遺産相続を放棄するとどうなる? 相続放棄のまとめ
遺産相続はテレビドラマや推理小説でなくても、家族・親族内での揉め事の原因になるものです。
お金があればあったで「私の取り分が無い」「お前が貰うのはおかしい」と揉めて、お金がなければなかったで「もっとあるはず」「隠しているんじゃないか」と揉める。
最悪なのは「借金などのマイナスの遺産がプラスの遺産より多かった」場合。遺産相続では故人が遺した財産はプラス・マイナス関係なく相続人に引き継がれるので、「相続しなければ良かった」と後悔する相続者も少なくないもの。
もしもの時、万が一のために遺産相続を行なわない相続放棄について纏めてみました。
相続放棄とは?
相続放棄とは、故人の配偶者・子供・兄弟に発生する遺産の相続権を持つ人(法定相続人)が「遺産を貰わない」ことを公的に表明し、相続権を自ら捨てるという選択のことです。
相続放棄を行なった人は、最初から遺産の相続権が無かったものと見做されます。また相続放棄者の子供・孫も、相続放棄した遺産に対する相続権は発生しなくなります。
また、「プラスの財産を相続してマイナスの財産だけを相続放棄」というような都合の良い相続も出来ません。
相続放棄のメリットとは?
相続放棄を「せっかく大金を貰えるチャンスなのに自分から捨てるなんて馬鹿なことを」と考える人も少なくないでしょうが、実際にはメリットも存在しています。
遺産相続によって法定相続人が相続することになる遺産は故人名義の現金預金・有価証券・不動産・投資信託などのプラスの財産と、借金や住宅ローン・売り掛けの未払い金・損害賠償責任・税金などのマイナスの財産の両方となります。
プラスの財産総額がマイナスの財産総額以上であれば相続放棄するのは愚かしいといえますが、マイナスの財産総額がプラスの財産総額以上である場合は逆に相続放棄したほうが賢いといえます。
また、家族が住んでいる実家の土地・建物だけが遺産というケースの場合は、相続人を一人に絞る為に相続放棄を行なうことがあります。
もう一つの選択肢・限定承認
相続放棄は、正確に言えば遺産相続の際に法定相続人が選べる三つの選択肢の一つです。
三つの選択肢には、相続権を行使して故人の遺したプラス・マイナス両方の財産を相続する「単純承認」、そしてプラスの財産でマイナスの財産を弁済して、残った分を分割相続する「限定承認」があります。
限定承認は、マイナスの財産を清算するので相続人全員が故人の借金を背負う必要が無くなり、なおかつ財産の相続ができますが、相続人全員が限定承認を了承しなければ行使することができないこと、プラスの財産が残らないこともあるというデメリットがあります。
また、遺産相続が発生したと見做される被相続人が亡くなってから三ヶ月以内に相続放棄するか、限定承認を行なうかを選ばなければ自動的に単純承認を選択したことになります。
相続放棄の手続き方法は?
相続放棄を行なう場合は、住んでいる地域を管轄する家庭裁判所に相続放棄の手続きを申し出る必要があります。
相続放棄の手続きで必要になるのは「相続放棄申述書」「被相続人(故人)の戸籍謄本・住民登録の除票」「相続放棄する相続人の戸籍謄本」「申述書に貼り付ける800円分の収入印紙」「郵送用の郵便切手」です。
相続放棄申述書は決まった書式があるので、家庭裁判所のホームページからダウンロードして印刷するか家庭裁判所から印刷済みのものを貰ってきましょう。
郵便切手は裁判所からの通知の郵送に使うもので、裁判所のある地方によって必要な額面が異なるので注意が必要です。
また、場合によっては戸籍謄本・住民票などの必要書類の追加提出を求められることがあるので行政書士・司法書士に代行を頼むというのも一つの手です。