食べ物関係は本当に強い?飲食業の開業について
「人はパンのみにて生きるにあらず」という言葉がありますが、「衣食足りて礼節を知る」というようにお腹いっぱいでなければありがたい言葉も耳に届かないもの。
食欲を満たしてくれる飲食業は、不況にも強く地元に根付けば20年30年でも続けていける、手堅い商売のイメージが強くサラリーマンからの独立や定年退職後の第二の人生として開業する人が多いものです。
しかし、飲食業ほど競争が激しく開業と閉業が繰り返される業種はないと言い切ってしまっていいでしょう。安易な気持ちで飲食業を初めて、老後の蓄えや人生設計を吹き飛ばしてしまう人も少なくないのです。
飲食業の廃業率は高い!
飲食業は食欲に根差した商売だから当たれば手堅いことは間違いないのですが、新規開業して3年以内の店の7割は廃業することになるといわれているほど激しい競争が繰り広げられています。
実際、行列の出来るラーメン屋で修業してのれん分けされたという店でも、若者に人気のあるフランチャイズチェーン店でも、閉店してしまうケースは珍しくありません。
なぜこれほどまでに飲食業は流行り廃れが激しいのでしょうか?
客は不味い店には二度と行かない
飲食業の価値を決めるのは、何と言っても提供する料理の味です。
要するに、「これで金をとるのか!」と客が感じるような不味い料理を出す店は早々にそっぽを向かれ、周辺住民もリピーター化せず廃業へ一直線に進むことになるのです。
逆に期待通りに美味しい、期待していなかったけど美味しい店はじわじわとリピーターを増やし経営が軌道に乗って、長続きしやすくなります。
接客態度が悪い店は嫌われる
飲食業はサービス業である以上、一定水準の心づくしがないとリピーターが居付かないものです。
挨拶や店内の雰囲気、店員の態度などは厳しくチェックされていて何か一つでも水準以下であればそうそうに店に見切りをつけてしまいます。
どんなに美味しい料理を出す店でも、店員の態度が悪かったり店主が客の前で店員を罵倒していたりすればせっかくの美味しい料理も台無しです。
また、店についたリピーターを大切にしようとすることは良いことといえますが、大抵の店は一見の客をほったらかしにしてリピーターのご機嫌取りに終始するため、客層がリピーターだけしか残らない上に、リピーターのご機嫌取りで赤字を膨らませて閉店したという話も結構多いものです。
料理のクオリティが落ちればリピーターも離れる
料理が美味しくて、心温まるサービスが自慢で毎日繁盛していた店であっても、リピーターが離れてしまい閉店してしまうことは珍しくないものです。
このように繁盛店の客足が急速に衰えてしまう場合、料理のクオリティが下がっていることが理由の一つになっています。
美味しい料理の条件には「手間をかけて美味しさを引き出す調理法」と、「素材の良さ」が挙げられます。店が繁盛しだすと、手間を省いてより多くの客に対応しようとしたり、素材の品質を下げて利益率を上げようとしたりする店主は意外に多いもの。
そして贔屓にしていた店が「目に見えて味が落ちた」「レトルト食品を温めただけの料理になった」となれば、これ以上贔屓する理由がないのでリピーターが離れていくというわけです。
趣味の延長上で始めた店は大概コケる
定年退職後に、退職金を原資にして夢だった店を開業する男性は意外と少なくないものです。
特に、料理自慢の人が退職後に飲食店を始めることは良くある話で、そば打ちが趣味のお父さんがそば屋を始めたり、コーヒー通の上司が喫茶店を始めたりするわけです。
ですが、このように趣味の延長線上にある飲食店というのは大概の場合、何年も持ちません。
なぜかというと「趣味の延長線上にあるから経営に対して真剣味がない」「こだわりが過ぎて採算度外視になりがち」「最初の頃は退職前の人脈がご祝儀代わりに来店するけれどもリピーターにはならない」というように、「お店を経営する」ことへの真摯な姿勢を作れない上に、ご祝儀代わりの来店でプチ繁盛するものだから繁盛店の店主気取りになって失敗してしまうのです。
飲食業は誰でも始められて誰もが失敗する
飲食業は不況にも強く、軌道に乗ればチェーン展開・フランチャイズ化で年商数十億円も夢ではない業種です。しかし、廃業率が高いことからもわかるように軌道に乗れなかった店は多くの負債を抱えてしまうことになります。
飲食業は保健所などの許可さえ取れれば誰でもが始められる敷居の低い業種といえますが、その分だけ誰もが失敗・閉店になる可能性が高い世界なのです。
飲食業で成功するためには、料理の美味しさ・接客サービスの質・店の雰囲気・経営状況すべてに気を配らなければならないのです。