顎の関節を理解していこう
昔と今の標準的な顔を比べると、圧倒的に現代人の顎が細くなってきているという事実があります。顎が細くなることによるトラブルで一番多いのは『歯並び』です。筆者は整骨院で運動部の学生を診る事が多いのですが、歯の矯正をされている方はとても増えているように感じます。
そして同じように増えているのが顎の関節のご相談です。筆者は1日40~50人くらいの施術をします。多い日にはそのうち10人が顎のトラブルを訴え、施術する事があります。
「顎が開けにくい」「ポキポキ音が鳴る」「動かすと痛い」が3トップになります。
噛み合わせが悪いと顎の関節に影響出る
なかでもの多くの方から『以前、噛み合わせが悪いと歯医者さんに注意されていた』という話をよく聞きます。では、噛み合わせが悪いとなぜ顎の関節に影響が出るのか?足を組むと骨盤が歪むと、なんとなく聞いたことがあると思います。これと同じ原理です。
噛み合わせが悪いといつも同じところで噛んでしまいます。同じところで噛んでしまうと顎が傾きます。顎を使うのは食事の時だけでなく話す事でも使われます。顎の関節は個人差がありますが、約2000~3000回動いている関節なのです。その動きで大事な役割をしているのが「関節円板」です
大事な関節円板はどんな役目をしているのか
ズバリ関節円板は「クッション」の役割をしています。下顎顆と下顎窩の動きに合わせて動く線維軟骨性のクッションです。この関節円板が引っかかってしまうと開口閉口時にクリック音が発生し、顎の調子がおかしいと認識する方が多いです。またクリック音が続くと関節円板だけでなく関節自体が変形し、完治には手術という方法を選択せねばならない場合もあります。とても身近で、誰もが起こしやすい症例の1つではないでしょうか。
関節円板の異常は顎関節症のサイン
まず顎関節症には4タイプあります。
1)筋肉の障害によって起こるタイプ(Ⅰ型)
咀嚼(そしゃく)の為に使われる筋肉は、顎まわりからこめかみまで続いています。
その筋肉が緊張し、炎症を起こし痛みを出します。
2)関節包・靱帯の障害によって起こるタイプ(Ⅱ型)
いわゆる、捻挫した状態です。口の開閉時に痛みを伴い音も多少ありますが、開けづらさを感じる事の多い症例です。開かないというより痛いから開けたくないという状態です。
3)関節円板の障害によって起こるタイプ(Ⅲ型)
上記でも登場した関節円板が引っかかったり、詰まってしまったりすることで顎が開かなくなります。痛みは無いが、大きな音がするので痛みよりも不具合を先に感じることが多いです。
4)変形性関節症によって起こるタイプ(Ⅳ型)
これは、Ⅲ型とも関連が深いとされていて、Ⅲ型を放っておいたために炎症が進み、変形してしまった事が挙げられます。ひどいものでは痛みが強く、手術を余儀なくされる症例もあります。
顎関節症の原因
原因については、多くの事が考えられます。日常の噛む癖や外傷(打撲)、噛み合わせや歯ぎしり、うつ伏せでの読書や姿勢、解剖学的な構造の脆弱(筋肉や骨の衰え)などがあり、1つの原因だけでなく多発的に負担をかけてしまっているケースが多いです。前述の通り、顎が細くなり歯列矯正が必要なケースが増えている現代では、同時に顎のトラブルも多いと思います。
症状に合わせて治療を選んで
上記4つの症状に合わせて、治療や病院などを選ぶようにして下さい。Ⅰ型は噛み合わせや夜中の歯ぎしりなどが影響しますので、歯医者でマウスピースや噛み合わせの治療が必要です。Ⅱ型は「捻挫」になるので整骨院や接骨院などで矯正を行える院を選ぶといいでしょう。Ⅲ型は歯医者と矯正の出来る整骨院などを併用して治療にあたる場合が多いです。Ⅳ型で気づく方は少なく、気がついていたけれど、放っておいてしまったケースが多いように思えます。まずは、歯科院へ相談し、併せて矯正の出来る整骨院も選択するといいでしょう。
つまひげ先生が行う施術法・自分で行うセルフケア
当院には、医師、歯科医師、看護師といった医療従事者も治療や身体のケアで来院されます。実際に当院の施術(歪み)を体験した医療従事者から患者さんの紹介を受ける事がほとんどです。これは体の変化を体験できたからこそ、信頼されていることを証明する口コミだと自負しております。
歯科医師の方とよくお話をさせてもらう事ですが、歯の調整はミリどころではなく、マイクロミリのレベルで削ったりするようです。歯科医師も出来れば深く削りたくないのが本音。もし顎や首からの歪みで噛み合わせに影響を及ぼしている場合、調整してから削るという選択は至極当然の事だと言えると思います。
私たち整骨院側としては、口内のチェックではなく顎関節が正常に動いているかを診ます。その後で歯科院に通い、歯の調整をした患者さんは、ズレる回数も減り、肩こりや頭痛までも減ったというご報告は少なくありません。
首と顎の歪み、噛み合わせをチェックしてみよう
顎の歪みでそんなに変わるのか?という問いも多いと思います。自分で出来るセルフチェックとともに少し試してみましょう。まずは正しいチェック方法からご説明します。出来るだけまっすぐ良い姿勢を心掛けて口を開けて、ゆっくり口を閉じてみて下さい。歯全体が同時にぶつかれば噛み合わせはバッチリです。もし、左右のどちらかの歯が先に当たったり、最後まで噛みしめた際に少しズレてしまったら要注意です。
では、試しに歪むとどうなるか感じて頂きます。正しいやり方の歯の当たる感じを覚えておいて下さい。そしていい姿勢のまま左右どちらかに傾げて、口を開けてゆっくり口を閉じてみて下さい。先ほどと歯の当たる場所が違うのを感じられると思います。
歯の矯正や治療にも影響が大きい
いかがですか?首や顎も噛み合わせに作用している事は実感できたでしょうか。子供の場合も同じです。もし、小児矯正する時に首や顎、または背中まで曲がっている状態で高いお金を払ったとしても、正しい位置に矯正したと言えるでしょうか?
当院に来院されている歯科医師の方々は、矯正や歯を削る時にそこまで考えている方が多く、当院の施術を受けているからこそ患者さんをご紹介頂けるのです。また、筆者がお世話になっている施術家の方の中にも、歪みは噛み合わせや首から始まると考えている先生も多くおられます。顎自体に痛みやズレを感じる場合は、顎の矯正も出来る整骨院にご相談される事をお薦め致します。
では、顎にズレを感じる方も感じない方も、靭帯や筋肉そして関節円板の動きを良くする為のケア方法をご紹介します。
自分で行うケアの注意点
噛み合わせに関しては、喰いしばりなど直接歯が削れている場合があります。上記のセルフチェックでまっすぐ口を閉じ歯の当たり方が悪い場合で、顎にも異常が診られない方は、歯自体の診察をお薦め致します。
自分で出来るケアの注意点としては、頑張りすぎない事。少し疲れるくらいが筋肉や靭帯にとって良い刺激となります。また関節の音が鳴るような無理な動きは避ける事です。
顎関節セルフケア 予防・初級編
1)まず、口を閉じた状態のまま両手で顎を包み頬杖する感じで手を当てます。
親指が顎の後ろで小指は鼻の横に当たるように把持します。
2)唇が離れないように口を開けます。顎を押さえた両手は指などがずれない程度の力です。
口を開けて10秒したら、そのままの状態で下顎を右にずらし5秒、反対の左にずらし同じ様に5秒行って下さい。
3)次に最初の口を開けた状態から顎を後ろの方向(顎を引く)に5秒、顎を前(しゃくれさせる)に5秒行います。
4)最後は口を閉じ、奥歯で軽く噛んで下さい。その時、手に顎の筋肉が動くのを感じると思います。その動きが同時になるように5回噛んで終了となります。
初級ではあまり抵抗をつけるのではなく、動きが悪い方向に関してストレッチのように少しフォローして挙げる気持ちで動かして下さい。
顎関節セルフケア リハビリ・上級編
上級のやり方としては初級のやり方にプラスして、把持した両手で抵抗を加えます。口を開ける時には開かないように少し抵抗をかけ、左右にずらす時には逆側に向けて少し抵抗をかけるようにしてみて下さい。無理やり抵抗を加えると筋肉を痛めてしまうので、気を付けて行って下さい。
基本的には、初級のやり方だけでも十分効果があります。上級を行って欲しい方は、顎の脱臼を経験している方です。一度外れてしまうと癖になりやすいのが顎の関節です。
初級がケア・予防だとしたら、上級はリハビリだと思って下さい。
顎に違和感があったら、歯科医、整骨院へ
セルフチェックで問題があった場合、Ⅰ型の噛むと顎が痛い、こめかみの方まで違和感がある場合は噛み合わせや歯列矯正に詳しい歯科院への来院をお薦め致します。
Ⅱ型は骨盤など矯正をメインにしている整骨院へご相談して頂けると良いと思います。
Ⅲ、Ⅳ型の方は、まずは歯科院へ相談し、併せて矯正の出来る整骨院も選択すると良いと思います。