決して失礼じゃない!これが正式名称なんです!
頬かむりをし、あたかも農作業の途中の様なおばさんが、『ピンクと黄色のパラソル』の下でたたずんでいます。
それを見た子供達が喜びながら『ババヘラ!』と叫びます。
この光景を初めて見た人は『ババだなんて。失礼な!』と思うかも知れませんが、これは全く失礼じゃないのです。
子供達に中傷する気持ちはなく、そのおばさんの売っているものを知っているから喜んで叫んだのです。
では、このおばさんはピンクと黄色のパラソルの下で何を売っていたのでしょうか?
それはアイスです。
このおばさんは路肩でアイスを売っていたのです。
『ピンクと黄色のパラソル』や『頬かむりのおばさん』はババヘラと呼ばれるアイスを売っている目印だったのです。
だから子供達はアイス食べたさに、つい大喜びをして『ババヘラ』と叫んでしまったのです。
路肩のアイス売りは、全国であまり見かける事はありませんが、秋田では普通の事。
ババヘラは秋田県民が愛してやまないご当地スイーツなのです。
ババヘラの意味って…?
ところで、なぜ、路肩のアイス売りを『ババヘラ』と言うのでしょうか?
もともと、この販売方法に名称はついていませんでした。
名前の由来については諸説ありますが、一般的に言われているのが、
『おばさん(秋田弁でババ)がヘラでアイスをコーンによそうから』
というのが由来みたいです。
これが商標登録※され浸透し路肩でアイスを売っているおばさん=『ババヘラ』になっていったそうです。
簡単なネーミングですが、秋田弁の持つ“らしさ”が感じられます。
ちなみに、販売員の年齢や性別で呼び方が変わるみたいです。
若い女性→『ネッチャ(お姉ちゃんの意味)ヘラ』
『ギャルヘラ』『アネヘラ』
若い男性→『ニッチャ(お兄ちゃんの意味)ヘラ』『アニヘラ』
男性→『オド(お父さんの意味)ヘラ』『ジジ(おじさんやおじいさんの意味)ヘラ』
と、言われています。実に秋田弁らしい呼び方ですね。
※ババヘラを商標登録しているのは1社だけでしたが、最近では他の業者も使用しています。
『経験』と『センス』が光るババヘラアート
ババヘラアイスの味は、黄色い『バナナ味』とピンク色の『イチゴ味』の2種類です。
丁度『黄色とピンクのパラソル』が表しています。
食感はソフトクリームというよりもシャーベットに近い感覚。
それを丁寧にヘラでとり、コーンによそっていくわけですが、稀に芸術作品に出逢えます。
黄色とピンクのコントラストを上手に利用して、艶やかな薔薇の花一輪を渡してくれます。
長年ババヘラに携わってきた技術と女性が持つ優れたセンスの所産ではないでしょうか。
黄色一色もしくはピンク一色の薔薇や、黄色とピンクの花びらを交互に咲かせた薔薇はスイーツの域を凌駕し芸術と言っても過言ではありません。
秋田でババヘラを見つけたなら、車を停めて寄ってみると良いかもしれません。
何とも言えない温かみのある秋田弁で話しかけてくれるおばさんの芸術に出逢えるでしょう。
夏の暑い時期に路上でいただくババヘラは、食べるのが勿体無いくらい美しい作品ですが、火照った体に清涼感を与えてくれるアイスです。
秋田県民に愛される路上の冷たいアート ~ババヘラ~
子供達が喜んで叫び声をあげる『ババヘラ』。
決して失礼な呼称などではなく、秋田県民から愛されている証左だという事がお分かりになったと思います。
秋田の道路沿いで『頬かむり&パラソル』を見かけたら、ぜひ足をとめてみてください。
入道雲の下、思いもかけない芸術作品に出逢えるかもしれません。
空の青に映える、黄色とピンクの織りなす一輪の薔薇に癒される事間違いなしです。
照りつける日差しと路肩の冷たいアート『ババヘラ』。
見て感動し、心に癒しを与え、食べる事で体に癒しを与える。
秋田でしか味わえない究極のスイーツではないでしょうか。