塩
その昔、海水浴はレジャーではなく医療として行われていた事をご存知ですか?
現在でも、この考えは『海洋療法(タラソテラピー)』として研究されています。
高血圧の原因とされ、減塩に努める人は多いと思いますが、健康の維持というより『生命活動』に塩の存在は欠かせません。
特に、汗と共に大量の塩分とミネラルを流す夏場には、熱中症を予防する為に塩入の飲料水を飲むことが推奨されているのはよく知られています。
体内の塩分が不足すると、「めまい」「ふらつき」「食欲減退」といった症状が起こります。
そこをさらに超えていくと「筋肉のけいれん」が起き、最終的には「意識障害」を起こすことになります。
過剰なまでの減塩は、塩分を取り過ぎるのと同じくらい危険な行為なのです。
胡椒(こしょう)
今では100円均一でも買える胡椒ですが、かつては同じ重さの金と取引される程、貴重なものでした。
胡椒が肉料理に使用されるのは、その風味で肉の臭みを消すとともに、防腐効果がある為です。
薬としての胡椒の歴史は古く、古代ギリシャにおいて「医学の父」と呼ばれたヒポクラテスも、婦人病に効果があるとして胡椒を紹介しています。
また日本においては、奈良の正倉院に収められている薬のリスト『種々薬帳』の中にも胡椒の記述がみられることから、天平勝宝8年(西暦756年)の頃には、すでに日本に薬として伝わっていたと考えられます。
ちなみにこの中には「塩」も『石塩』という名前で登録されています。
漢方として胡椒を用いる場合、胃や大腸に効果があるとされ、効能としては「腹痛」「下痢」「嘔吐」「冷え」に効くと言われています。
大根
春の七草の1つ『蘿蔔(すずしろ)』として知られるのが大根。
もともと縁起物として以上に、正月で疲れた体を休める為に食べられていたのが春の七草ですので、そこに使用される食材は体に良い物ばかりです。
大根には、アミラーゼ(ジアスターゼ)と呼ばれる消化酵素が含まれており、でんぷんなどの炭水化物を分解する作用があります。胃腸薬にもよく含まれている事からも、その効果は折り紙つきを言えるでしょう。
大根には消化を良くし「消化不良」や「食欲不振」の改善。肺の熱を取る事で「咳や痰」を抑え、「喉の痛み」や「声枯れ」にも効果があるとれています。
里芋
ぬめりが特徴の里芋。
このぬめり成分にはルチンという酵素が含まれ、体内に取り込まれると肝臓の解毒作用を高める働きをします。
されにイモ類の中では低カロリーなうえ、脂肪を燃焼させるビタミンB1を含み、消化吸収も良い。しかも、食物繊維が豊富で便通も良くなると、良い事尽くめの食材。
漢方として用いる場合でも、消化器系の改善に効果があるとされています。
紫蘇(しそ)
「死者がよみがえる」という意味の『蘇』という字があてられるほど、古くから薬効が認められていた紫蘇。
料理の付け合せ程度にしか思われていないかもしれませんが、日本に自生し、縄文時代の遺跡から紫蘇の種が見つかり、平安時代には栽培が始まっていたと言われています。
漢方で使用する場合は、「血行促進」「解熱」「鎮静」「鎮痛」「解毒」「食欲増進」「胃弱」。
他には「花粉症などのアレルギー」「抗酸化作用」「がん予防」「咳止め」「痰きり」「切り傷」などなど。
その効能は、非常に幅広いようです。
レモン
西洋の薬用植物誌として最古と考えられている、テオプラストスの『植物誌』の中で生薬として紹介されているレモン。
大航海時代に航海士の命を奪い続けた壊血病を予防するとして、レモンは欠かせない物でした。
特にハワイを発見したキャプテンクックが、人類史上初となる『壊血病による死者0人』で世界周航を成し遂げた陰には、レモンなどに含まれるビタミンCの効果があったと言われています。
他にもレモンの酸っぱさの元になっているクエン酸には、疲労回復効果がある事はよく知られています。
他にもまだまだある、薬になる食材
- チョコレート – 古代メキシコ・アステカ
- ワイン – 古代エジプト
- 酢 – 古代ギリシャ・中国
- アボガド – 古代メキシコ・マヤ・アステカ・インカ
- 長いも – 中国(漢方における「山薬」)
- オリーブオイル – 古代ヨーロッパ
- カタツムリ – 日本
- イラブ― – 琉球王国 などなど。
数え上げるときりがないほどに、薬として使われてきた歴史を持つ食材は多くあります。
しかし、これらの食材は、栄養価が高く健康に影響するかもしれませんが、その『薬効』を保証する物でも、この食べ物を食べていれば病気が治る事を保証する物でもありません。
『健康に良いから』と何か1つの食材にこだわるよりも、本当に健康の事を考えるなら、これら栄養価の高い食材を取り入れつつ、バランスの良い食事を心掛けたいものです。