ご当地グルメの新規開発は本当にプラスになるか?
ご当地グルメ・ご当地B級グルメは、今や観光客誘致の切り札として認知されています。
土地ごとに根付いた料理を味わうにはその土地に行かなければならないのですから、ある意味当然のことといえます。
最近ではB-1グランプリで上位入賞を果たしたご当地グルメの製品化も活発になっており、観光客の増加と合わせて地域に入ってくるお金は途轍もないほどに膨れ上がっています。そのため、我も我もと多くの自治体がご当地グルメの新規開発に乗り出していますが、それは果たしていいことなのでしょうか?
「ご当地グルメ=地元食材を使っている」ではない
ご当地グルメとは「地産地消」、地元で獲れた食材を地元で消費するという考え方に則った地域の名物料理を指すというのが一般的な認識です。
だからこそ、「地元食材を使っていればご当地グルメである」とばかりに新規開発を行っているのです。
しかし、ご当地グルメはただ地元食材を使っていればいいというわけではありません。地元住民の多くが「ウチのご当地グルメはこれだ!」と胸を張って推薦できる、舌に馴染みがある料理であることが大事です。
地元住民が誰も食べたことがない料理が「これがわが町のご当地グルメでござい」と喧伝されていることは珍しくない話なのです。
カレー・焼きそば・ハンバーガーのバリエーションは飽きられ始めている
ご当地B級グルメに多くみられるのが、カレー・焼きそば・ハンバーガーの三種類です。B級グルメと銘打っている以上、気軽に食べられてかつ飽きの来ない料理であることは非常に重要だからです。
しかし、逆に言えば「ご当地B級グルメと言えばこれ」と新規開発されるのが、カレー・焼きそば・ハンバーガーばかりとなっているのです。
これらのメニューは多くの人にとって馴染みのある料理であり、よほど突飛なことをしない限り無難に収まるものと言えます。要するに開発する側にとっては外れにくい料理の原型といえます。
そのため、せっかく全国各地からご当地B級グルメを集めてきてもカレー・焼きそば・ハンバーガーがほとんどという審査する方にとっては代わり映えのしないものとなってしまい、ご当地B級グルメ自体の衰退を招く原因にもなりつつあるのです。
一過性のブームを乗り越えられるか
ご当地B級グルメの祭典であるB-1グランプリは、今やご当地B級グルメの登竜門という大きな権威付けを行う場所となっています。過去のB-1グランプリチャンピオンである富士宮焼きそばや厚木シロコロホルモンなどはその権威によってご当地グルメを越えた定番料理となりつつあります。
しかし、B-1グランプリで優勝できたから全国的にメジャーな料理になるかと言えばそういうわけではありません。「B-1グランプリ優勝」というご祝儀的なブームを乗り越えて定番化出来なければ、一発屋で終わってしまう可能性が大きいのです。
一発屋で終わったご当地B級グルメは悲惨なもので、観光客誘致に力を発揮できない上に商品化による収入増が期待できないため、自治体にとっては良い面の皮という所です。
便乗業者の横行
運よくご当地B級グルメとしてブームを起こして知名度を上げたとしても、さらに頭の痛い問題が浮上してくるものです。それは、ブームに便乗した業者が続出してくるということです。
ご当地B級グルメは、推進役となる自治体が団体を作って「この料理には地元食材である~を使っていなければならない」などの定義を決めて、その定義に従って料理を提供できる店を公認して推奨する仕組みになっている所が多いのですが、団体の公認を受けないで料理を提供する店が出てくることは良くある話です。
また、地域外の店がご当地グルメを謳ってメニューを提供するケースもあり、本来なら観光客として地元を訪れてくれる可能性のある消費者を横取りする形になってしまっていることもあるのです。
郷土料理の見直しがこれからのトレンドかも
このように、ご当地グルメの新規開発は「いかに地元民に定着させられるか」と「いかに全国的に魅力的なメニューを開発できるか」という問題点をクリアしなければならない物と結論付けられます。
しかし、新規開発されるご当地グルメの多くは問題点をクリアできているとは言い難く、他地域のご当地グルメの焼き直しに終始しているものが多く見受けられます。
今後のご当地グルメを牽引していく可能性があるのは、カレー・焼きそば・ハンバーガーではなく郷土料理であると考えられます。2012年度のB-1グランプリでは青森の郷土料理である八戸せんべい汁がグランプリを受賞していることがその根拠です。
郷土料理は地元民の日常生活に溶け込んだ文化であり、地元食材で作れる料理であるというご当地グルメの条件を満たしています。
そういった地元の食文化の見直しこそが、本当の意味でのご当地グルメの普及につながるのではないでしょうか。