各方面で引っ張りだこの翻訳家になるためには?
言語は意志疎通だけでなく文化を支える上でも非常に重要な役割を果たすものです。映画や音楽、本などは作られた国だけで広まるものではなく、言語の違う国でも広まっていくものです。
その為には、文化が作られた国の言語からそれぞれの国の言語に合わせて内容を翻訳しなければなりません。翻訳を業務として行う翻訳家はさまざまな国との文化の懸け橋になる存在と言っても過言ではないのです。
では、翻訳家として活動するためには英語の実力だけでなくどのような資格が必要なのでしょうか。
翻訳家になるための資格「ほんやく検定」「翻訳技能認定試験」
翻訳家として活動するためには、一般社団法人日本翻訳連盟が実施する「JTFほんやく検定」もしくは社団法人日本翻訳協会が実施している「翻訳技能認定試験」を受けなければなりません。
日本翻訳連盟は業界団体で、日本翻訳教会は厚生労働省所管の公益法人となっています。
ほんやく検定・翻訳技能認定試験ともに5級から1級までの五段階のレベル分けがされています。
ほんやく検定・翻訳技能認定試験の目的とは?
ほんやく検定・翻訳技能認定試験とも目的は「翻訳業務に携わるにふさわしいだけの英語力・翻訳センスがあるか」を判定することにあります。翻訳家にはただ英文を直訳するのではなく、物語やリズムなどを再現して邦訳する事が求められます。
翻訳は試験問題のように直訳すればいいというわけではなく、字幕や小説の文章にふさわしいように省略したり口語にしたりするといった工夫をしなければなりません。このような工夫は時間を掛ければ誰にでも出来るかもしれませんが、翻訳家は訳する段階で自然に行えなければなりません。そういったセンスの有無を試すこともほんやく検定や翻訳技能認定試験の目的なのです。
機械翻訳では出せないニュアンスが翻訳家の持ち味
率直に言えば、文章を翻訳するだけならば今は人間がやらなくても機械任せに出来るだけの技術があります。しかし、機械の行う翻訳は無味乾燥というか四角四面に直訳するので、逆に読みにくくなってしまうものです。時には辞書登録されていない単語を訳さないままに記述したり、無理やり訳して意味を壊してしまったりすることさえあります。
それに対して人間の行う翻訳は、「読みやすさ」という定義が難しい感覚的なものが加味されるため、独特の柔らかさが出てきます。機械ほど翻訳に掛かる時間は早くないものの、翻訳の正確さや文章表現などは機械よりも優れているのです。
インターネットを利用した検定
ほんやく検定・翻訳技能認定試験ともに、試験はインターネットでのオンライン試験という形式をとっています。他の資格試験のように会場に集まって行うのではなく、受験者が各自の自宅や外出先で試験用のホームページにアクセスして受験を行うという形を取っています。その代り開催日時は定められているので、公平性は非常に高くなっています。
在宅でのオンライン試験という形を取る為、受験者は辞書だけでなくネット上の翻訳支援ツールや検索などを利用する事が可能です。これはノートの持ち込み可の試験をもう少しスケールアップしたものと言え、暗記内容や理解力よりもセンスある翻訳が出来るかどうかが試されるのです。
検定に合格するとどうなる?
ほんやく検定・翻訳技能認定試験に合格して資格取得してもすぐに翻訳家になれるというわけではありません。どちらも1級を取得して初めて「翻訳の専門職」と見做されるのです。
1級を取得した人は試験の主催団体から翻訳家としてのお墨付きを貰うのと同時に、翻訳業務のあっせんを受けられるようになります。
翻訳の仕事というものは、私たちが思っている以上に大変な意味を持っています。例えば全世界で人気の小説があったとして、その翻訳が適当なものであると物語としての体裁が破たんしてしまいます。映画の字幕では字数制限があるので上手く要約する事が重要ですが、文字数を削る為にストーリーとは違う訳を作ってしまうのでは本末転倒です。
このように、翻訳家という存在は原作者の分身として物語を壊さないようにする努力を欠かさない事が重要なのです。