駅弁は古典ご当地グルメだ!
今でこそ全国各地に空港が乱立し、半日もあれば全国どこへでも行ける時代ですが、昔は列車に長時間揺られながらの鉄道旅行が主流でした。
今のように携帯ゲーム機もスマートフォンもパソコンも無い時代は、食べることが鉄道での移動中の楽しみの大半を占めていたものです。シャリシャリとした食感とキンと冷えた甘さの冷凍みかんも食べる楽しみの一つですが、やはり鉄道旅行と言ったら駅弁です。駅弁こそがその地方を代表するご当地グルメだったのです。
信越本線・横川駅の「峠の釜めし」
今は廃線された碓氷峠を登るJR信越本線の横川~軽井沢間は、多くの鉄道ファンの憧れと言えます。勾配のきつい峠を登るために、各列車に機関車を連結する姿が見られるからです。
横川駅を訪れる多くの鉄道ファン・観光客のもう一つのお目当てがおぎのやの「峠の釜めし」です。
峠の釜めしの特徴は、何と言っても栃木県の益子焼で作られた陶器製の釜です。一人用サイズなので小さいもののずっしりとした安定感と、陶器から伝わる温もりが人気です。そして、保温性の高い陶器が器になっているため長時間温かさを保てるのです。駅弁と言えば冷たいというのが一般的なイメージですが、峠の釜めしはそれを覆すことで多くのファンを獲得したのです。
横川~軽井沢間の廃線や自動車への移行などでやや衰えてはいるものの、ドライブインなどでも購入できる駅弁として今も根強い人気を誇っています。
富山駅の「ますのすし」
駅弁にはよく言えば無難、悪く言えば没個性的な幕の内弁当と、地方色を全面に押し出して観光客にアピールしている弁当があるといえます。多くの場合、ご当地グルメとなるのが後者の地方色豊かな弁当で、そうした弁当の代表と言えるのが富山の「ますのすし」です。
ますのすしは富山の郷土料理である鱒寿司をモチーフにした駅弁で、竹製の曲げ物に笹の葉を放射状に並べ酢飯を詰め込みサクラマスが並べられた、非常にシンプルなものです。元々は押し寿司の一種なので、時間を置けば置くほどシャリとサクラマスの風味が落ち着いて、酢の力と笹の清涼感ある香りによって美味しさが増すのです。
今やオリジナルの鱒寿司よりも「ますのすし」の方が富山の郷土料理として全国的な知名度を誇っているほどなのです。
鳥取県の「元祖かに寿司」
日本人は「世界有数のカニ食い民族」と言ってもいいくらいにカニが大好きです。そのカニ好き嗜好を反映してか、有名な駅弁の中にはカニをメイン食材にしているものも少なくありません。
カニの駅弁で真っ先に名前が挙がるのは、何と言ってもJR函館本線長万部駅の「かにめし」でしょう。しかし、通の答えはもうちょっと違います。
JR山陰本線を代表する駅弁、それがアベ鳥取堂の「元祖かに寿司」です。「元祖」とついているように、元祖かに寿司こそが日本で初めてカニを使ったちらし寿司型駅弁なのです。
鳥取と言えば、最高級ズワイガニである「松葉がに」。地元で水揚げされた新鮮なズワイガニをふんだんに使った元祖かに寿司には、長年のファンも多く鳥取を代表するご当地グルメの一つと言えます。
北海道森町の「いかめし」
ご当地グルメの条件の一つは、「地元の食材を使っている事」。いかに革新的で美味しい料理でもご当地感を感じられないのであればそれはただの創作料理にすぎません。やはり地元に根付いた食材を使うからこそご当地グルメと言えるのです。
全国的にも有名な駅弁で、なおかつご当地グルメと言えばやはりJR函館本線森町の「いかめし」を外すわけにはいきません。小ぶりなスルメイカの胴の中にもち米・うるち米を詰め込み、煮込んで醤油で甘辛く味付けした、実にシンプルな逸品です。しかも、いかめしは昔からある郷土料理ではなく、「いかめし」の販売元であるいかめし阿部商店が考案した創作料理なのです。
いかめしはシンプルな料理ながら、イカの食感ともち米特有のもちもち感が同時に楽しめる上にお腹も満足するという言うことなしのご当地グルメで、各地の全国駅弁大会では定番となっている超人気駅弁なのです。