税率が高い日本の相続税と贈与税
日本の税制における相続税・贈与税は累進課税という制度で、課税対象となる財産の価値が高ければ高いほど税率が高くなります。 そのため所有財産の多い資産家は財産を守るために税金の少ない国や地域に財産を移すことで節税するということが大昔から行われてきました。
相続税 | 贈与税 | ||
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相続財産 | 税率 | 贈与財産 | 税率 |
1千万円以下 | 10% | 200万円以下 | 10% |
3千万円以下 | 15% | 300万円以下 | 15% |
5千万円以下 | 20% | 400万円以下 | 20% |
1億円以下 | 30% | 600万円以下 | 30% |
3億円以下 | 40% | 1千万円以下 | 40% |
3億円超 | 50% | 1千万円超 | 50% |
税金の少ない、もしくは税金がない国や地域のことをタックスヘイブン(租税回避地)やオフショアと呼び、今や世界中のあらゆるお金がそういった地域を経由しているといわれています。
税金の高い国の企業がそうしたタックスヘイブンに法人を設置し、法人税が取られないように自国から資金を移動するということがよく行われていますが、法人だけでなく自然人(個人)でもその手法は使われています。
すなわち、「相続税・贈与税の低い国に移住することで日本の高い相続税から逃れる」という作戦です。
しかし日本もこれをみすみす見逃すということはせず、相続税法を強化することで海外に移住した日本人にも「一定の条件を満たしていれば日本の相続税の納税義務を負う」と規定しています。
相続税法で定められた納税義務者の条件
法律改正前は日本から離れた者の海外相続に相続税は適用されていませんでしたが、今では納税義務者が海外在住の日本人にも拡大されたため、海外移住での相続税回避は非常に難しくなりました。
日本の相続税を納めなければならない「納税義務者」
以下の条件にひとつでも当てはまると日本の相続税を納める義務があります
相続時に日本国籍を有している
相続時の国籍が日本国籍の場合は、海外に住所があっても日本の納税義務者となります。
被相続人が死亡した日までの5年間で日本に住んだことがある
海外在住と認めてもらうためには5年間海外に住所を置く必要があります。この「住所」というのは住民票などの書類上の場所ではなく、実際の生活の場としての「住所」が問われます。したがって、「海外に住居を用意していても実際は日本で生活している」という場合には住所が日本であるとされ、日本の納税義務者となります。
相続財産が日本国内にある
海外国籍を取得して海外に5年間住んでいたとしても、相続財産が日本国内にある場合も日本の納税義務があります。
日本の相続税を納めなくていい場合とは?
以下の全ての条件を満たす必要があります。
- 国籍が海外にある
- 5年以上海外に住んでいる(その間、日本に一度も住所を有しない)
- 相続財産が国外にある
ということで、非常に厳しい条件といえますね。 相続税法では相続税と贈与税が規定されており、贈与税も相続税と同じ条件が設定されているため、生前贈与で回避することもできません。
相続税節税で海外に逃げるのは現実的じゃない
日本の高い相続税や贈与税を回避するためにはこのようにいくつかの厳しい条件全てを満たさなければならない「イバラの道」となっています。
日本のおいしい料理や美しい景色、心地よい温泉や四季折々の楽しい行事、これらを最低でも5年間は捨てなければいけないというのは、お金には変えられない価値あるものを捨ててしまうことなのかもしれません。
相続税を節税するための海外移住は「海外移住が夢だった」という人以外にはおすすめできない難しい手段といえるでしょう。