『林修の今でしょ!講座』で『名医がやってる風邪の治し方講座』という特集を見ました。番組で紹介された療法はどれも「今度試してみよう!」と思わせられるものでした。ただ、テレビ番組で紹介される健康法をうのみにするわけにいかないことも事実です。
過去に「放送するネタがなくなった」「視聴率を稼ぐためにインパクトのある内容が必要だった」など、さまざまな理由で、信ぴょう性の薄い放送をしてしまったケースもありました。その放送を見た数週間後、私自分が風邪をひいてしまいました。おおっ、なんとタイムリー!せっかくの機会ですから、番組で覚えたばかりの療法を自分で試してみることにしました。では、番組で紹介された方法のうち、私が試したものとその結果をご報告します!
温めたスポーツドリンクを飲む
スポーツドリンクは、人間の体に必要な成分で構成されています。疲れているとき・弱っているときの栄養補給を効率よく行える、優秀なドリンクです。なかでも「ポカリスエット」は「飲む点滴」と呼ばれているのだとか。
「病院で点滴をうってもらうこと」と「ポカリスエットを飲むこと」は、ほぼ同等の効果が得られるらしいです。
この、ポカリスエットを温めて飲むのが風邪には良いのだとか。温める方法は、マグカップに注いで電子レンジでチンするだけ。試してみた
もうろうとしながらも、ドラッグストアへ買い出しに出ると、ポカリスエットは500mlのサイズしか売っていないじゃないですか。さすがにこれ1本飲んですぐ治るなんて妄信はしていません。風邪が治るまでの間、数回は続けるつもりでした。最低でも2リットルサイズが欲しかった・・・!
しかし、さらに足を伸ばしてコンビニエンスストアまで行く元気は、もうありません。家族に「大きいポカリ買ってきて」とメールを入れて、とりあえずの500mlを2本購入。
ところが「アクエリアスのほうが安かった」と言われ、頼んだ立場で文句も言えずアクエリアスで続きを試すことに。1日2回、朝起きたときと夜寝る前に飲みました。
私が実践したときには、だいたい1分半~2分程度で温まりました。マグカップの大きさによって、温まり方にバラつきが出てしまいますね。電子レンジの機種によっても変わると思います。ポカリスエットを温めるときには決まったカップを使うと丁度良い時間を把握しやすいでしょう。
結果
最初に購入したポカリスエット500mlサイズを2本と、アクエリアスの2リットルサイズを1本、すべて飲みきりました。結果、風邪は治りませんでした・・・。ただ私の頭には「スポーツドリンクのなかでも、特にポカリスエットが優秀」という情報がありました。そのせいで、プラシーボ効果が悪い方向に働いてしまったのかもしれません。
また、後日調べてみたところ「直接血管から入れる場合」と「飲んで胃腸から体内へ吸収させる場合」では、効果が出るまでの時間に差があるようです。「飲む点滴」とはいえ、さすがに本物の即効性にはかなわないんですね。
お風呂で温まる
特に風邪のひきはじめの時期には、やはり体を温めるのが基本なのだそうです。ということで、オーソドックスに「お風呂で温まる」という方法も紹介されました。風邪をひいたときに体温が上がるのは、熱でウィルスを退治するため。ですから、お風呂で体を温めることは、風邪のウィルスをやっつける抵抗力を後押ししてくれるのだそうです。試してみた
子供の頃は、風邪をひいたときにあまりお風呂に入らなかったような気がします。それは、湯冷めのリスクを回避するためだったのでしょう。大人になった現在では、自分で湯冷めに気をつけることができます。風邪をひいている間も、普通にお風呂に入っていました。
ただ、特に「風邪攻略法」と意識して試したわけではありませんが。そして、お風呂あがりの水分補給は、もちろん上記の温めたスポーツドリンクです。
結果
お風呂が特別風邪の症状に大きな変化をもたらすことはありませんでした。特にとても良い効果が出たということもなく。しかし、お風呂に入ったせいで悪化したということもなく。
「お風呂で風邪予防」は他の番組でも紹介されました
『たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学』『あさイチ』といった番組では「ドライノーズ」という症状が紹介されたことがあります。「ドライノーズ」とは、鼻の内側の粘膜が乾燥してしまう症状です。これも風邪の原因になるのだとか。
そのため、ドライノーズの対策が風邪予防につながるのだそうです。番組で放送されたドライノーズ対策のひとつには「お風呂に入る」というものがありました。『林修の今でしょ!講座』では、お風呂に入るという行為には、体を温める効果を期待していました。
しかし、『たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学』『あさイチ』で紹介されたドライノーズ対策では、蒸気を鼻から吸い込むことに注目しています。ただし、ドライノーズ対策はあくまで風邪をひく前の予防策です。
風邪をひいてからはむしろ、鼻水でいつもぐちゃぐちゃなので「ドライ」どころではありませんよね。
「風邪をひく前」も「風邪をひいてしまったあと」も、シャワーだけで済ませずにきちんと湯船に浸かることが大切です。
良く噛んでおかゆを食べる
風邪をひいたときには、胃腸も弱っています。食欲がなくなることもあります。でも、食事をしっかりととらなければ体力は落ちる一方。だから、風邪のときの食事にはおかゆが最適ですよね。このおかゆを、さらに「良く噛んで食べる」という方法が紹介されました。
番組を見ていて「胃腸が弱っているから消化の良いおかゆをチョイスしているのに『良くかむ』とは・・・?」と、疑問に思いました。しかし、風邪をひいているときは、私たちが予想しているよりもずっと胃腸の弱り方は激しいのだそうです。
おかゆは、あまりかまなくても飲み込みやすい形状ですよね。そのため、ついつい、良く噛まずに流し込んでしまいがち。逆にそれが、弱った胃腸に負担をかけてしまうのだとか。
なお、おかゆにはさまざまなトッピングが考えられますね。そのうち、番組で紹介されたオススメのトッピングは以下の3つです。
・しょうが・にんにく
・ねぎ
これらの具材には、体を内側から温める効果があるとしてオススメされました。
試してみた
「消化活動に体のリソースをとられてしまって、風邪を治そうとする治癒力にまわせなくなるということか」番組の説明を最後まで見て、納得しました。おかゆであっても、しっかりと噛んで食べることが大切!風邪をひいている間は、ずっと食事はおかゆ。食欲がないし、味も感じないので、おかずも食べずにただただ、おかゆをかみ続けました。
しかし、はたと思い返すと、数日間おかゆ、つまり米しか摂取していません。オススメのトッピングを使っていなかったのです。さすがにまずいと思い、3日目あたりからしょうが入りの玉子がゆに切り替えました。
最初、しょうがを使うのはあまり気が進みませんでした。「でも、名医がオススメするのだから」とシブシブ取り入れたカタチです。その理由は、以前テレビで見たクイズでのワンシーン。番組名は失念してしまいましたが・・・。
「次のうち、最も体を温める食べ物は何でしょう?」という問題です。選択肢にしょうががありました。
他にも、選択肢には唐辛子などがあったように記憶しています。どれも、古くから「体を温める食べ物」として知られているものでした。しかし、正解はしょうがでも唐辛子でもなかったのです。
なんと、これらの食材は、発汗作用があるため、逆に体を冷やす危険性があるのだとか。ただ、このクイズ番組の前提は「冬の寒い時期の温まり方」でした。風邪の体を温めるケースとは違いますよね。結局「聞きかじりの知識で素人判断をしても仕方がない! 名医に従おう!」と思い直したのです。
結果
しょうがトッピング入りのおかゆに切り替えてからも、1週間ほど風邪は続きました。クイズ番組の記憶が、悪い方向へのプラシーボ効果を発揮してしまったのかもしれません。
緑茶でうがいをする
緑茶を使ったうがいが風邪を治すと紹介されました。「うがい」という行為自体が、風邪の予防には効果的なことはわかります。でも「予防には役立つが、風邪をひいた後にうがいをしても手遅れなのでは?」と思いますよね。私も思いました。
しかし、緑茶に含まれる「カテキン」という成分には殺菌作用があります。これが風邪をひいている喉に効くそうです。さらに、番組では、温かいお茶でうがいをすることがオススメされました。
試してみた
以前からうがいの習慣はあったのですが、冷たい水道水を使っていました。風邪のときにはどの部位であろうと「冷え」は厳禁。まして、風邪のウィルスの侵入経路である喉を冷やしてはいけなかったのですね。
風邪をひいてしまった後にはもう、茶葉からお茶を入れる元気がありません。そこで、ペットボトルのお茶を使いました。私が選んだのは、高濃度茶カテキン「ヘルシア緑茶」です。前述のスポーツドリンクと同様に、マグカップに注いでから電子レンジで温めて使いました。
結果
うがいを試した後は、喉の痛みや違和感は和らいだように感じました。しかし、このように効果を体感できた「緑茶うがい」でも、風邪自体を劇的に軽減するには至らなかったのです。「ヘルシア緑茶に本当にカテキンは含まれているの?」という疑いを持ってはいなかったので、悪い方向へのプラシーボ効果はなかったはずですが・・・。
後日調べて知った、カテキンの意外な落とし穴
番組を見ていて「カテキンってすごい!」と思った私。さらにカテキンについて調べてみました。
すると、意外な噂を耳にしました。カテキンには肝臓障害を引き起こす可能性があるそうです。カナダでは、医薬品として販売されていたカテキン製品を販売停止するという事例がありました。
現在日本では、そのリスクはあまり注目されていません。茶カテキンを多く含む緑茶は日本でよく飲まれているイメージがありますが・・・。カテキンに潜む肝臓障害リスクは、過剰摂取によるものです。危険なのは成分濃度を高めたサプリメントなどの製品。
通常の緑茶を飲用することを過敏に考える必要はありません。でも「ヘルシア緑茶」は、カテキンを高濃度に圧縮した製品です。そのため、ヘルシア緑茶の摂取を長期継続することは危険であるとの説も浮上しているようです。
今回、知らずにヘルシア緑茶をうがいに使ってしまいました。うがいにより高濃度カテキンがどれだけ体内に侵入するかはわかりませんが・・・。
「名医が紹介したお茶うがい法を試してみたい」という方は、通常の茶葉で入れたお茶を使うことをオススメします。
しっかり手洗い
うがい・手洗いは、古くから伝わる風邪予防の基本。それはわかるのですが、番組を見ていて「風邪をひいた後まで予防?」とちょっと思いました。手洗いを推奨していた医師によると「体内でウィルスを退治しようとがんばっているときに、外からさらに侵入させてはいけない」とのこと。
また、雑菌を徹底的に退治する手洗い法が紹介されました。指の関節にはしわがありますよね。指を曲げてこの間接のしわを伸ばし、しわの奥までしっかりと洗うことが大切なのだそうです。
試してみた
風邪を治すために改めて生活に手洗いを取り入れた、というわけではありません。もともと、普段から手洗いはしていました。でも、番組で紹介された「正しい手洗い」は意識するようになりました。
結果
正しい手の洗い方は身につきましたが、特に風邪が良くなる効果は感じられませんでした。良く考えたら「風邪を治す」というより「風邪を悪化させない」方法ですからね・・・。ただ、風邪が治るまでには1週間以上かかりましたが、途中症状が悪化するようなことはありませんでした。ひょっとすると、多少は効果があったのかも!?
寝る姿勢を工夫する
風邪をひいたときには、しっかりと睡眠をとり、体力の回復につとめるべき。しかし、風邪の症状が睡眠を妨げることがありますよね。そこで、番組では、風邪のときにオススメの姿勢が紹介されました。眠れないほどの症状がある場合には、以下の姿勢で寝ましょう。鼻詰まりには枕を高く
「横になっているときに鼻詰まりがひどくて『鼻をかもう』と起き上がると、とたんに詰まっていた鼻がスーッと通った」という経験はありませんか?
鼻をなるべく縦に近い角度に保つことは鼻詰まりの軽減に役立ちます。鼻詰まりがひどくて眠れない場合には、枕を高く調節してみましょう。高さの調整には、枕の下に本を置くなどの方法があります。
せきには横向き
せきが止まらずに眠れない場合には、横向きに寝ることをオススメします。横向きの姿勢は、気道が広がって呼吸をしやすくなるのです。「気道確保」といえば、仰向けに寝てあごを上げる姿勢を真っ先に思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
しかし、風邪の症状には、せきの他に鼻詰まりがあります。上記のように、鼻詰まりには鼻の角度を縦に保つことが大切です。気道確保のためのあごを上げる姿勢、それとは逆の角度になってしまいます。ですから、風邪をひいているときの気道確保には、横向きの姿勢が推奨されるのです。
結果
鼻水がひどく、せきはあまり出ていませんでした。そこで私は、枕を高くすることを試しました。しかし「鼻が詰まっている」というよりは「寝ていても鼻水がタラリと来てしまいそう」。汚いお話ですが切実です。結局、鼻詰まりを解消するどころか、丸めたティシューを鼻に詰めて寝るハメになりました。
林先生にはぜひ次回、鼻水が垂れる場合の対処法を教えていただきたいものです。
玉子酒を飲む
「風邪には玉子酒が効く」とは有名なお話ですよね。オーソドックスなこの方法を紹介する医師もいました。玉子酒の効果は迷信などではなく、きちんと理由が裏付けされているのだそうです。本来、風邪をひいているときなど、体調不良時のアルコールは良くありません。
玉子酒は、調理の過程でアルコール分を完全に飛ばしてしまいます。アルコールの悪い効果を避け、良い効果だけを取ることができるのが玉子酒の利点なのだとか。玉子もとても栄養価の高い食品なので、相乗効果が期待できるようです。
試さなかった
私は普段からお酒を飲まないので、自宅に常備しているものがありません。さすがに煮物などに使うために買ってある料理酒は、飲用には向かないと思いますし・・・。自分用に玉子酒を作って、もし残してしまったら・・・。家族に後片付けを頼むわけにもいきません。
アルコール分をすべて飛ばしてしまうとはいえ、確実に飲みきれる自信がなかったので、この方法を試すことは諦めました。おかゆを作るときに玉子を追加したので「部分的に取り入れた」と言えるかも・・・?
風邪を治す薬はまだない?
さまざまな方法を平行して試した結果、風邪が治るまで1週間以上かかりました。「同時にいろいろ試していたら、結局どれが効いたのかは判断できなくなるなあ」と思っていたのですが・・・。1週間以上って、普通に何もせずに自然治癒にまかせても大して違いはなかったような気がする期間ですよね。
古来から受け継がれている風邪の予防法やひきはじめの対処法なども眉唾モノの情報が多いですよね。一体どれだけ効果があるのか、どこまでが迷信なのか・・・。制限時間のない伝言ゲームですから、古くから伝えられてきた方法のなかには、どこかで情報が捻じ曲がってしまった予防法もあったのかもしれません。
また、現在販売されている「風邪薬」とは、「風邪の症状を抑える薬」です。風邪によって引き起こされる症状には、頭痛・だるさ・せき・鼻水・鼻詰まり・高熱などがあります。これらを薬によって抑えることは可能です。しかし、いまだに「風邪を治す薬」は開発されていません。
さらに、同じ「風邪」と呼ばれていても、流行時期や患者によって、症状はさまざま。すべてを同じものと考えて良いのか疑問に思えるほどです。似た症状が多いから、便宜上、総合的に『風邪』と呼んでいるだけなのかもしれません。風邪とはそれほど複雑なもの。対処法の効果の大小もさまざま、個人差があるはずです。
あくまでも、筆者の今年の風邪で試した結果のご報告です。テレビで放送されていた内容を否定する意図はございませんので、あしからず・・・。