でも述べたとおり、近年イスラエルは観光客の誘致に力を入れています。イスラエルは「嘆きの壁」などの宗教建築や死海で有名ですが、ワインの産地としても有名です。このような観光資源を活用すべく、イスラエル政府も頑張っているようです。在日イスラエル大使館もこのような動きを受け、さまざまな活動を行っています。一部ご紹介すると・・・
(参考:http://www.yurugp.jp/vote/detail.php?id=00001071)
・アニメ仕立てでイスラエルの魅力を紹介する映像を作り、YouTubeで紹介している。(参考:https://www.youtube.com/watch?v=UFT22S9euEI)
こういう取り組みがあるのは事実です。でも、「イスラエルへの観光は安心して行けるの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。ガザ地区への空爆など、心が痛むニュースも多い国ですものね。
そこで、外務省の海外安全ホームページを見てみました。さすがに、ガザ地区など、一部の地域については「渡航の延期をおすすめします」となっています。
しかしその他の地域については「十分注意してください」という表示でとどまっていました。最後は自己責任で、ということにはなりますが、「行ってはいけない国」というわけではなさそうです。ただし、何かあったときのために個人旅行ではなく、旅行会社が行っているツアーを使うのが無難かもしれません。
イスラエルに行くにはどうすればよい
現在、日本からイスラエルの直行便はありません。正確には「運がよければ乗ることができます」ということになります。これは、イスラエルのフラッグキャリアである「エル・アル航空」が正式には日本に就航していないからです。これに乗れればラッキーですが、そういうラッキーはなかなかあまりありません。また、直行便のチケットをゲットできたからと言っても、すんなりイスラエルに行けるとは限らないのです。その理由は後で述べます。
そこで、日本からイスラエルに行くツアーを見たところ、アラブ首長国連邦のアブダビからヨルダンのアンマンへと行き、ヨルダン国内を通ってからイスラエルに陸路で入国する、というルートを取ることが多いです。それはなぜでしょうか。
ご存知の方も多いでしょうけど、イスラエルはユダヤ教国家であるため、周囲のアラブ諸国と対立しています。そのため、イスラエルのフラッグキャリアであるエル・アル航空は就航できないのです。
事実、エル・アル航空が就航している都市も親イスラエル国家であることが基本となっています。でも、それ以上に、ツアーでエル・アル航空をあまり使わない理由があるのです。それについてお話しましょう。
質問攻めにされるってホント?
皆さんが海外旅行に行くときのことを考えてみてください。航空券を買ったり、ツアーの手配を済ませたりした時点で「当日は飛行機が出る2時間前までに空港でチェックインを済ませてください」と伝えられると思います。しかし、エル・アル航空では事情がちょっと異なり「当日は飛行機が出る4時間前までに空港でチェックインを済ませてください」といわれるのです。
つまり、それだけ時間をかけてチェックインをするから時間に余裕を持ってきてください、ということです。おそらく、「4時間前にきてください」という航空会社は他にはないと思います。
エル・アル航空のセキュリティチェックの厳しさはあまりに有名です。インターネット上で「エル・アル航空 搭乗 体験記」とでも検索してみてください。「あまりにセキュリティチェックが細かくて大変だった」という感想がたくさん出てくるはずです。
セキュリティチェックは、専門係員が3人程度の交代で、質問を繰り返します。何を聞くかということは、人によって異なりますが、必ず聞かれるのは以下のようなことだそうです。
・航空券の取得方法(インターネットで買ったのか、旅行代理店に頼んだのかなど)
・渡航目的(観光なのか、仕事なのか)
これらの他にもさまざまな質問をし、つじつまが合うか、不審者でないか、テロリストに利用されている恐れは無いかを見極めるそうです。これとあわせて、搭乗者の名前をFBIなどの危険人物リストと照合するという綿密さには驚きです。
こんな綿密なセキュリティチェックのため、ひどい人になると「アラブ諸国への入国履歴があったために、散々質問された後、機内持ち込み手荷物を取り上げられて携帯電話とパスポートと財布しか機内に持ち込めなかった」など、もはや客を客と思っていないレベルの事態を体験しています。
当然、ここまで厳しいセキュリティチェックをするため、飛行機が定刻どおりに出発しなというのは日常茶飯事です。そのため、「エル(EL)・アル(AL)は“Everyday Late. Always Late”(毎日遅れる、いつも遅れる)の略だ」と言われています。
一説では、同社がスターアライアンスなどのワールドアライアンスに加盟できないのは、この定時運航率の低さにある、とのことです。もちろん、セキュリティチェックを経ているので、乗ってしまえば快適な空の旅が待っています。普通にしていればつまみ出される、なんてことはありませんので安心してください。
世界一安全な航空会社である理由
エル・アル航空は「世界一安全な航空会社」といわれています。事実、1968年以来ハイジャックや旅客機の墜落などの事故が起こっていません。それはなぜでしょうか?先ほど述べた綿密なセキュリティチェックのほかに、以下のようなハイジャック対策が取られています。
・預けた荷物はすべて減圧室を通って火薬反応が出ないか調べられている。
・すべての機体の床・壁は特別強化仕様となっており、貨物室は耐爆構造になっている。
・地上からのミサイル攻撃に備え、ミサイルかく乱装置(チャフ)が搭載されている。
・飛行機が出発するときは、装甲車のガードを受けて出発する。
厳重警備が必要な理由
宗教建築が好きな私としては、いつかイスラエルは行ってみたい国の一つです。しかし、フラッグキャリアである航空会社が上に書いたような厳しいセキュリティチェックをしないと運行できないほど、政治的には不安定な国でもあります。文中で述べたゆるキャラの「シャロウムちゃん」の名前の由来は、ヘブライ語の「こんにちは」という意味の言葉「シャローム」から来ています。
多くは語りませんが、今のイスラエルの置かれている状況はお世辞にも「平和」とは言えないと思います。平和でないから、飛行機は厳重な対策をして運行しなければならないのでしょう。
いつか、イスラエルが平和になり、誰もが安心して旅行できる場所になることを祈って筆を置きたいと思います。