知覚過敏はなぜ痛む?~痛みのメカニズム~
冷たい物を食べたり、歯磨きの途中、突然「キーン」と痛み出す知覚過敏。
虫歯が慢性的に「ズキズキ」と痛み続けるのとは違い、知覚過敏は「一時的な痛み」で終わるのが特徴です。
しかし、その痛みの原因は、虫歯と同じ『歯髄』にあります。
痛みの原因は「露出した象牙質」
歯は大きく3層に分けることが出来ます。
- 第1層:歯の表面を覆う『エナメル質』
- 第2層:歯の土台となる『象牙質』
- 第3層:血管と神経が通っている『歯髄』
この、最も表面にある『エナメル質』には神経がなく、削られても痛みを感じる事はありません。
しかし『エナメル質』が削れ、その下の『象牙質』が露出し、そこに受けた刺激は『歯髄』から神経を通って、「痛み」として脳へと送られます。
この為、知覚過敏は『象牙質知覚過敏症』と呼ばれています。
「痛み」しか理解できない『歯髄』
氷に触れれば「冷たい」ですし、砂糖は「甘い」と感じるのが普通です。
しかし知覚過敏は、どんな刺激でも「痛い」としか感じない事に疑問を持ったことはありませんか?
これは、歯髄神経が『痛みの信号』しか伝えられない事が原因です。
「冷たさ」から受ける刺激も、「甘さ」によって受ける刺激も、全ての刺激は歯髄神経を通った瞬間に痛みの信号に変化してしまいます。
知覚過敏の原因
知覚過敏は、露出した象牙質が刺激を受ける事で起きます。
では、エナメル質で覆われている象牙質が、なぜ露出する事になるのでしょうか?
原因1【エナメル質の損傷】
象牙質を覆うエナメル質が、溶けたり削れることで象牙質が露出するケースです。
エナメル質が壊れる原因としては『虫歯』『間違ったブラッシング』『歯ぎしり』『噛み合わせの悪さ』『酸蝕*1』などが上げられます。
*1酸蝕:果実やワイン、お酢など酸性の高い食事によってエナメル質が溶けていく症状。酸蝕歯ともよばれ、虫歯、歯周病に次ぐ歯を失う原因の1つ。
原因2【歯肉の後退】
歯肉の中にある、歯の根元の部分にはエナメル質が無く(あっても薄い)、歯肉が後退する事で、簡単に象牙質が露出してしまいます。
知覚過敏の72%~90%は、この歯の根元部分で起きています。
主な原因としては、『歯周病』『老化』が上げられます。また今まで蓋の役割をしていた『歯石の除去』によって、一時的に知覚過敏を起こす事もあります。
知覚過敏の予防法
知覚過敏の予防法は『エナメル質を守る』事と、『健康な歯肉を保つ』の2つ。
では、その方法を紹介します。
正しい歯ブラシ選びとブラッシング
虫歯と歯周病を同時に予防できるのは、歯磨きが基本にして最も有効な方法です。
しかし、固すぎる(自分に合っていない)歯ブラシでは、エナメル質を削る事になりますし、間違ったブラッシングでは歯垢を落とし切れません。
また、食後は口の中が酸性になり、エナメル質が通常時よりも脆くなっています。
唾液の作用で中性になるまでの30分間は、歯磨きをしない方がいいでしょう。
酸の強い食品に気を付ける
酸蝕歯を防ぐには、酸性の強いワインや炭酸・スポーツ飲料を取らない事ですが、現代の食生活のでは難しいでしょう。
そこで、「酸の強い食品を長時間、口に含まない」「水で口をすすいで、口腔の酸性度を下げる」だけでも効果があります。
「痛い」時の対処法
それでも、知覚過敏になってしまった時は、『歯医者へ行く』が正解です。
歯医者で露出した象牙質を、薬やレジンなどでコーティングする事で痛みを抑えてくれます。
また、知覚過敏となった原因とその対処法(正しい歯磨きの仕方等)も教えくれるでしょう。
忙しい時は「知覚過敏用の歯磨き粉」を使う
CMでも有名な『シュミテクト』などの知覚過敏用歯磨き粉を使用するのも有効でしょう。
しかし、原因が虫歯や歯周病であった場合、痛みが引いた事で、より症状を悪化させる可能性が無いとは言い切れません。
一時的な対処・予防法と考える事をおススメします。
虫歯じゃなくたって歯医者へ行ってもいいんです
知覚過敏は、自分の目では見られない口の中の異常を、何よりも早く教えてくれる信号なのかもしれません。
「たかが知覚過敏ごときで歯医者なんて」などとは思わず、異常を感じたら歯医者で検診を受けた方がいいでしょう。
貴方の気が付いていない、虫歯や歯周病が見つかるかもしれません。