自転車が加害者の交通事故は車と同じ位に危険!
自転車は、道路交通法では「軽車両」というカテゴリーに入っています。軽車両は免許を必要としないエンジンなしの乗り物のことで、自転車やリヤカー、馬車・牛車などが含まれます。
しかし、軽車両の運転には免許は要らなくても自動車と同じ運転法規を守る義務があります。運転法規を守らない自転車はどのような結果を招くのでしょうか。
自転車による対人事故の中身
最近問題になっているのは自転車対人の交通事故です。スピードを出した自転車と歩行者または自転車が激突した結果、ぶつけられた自転車の乗員や歩行者が大怪我を、最悪の場合死亡してしまうという事故が増加しているのです。 また、自転車の無謀運転によって自動車の事故を誘発してしまったケースさえあります。
ケース1
女子高校生が帰宅途中、携帯電話を操作しながら無灯火で自転車を走行させ、看護師の女性に衝突。 女性は手足がしびれ歩行が困難になるなどの重大な後遺障害が残り失職。
ケース2
男子高校生が自転車で帰宅中、「(ダイナモ式ライトを付けると)ペダルが重くなるから」と無灯火のまま約時速30kmの速度で走行し、65歳の女性と衝突。女性は翌日死亡。
ケース3
横断禁止の道路を自転車で横切った60歳男性を避けようとワゴン車・タンクローリーが急ハンドルを切り、歩道に乗り上げたタンクローリーが歩行者2名を轢く。過失は自転車男性にあるとして禁固2年の実刑判決が下る。
速度が出れば自転車でも充分危険!
自転車は歩行者に近い扱いを受けているものの、生身で走るよりもずっとスピードが出るものです。競技用ではない、いわゆるママチャリでも立ち漕ぎすれば50ccバイクと同程度の時速30kmは出せますし、競技用のロードレーサーならば時速50kmは楽に出せます。
物体が衝突した時の威力は物体の質量×速度の2乗で求められるので、スピードを出せば出すほど自転車は凶器へと変化します。また、ぶつかった拍子で頭を強く打ってしまったらスピードには関係なく被害者の命が危ぶまれる事態に発展する可能性もあるのです。
自転車には行政処分が無い!
自動車事故の場合、「青切符」と呼ばれる免許の点数と反則金を納める行政処分の通知を経て、「赤切符」と呼ばれる刑事処分の通知が渡されることになります。
自転車の場合、免許が無いので青切符を飛ばして一気に赤切符が渡されることになります。つまり、自転車で事故の加害者になると一発で前科持ちになってしまうというわけです。 自転車で人身事故を起こした場合、「重過失致死傷罪」という罪名がつきます。これは自動車事故での「業務上過失致死傷罪」と中身は同じもので、刑罰も同じく懲役もしくは禁固五年以下、または100万円以下の罰金となります。
多額の損害賠償を求められる!
自転車が加害者になった交通事故で被害者が死亡もしくは障害が残った場合、損害賠償を被害者側から求められることがあります。
自転車事故の損害賠償請求額は自動車事故と同じかそれ以上の高額請求となることがほとんどです。前述のケース1の場合、女子高生は5000万円という多額の賠償金が請求されています。
また自転車対人の場合、「自転車の運転手が減速として事故の責任を負うべき」という判例が出ており、過失相殺による賠償金額の減額はほとんど期待できないものと考えるべきでしょう。
保険に責任賠償補償が付いていないことも
万が一に備えて保険に入っておくことは重要です。しかし、自転車用の保険の多くは自分対象の傷害保険で対物・対人の責任賠償補償は後付けオプションになっていることがほとんどです。 「保険に入っているから大丈夫」と過信して事故を起こしてしまった後で、傷害保険だけしか付いてなかった…ということになってしまったら元も子もないのです。