各自治体で行われている起業家のための「創業支援事業計画」まとめ|トピックスファロー

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2015年9月3日
各自治体で行われている起業家のための「創業支援事業計画」まとめ

起業するにあたり経営資源を揃えるのは難しいものです。創業資金を集めることや、ITや法務の専門家に相談をしているとそれだけで資金は減っていきます。こうした時に「創業支援事業計画」が役立ち、資金、専門家、物件、税金などの問題点を解消します。

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創業支援事業計画の概要と現状

創業支援事業計画についてご存じない起業家の方が多いかもしれません。この計画は、平成25年にアベノミクスの一環として成立された産業競争力強化法に基づいて作られている制度で、起業をする上で様々なメリットを受けられます。そこでまず、産業競争力強化法の概要について見ていきます。

産業競争力強化法に基づいて作られた制度産業競争力強化法とは平成25年12月の成立から向こう5年間、日本における産業の「規制を撤廃」したり、「産業の新陳代謝」を行うことを定めた法律です。

まず「規制を撤廃」することに関しては、企業ごとに特例措置を設け規制を撤廃するほか、新規事業者の参入を促すためにグレーゾーンの撤廃を掲げています。

また、「産業の新陳代謝」については、ベンチャー企業の活性化や既存事業の統廃合に加え、先端技術への投資を掲げています。そして、こうした各種方針の中で、各地域産業を活性化、強化するための政策として「創業支援事業計画」が開始されました。 パソコンをする人

第5回認定までに605の自治体にて採択

平成26年3月20日に「創業支援事業計画」の第1回認定が行われ、94市町村、87件が認定されました。

その後、数か月に1回認定が行われるようになり、平成27年5月の第5回認定時点で山梨県を除く46都道府県605市町村、547件が認定されるに至っています。

また、今後の予定は平成27年10月の上旬に第6回認定が行われる運びになっています。

「特定創業支援事業」の支援内容

この「特定創業支援事業」は中小企業庁の創業支援事業計画認定を受けた自治体が、その地域の起業家に向けて提供している支援内容のことを言い、地域によって内容が異なります。

これは自治体がその地域にある民間事業者、例えば地元金融機関やNPO法人などと協力して支援内容を提供しているからです。ここでは代表的な支援内容を紹介していきます。

ワンストップ相談窓口とは

多くの自治体で提供されており、起業に関する疑問・悩み事を相談できる制度です。

例えば、申請手続きをどうしたらいいか、税金はどのように納めればいいのか、雇用に関する注意点などを相談することができます。

また、こうした相談ができる相手は、弁護士や社労士などその道の専門家であることが多くなっています。

各地で創業セミナーが開催されている

創業に当たって必要な経営者のスキルや知識付与を目的として、各地で創業セミナーが開催されています。

名称は「起業支援セミナー」や「スキルアップ研修」、「女性起業塾」など様々ですが、創業計画書の作成方法であったり、融資を受けるために必要な資金計画書の作成方法などを学ぶことができます。

また自治体によっては、こうした創業セミナーを受講することで、後述する行政のメリットを適用できるようにもなるので、特定創業支援事業を受ける際には確認しておくことがおすすめです。

インキュベーション施設が利用できる

起業するにあたって、テナントやオフィスをどこに構えるかは重要です。ただし、一方では起業当初はそれほど賃料・テナント料を払いたくない気持ちもあるでしょう。そうした時に役立つのが「インキュベーション施設」です。

このインキュベーション施設とは、各地域にある自治体の施設、ないしは協力している企業が提供しているテナントのことです。立地条件などが好条件ながらも、同地域の賃料よりも安く設定されているため人気の施設になっています。

これから起業することを考えている人や、すでに起業している人が賃料を抑えるために利用できます。

制度を使うメリットと注意点

どんな制度にもメリットと注意点はつきものです。この両方を知ることで制度を最大限に活用することができます。そこで特定創業支援事業が起業家にもたらすメリットと利用上の注意点について見ていきます。

制度を活用するメリット

特定創業支援事業では、経営者の悩みを解決したりスキルアップをするだけでなく、行政的なメリットも享受できるようになっています。そこで代表的なメリットを3つ紹介します。 ミーティング中

1.登録免許税を半額にできる

株式会社を設立するにあたって登録免許税を納める必要があります。この登録免許税とは、不動産の登記や会社・個人の商業登記に必要な税金で、これを納めないと企業として認められません。

そして、この登録免許税は株式会社の場合、資本金の0.7%を支払う必要があります。

そこで特定創業支援事業を利用すると、この納税額を半額、つまり0.35%にすることができます。起業前に制度を使っていると納税額を少なくできるようになります。

2.信用保証枠を拡充できる

自治体で提供している創業者向け金融制度では、信用保証枠が1,000万円などに定められています。この信用保証枠とは、信用保証協会が債務保証をしてくれる限度枠のことで、万が一の返済が出来なくなった際に保証協会が代理返済をしてくれる限度額のことです。(※ただし、債務者に返済義務がなくなるわけではありません。)

この信用保証枠を1,500万円に拡充することができます。また、日本政策金融公庫では「新創業融資制度」を受けられるようになり、無担保・無保証人で借り入れができるようになるのです。通常よりも資金調達がしやすくなります。

3.創業保証関連の特例を半年前から受けられる

起業するにあたって、融資を受ける際には保証協会に保証してもらう場合が多いです。そして、通常、創業の2か月からしか保証してもらえません。つまり、無保証で借り入れをしたい場合には、創業2か月前まで待たなければいけないのです。

しかし、特定創業支援事業を利用していれば、それを半年前からにすることができます。したがって、資金調達の期間に余裕を持つことができ、各種税金や先行投資などを融資によって補えるようになります。開業までのステップが楽になるのです。

制度を活用する注意点

ただし、特定創業支援事業には注意点もあります。こちらも合わせて確認しておきましょう。 悩む男性

1.まず審査に通過しなければならない

特定創業支援事業のメリットを享受するには、自治体が行っている「審査」に通過する必要があります。

この審査内容には例えば、創業前かどうか、創業者にノウハウがあるかなど、様々な観点から調べられます。もちろん、審査に通れば問題ありませんが、場合によってはメリットを受けられない可能性もあるので注意が必要です。

2.セミナーなどが満席の場合もある

特定創業支援事業を受けるには、創業セミナーなどの参加が必要になっています。

しかし、自治体によっては小規模で行われており、満席になっていることもあります。また、インキュベーション施設を利用したくても満室になっていることもあり、必ずしもすべての支援を受けられるわけではありません。そのため、定期的に確認をしておく必要があります。

証明書を発行してもらうまでの流れ

特定創業支援事業を受けるためには「証明書」が必要になります。そこで証明書を受け取るまでの流れを紹介します。

自治体が主催するセミナーやイベントに参加する

証明書を発行してもらうためには、各自治体で開催している「創業セミナー」や「経営者スキルアップ研修」などに参加することが必要です。

こうしたセミナーやイベントに参加すると、その事実が自治体に連絡され、交付申請ができるようになります。まずは起業する地域で行われているセミナーを調べてみましょう。

各自治体にて交付申請を行う

セミナーに参加したら、交付申請を行います。証明申請書に、受けた支援内容や起業する会社名などを記入して、各自治体に提出します。直接役所に行って記入する際は問題ないですが、郵送する場合は自治体の産業支援課や創業支援係等担当部署が決められているため、自治体ごとに確認するといいでしょう。

証明書の発行および送付

証明申請書の提出が完了すると、各自治体にて申請書に不備がないか確認されます。無事に受理されると証明書の発行が行われます。通常は1週間程度で発行が完了するので、万が一明らかに遅い場合には、各担当課に確認を取るといいでしょう。 コーヒーを飲む男性

起業前には特定創業支援事業を利用する

起業するにあたって、一人では解決できない悩み事は多いはずです。こうした時に特定創業支援事業を利用すれば、その道の専門家に相談でき、的確なアドバイスをもらえます。

また、通常よりも行政的なメリットを享受できる可能性もあるので、起業のハードルを下げることができます。

まずは起業する地域の「自治体名」と「特定創業支援事業」で検索したり、調べてみることから始めましょう。地域で取り組んでいる支援内容などを調べ、活用することで、起業に向けての第一歩を踏み出すことに繋がることでしょう。

著者:吉田 昌弘

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