「自分だけは大丈夫」と思っていませんか?
テレビドラマを見ていて、こんなシーンに出くわしたことはありませんか?誰かが亡くなって、家族や親戚一同が集まっている。目の前には銀行の通帳や土地の権利書。一人が『自分の嫁は親父(亡くなった人)の面倒を見ていたのだから、もっと遺産をもらっていいはずだ』と主張し始め・・・典型的な「遺産争い」の現場です。「そんなのって、テレビドラマや一部のお金持ちの人だけの話でしょ?」と思われるかもしれません。「自分には関係ない、大丈夫」と安心しきっている人もいらっしゃるでしょう。でも、これから書くことを冷静に読んでみてください。
意外と身近な相続問題
2011年度の司法統計年報の「遺産分割事件件数の遺産価格別割合」によると、「1,000万円以下が31%」「5,000万円以下が45%」ということです。つまり、約8割が「5,000万円以下の相続でもめている」ということになります。
5,000万円と書くと、一見莫大なお金のように思えますが、大都市近郊に持ち家を持って暮らしていれば、その不動産価値だけで相当なものになります。また、長年働いてきた人だったら、銀行や郵便局に貯金や預金があったり、有価証券の1つや2つは持っていたりするものです。
何が言いたいのかというと、「5,000万円以下のラインなら誰でもあっという間に達してしまう」ということです。言い換えれば、「遺産争いは他人事でもなんでもない」のです。それでも「自分は関係ない、大丈夫」といえますか?言えない人のほうが多いですよね。
では、このような「遺産争い」を回避するためには、いったい何に気をつければいいのでしょうか。
1.遺言状を作る。
そもそも、遺産争いは何が原因で起こるか考えたことがありますか?「分けなくてはいけないお金がふんだんにある」ことも原因ですが、一番は、「亡くなった人がどうしてほしかったのかわからない」ことが原因で起こるのです。
そのため、残される家族のことを考えれば、何らかの形で自分の意思を残すことが必要になってきます。いっぱしの財産を持っているなら、それをどう分配するかということもオフィシャルな形で残すといいでしょう。それが遺言状です。
遺言状を何らかの形で作るのは相続においては大事なことです。なお、似たようなものとして「エンディングノート」というものがあります。
エンディングノート自体は文房具店や書店などで売っているので、興味がある方は入手して、書き始めてみるといいでしょう。
2.生前贈与の制度を活用する。
先ほどから書いている通り、相続がもめるのは「亡くなった人が何を考えていたかわからないから」ということが原因の一つとして大きいです。ならば、生きているうちからできることはやっておこう、というのがこの生前贈与という制度です。これは、文字通り、「生きているうちに財産を親族に贈与する」という制度です。
仮に、被相続人のAさんがいるとします。そのAさんが3人の子供に毎年120万円を10年間贈与するとしたら、贈与しない場合に比べて税金はどう変わるのでしょうか。
Aさんの相続財産を1億5,000万円とした場合、基礎控除額は4,800万円(=3,000万円+600万円×3人)となります。課税遺産は1億200万円となり、3人で均等に割ったとすれば、相続税の合計は1,440万円(=(1人当たり課税遺産3,400万円×税率20%-控除200万円)×3人分)となります。
一方、生前贈与を使った場合、10年間でかかる贈与税の合計は30万円となります。これは、「基礎控除後の課税金額10万円×税率10%×3人×10年」という式で求められます。また、相続税の計算の基礎となる課税遺産は6,600万円となり、3人で均等に割ったとすれば、相続税の総額は840万円となります。(なお、計算式は「(1人当たり課税遺産2,200万円×税率15%-50万円)×3人」として計算。)
まとめ
「金の切れ目は縁の切れ目」と言うことわざにもあるように、お金のトラブルはいつの時代でも人間関係に大きくかかわってしまうもの。そのため、「人生においてお金がからむ一大イベント」である相続も慎重に行う必要があります。
「生きているときから死んだ後のことを考えるのは縁起が悪い」という風潮が日本にはまだあります。しかし折を見て「自分が死んだ後のお金の扱い」を真剣に考えるのは、とても大事なのです。