トリアージナースとは
あなたが空腹の時に飲食店に入り、メニューを見て何か注文するとします。その料理が運ばれる前に、自分より後にきたお客に同じ料理が運ばれるとなるとどう思うでしょうか。
店員は「あちらのお客様の方がお腹が空いているようなので・・・」などと、ひと言こぼします。飲食店だったら問題ありなこういう場面、救急外来ではよくあることです。
飲食店と同じように、来た人から順番に相手をしていたのでは命を救えないという危険性があるためです。
大きい事故や災害の時、同時に複数の患者が病院に来てしまうこともあります。その際に一人でも多くの命を救うためには、その救急患者が一刻を争うほどすぐに治療が必要なのか、はたまたもう少し待っても大丈夫か、それはどのくらいの時間大丈夫なのかを判断し優先順位をつけなくてはいけません。
その優先順位をつけ診察する順番を決める看護師をトリアージナースといいます。
トリアージナースの仕事と必要性
トリアージナースの仕事内容は、診察にきた患者の重症度を判断し、スムーズに治療が行えるようにすること。最優先で治療が必要な患者を「緊急」、少しの時間待つことは大丈夫だが一時間以内に治療が必要な患者を「準緊急」、もう少し余裕のある患者を「安定」といった具合に判別します。
そして、それらの患者の治療の流れを作っていくのです。これを行うためには多くの細かい仕事をこなさなければいけません。ざっと並べるとこのようになります。
○症状の把握や異常の発見
○患者の優先順位を決め、本人や家族に説明し承諾を得る
○患者を診察室へ誘導し医師に症状、病態を説明する
○診察を待っている患者の精神的ケア
○診察を待つ時間が長くなれば症状の悪化がないかの再確認
また、症状を把握したり異常を発見するためにはそれが瞬時にわかるように日頃の情報収集や勉強で知識を蓄えることも大事な仕事だといえるのではないでしょうか。
震災などの災害や救急車の発動台数の増加などが影響し、トリアージを導入する病院は増えているといいます。救急外来にくる患者の中には軽症なのに焦ってきてしまう例なども多いようです。それとは反対に、患者本人には症状の重さの自覚はないのですが、実は緊急な治療を要するというケースもあるそうです。
訪れるさまざまな症状の患者を判別し、一人でも多くの人の命を救うためにも、トリアージナースは必要性の高い存在だということでしょう。
しかし現状ではまだまだトリアージナースの数は少ないといわれています。理想では、救急外来にトリアージナースは3人ほど必要だと言われています。今後はその数が増えていくと予想されてはいますが、現段階ではまだまだ不足しているとのこと。
それはトリアージナースというものの認知度が問題だとされています。
しかしもしもこの仕事に興味がある、こんなにやりがいのある仕事はないと感じる人がいるならこんな今こそがトリアージナースを目指す絶好の時期なのかもしれません。
トリアージナースになるには資格が必要なの?
トリアージナースになるために資格などは必要ありません。日本救急看護学会などの研究会や、講習会へ参加することがトリアージナースになる一般的な方法です。
しかし研究会や、講習会を受講するためには、救急看護の病棟での実務経験がいることなど受講資格というものがあることがほとんどです。
トリアージをするには判断力はもちろん、さまざまな症状の急変に対応できる能力も大事です。それは救急看護での経験を積まないと得れないもの。トリアージナースを目指したいという人は救急外来、救急科のある病院へと転職を検討する必要があるでしょう。中でも育成に力を入れた病院での勤務が、トリアージナースへなるための近道となります。
これだけニーズの高いトリアージナースという存在なのですが、医師に見せる前に看護師の判断で治療のタイミングを決められることに不安を感じる声も多いのだといいます。
また患者や家族からすれば緊急で治療して欲しいと思うのは当たり前のこと。それが後回しにされてしまうとしたら、どうしても不快に感じてしまうことでしょう。
飲食店での提供が後回しにされるのとは緊迫感も違えば苛立ちも違います。そこで患者、家族へしっかりした説得ができ理解してもらう会話の能力、というのもトリアージナースには必要なものだと思います。