管理栄養士さんは「最も問題となる点」を見いだしてくれる
入院・手術を経験してから2年目の春に、健康診断を受けました。手術は既に成功していますし普段は健康そのもの。でも、自覚症状のないまま進行する病気は怖いですよね。
私の診断結果は、メタボリックシンドローム判定で「予備群該当」とのこと。管理栄養士さんからの生活改善指導を受けることを勧められたので、早速行ってきました。筆者が受けた指導内容について、ご紹介します。
「甘いものや油っこいものを食べ過ぎると体に悪い」「自堕落な生活をしていたら健康を害する」頭では理解していても、なかなかスパッと改善できない、という方は案外多いのではないでしょうか?
そこで頼りになるのは、管理栄養士さん。例えばお菓子がやめられなければ「それ以外の部分」で改善計画を立てる手助けをしてくれます。
相談者ひとりひとりに生活や食事について話を聞き、無理なく続けられる範囲での改善計画を指導してくれます。「体に悪いことは全て排除」という極端な計画は長続きしません。
まずはカウンセリングを行い、相談者の生活のなかで「最も問題となる点」を見いだします。そして突出した問題だけでも改善できるよう導いたり、少ない労力で大きな成果を上げられる計画を立てたり、といった面で力になってくれるのです。
「できることだけをやって、ゆるくダイエット」などと簡単に感じるかもしれませんが、これは管理栄養士の知識があってこそ可能となります。
※今回ご紹介するのは、予備群である筆者へ向けたメタボ予防の指導です。本格的にメタボ予防が必要となる方や、食事の影響がそのまま命の危険に直結する糖尿病などの患者さんへの指導はまた別のお話になります。
相談窓口は病院や保健センターにある
相談窓口は内科のある病院・クリニックに多くあります。他にも、市町村保健センターで受け付けている場合があるので、役所に問い合わせてみると良いでしょう。また、公益社団法人「日本栄養士会」が運営する「栄養ケア・ステーション」でも栄養支援を受けることができます。
公益社団法人 日本栄養士会
http://dietitian.or.jp/caring/index.html
メタボ予防は生活全体を見つめ直すことから始まる
食事をとる時間や食事の内容だけではなく、起きる時間・寝る時間、運動をしているかについても聞かれました。「栄養士」とはいっても指導内容は「栄養」つまり食事に関することだけではありません。バランスの良いメタボ予防計画のためには生活全体を見渡す必要があるのです。
規則的な生活をしていれば夜型でもOK
私は夜型生活タイプなので、昼に起きて夜に仕事をしています。そのため、通常の朝型生活をする方でいえば「食事3食」といえば朝・昼・夕であるのに対して、私の食事3食は昼・夕・夜です。これを「規則正しくない生活」と思う方もいるかもしれません。しかし、管理栄養士さんにはあまり問題視はされませんでした。
一般的な生活リズムとはズレていても、「決まった時間に起きて決まった時間に寝る」という規則的な生活は評価されたようです。
職業によっては、仕事のシフトの都合上、不規則に日勤と夜勤をこなさねばならず、規則的な生活ができない方もいます。生活リズムに関してあまり大きな改善案を提示されなかったのは、そのためです。
40代以降は油分の控えすぎに注意
私はもともと、あまり揚げ物は好まず、肉よりも野菜中心の食事内容。それはとても良いことではありますが、少し注意点を告げられました。
「健康のために」「ダイエットのために」という理由で揚げ物を控えようとすることは、あまりオススメできないそうです。40代以降は、油ものを全く摂取しないとお肌がカサカサになってうるおいが失われるのだとか。
そして、管理栄養士さんに注目され問題視されたのが、夜食のパン。「食事」というよりも「間食」程度の量です。自分としては「ごはん・おみそ汁・おかずと三拍子そろったきちんとした食事をとるよりも軽めでいい」と思っていました。
しかし、炭水化物を摂取しているタイミングで野菜が一切とられていない、という部分が問題だったようです。
犬の散歩と家事レベルでは運動量が足りない
生活の流れを説明したところ、以下の行動について「軽い運動」という認識をしてもらえました。
・犬の散歩
・家事全般
現状を維持するなら、これだけでもいいのかもしれません。しかし「体重を減らしたい」と思うのであれば明らかに運動量は不足しています。
長期間、ムリなく継続できる目標を立てる
まずは心構えとして、以下の2点を指示されました。
・無理なくできる範囲の計画を立てること
・計画通りできない日があったとしても、気に病まないこと
たとえ「健康のためにやせる」という目的であっても、急激なダイエットはそれ自体が健康をそこなう恐れがあります。そのため、ダイエット計画は長いスパンで考える必要があるのです。また、ダイエット成功のヒケツは、継続すること。
長期計画であるほど、その期間中にはさまざまなイレギュラーが発生することでしょう。計画通りに進むことばかりではないのです。「予定していた行動ができなかった」としても即「失敗」と考える必要はありません。
また、人間の体はバイオリズムに波があり、順調に体重が減る期間があれば、なかなか減らずに停滞する期間もあります。「思うように成果が出ていない」からといって即「失敗」と考えることもまた間違いなのです。私の場合、1ヶ月にマイナス1kgのペースを目標と定めました。
毎日1回体重を計ること
指導された内容は以下の1点のみ。
・決まった時間に体重を計り、記録をすること
1ヶ月に1kgという長期計画となるのですから、日々の記録は1グラム単位で行いたいところです。となると「食事をした」「入浴をした」「トイレに行った」などのささいな行動でも簡単に体重は増減してしまいますよね。ですから、体重の推移を記録するためには、決まった時間に計る必要があるのです。
起きた直後がベストとのことでしたが、私はしばらく続けてみた結果、計り忘れてしまうことが多々あったので、寝る直前の計測に切り替えました。
炭水化物の前に野菜を食べる
指導されたのは以下の2点。
・夜食のパンを食べる前に野菜を食べる
・間食をとった場合、そのカロリーを調べる
炭水化物の前に野菜をとる
野菜を先に食べる目的は以下の2つです。
・野菜で空腹感を和らげ、パンを食べる量そのものを減らす
・パンを食べたときの血糖値の上昇を抑える
パン・麺類・ごはんなどに代表される、いわゆる「主食」となる炭水化物は、空腹時に摂取すると血糖値を大幅に上昇させます。しかし、この血糖値の上昇がダイエットの大敵だったのです。
体重、腹囲の変化を把握する
まず、体重もしくはへその高さで計った腹囲を基準とします。現在の体重・腹囲から、目標と定める体重・腹囲を引いて出た数字が、実際に減らしたい分量です。(例えば 現在60kg→ 目標体重55kg 現在の腹囲75cm→目標腹囲70センチなら、それぞれ、体重-5kg、腹囲-5cm となります)
次に、実施期間を定めます。私の場合は、半年後に管理栄養士さんから成果確認の連絡を受けることになっていたので、6カ月間。1カ月につき-1kg、腹囲は-1cmのペースで減らす計画を立てたので、6カ月では-6kg、-6cmということになります。ここから、1日あたりに減らすエネルギー量を算出します。
エネルギー量を減らす方法
エネルギーを減らすためには次の二通りがあります。
・摂取量を減らす食事法
・消費で減らす運動法
摂取量を減らすには、食べものについて、それぞれが何kcal(キロカロリー)かを知る必要があります。
そのため、管理栄養士さんから「食べたもののカロリー量をインターネットで検索して調べてみるように」と指導されました。オススメされたサイトは以下の2つです。
簡単!栄養andカロリー計算
http://www.eiyoukeisan.com/
お菓子のカロリー計算サイト★菓子男くんが行く!
http://www.kashiokun.net/
犬の散歩とは別に毎日30分以上歩く
私が普段の生活で行っている運動らしい運動といえば、犬の散歩のみです。管理栄養士さんには、ウォーキングであれば少なくとも1日30分は歩くように、と言われました。
そこで「犬の散歩を30分に延長してみてはどうか」と質問しましたが、答えはNG。私が散歩させている犬は、やや高齢の中型犬です。犬は歩けば歩くだけ喜ぶものと思っていましたが、そうではありません。犬も歩けば疲れます。人間のダイエットに犬をつき合わせてはいけないようです。
ちなみに、大型犬であれば1日に必要な散歩量も相当なものになるので、1日30分のウォーキング程度では、びくともしないのだとか。結局、私の運動目標は「犬の散歩とは別に30分以上のウォーキング」となりました。
流行したダイエット法は本当に正しかったの?
私が指導された内容には、過去に流行したダイエット法を思わせるものが多くありました。食事制限や適度な運動という正統派のダイエット以外の「流行のダイエット法」には、マスコミが流行させた間違った方法も含まれます。
専門知識を持たない素人にとっては、どれが正解でどれが間違いなのか、容易に判断できるものではありません。管理栄養士さんからの指導の話を聞くなかで「この方法はあのダイエット法に該当する」「ということはあのダイエット法は正解だったんだ」と思い当たることがありました。
食べる順番ダイエットは◎
私がオススメされた「パンの前に野菜」という方法は、「食べる順番ダイエット」と呼ばれています。サラダ→たんぱく質→炭水化物 という順番で食べるだけで、同じメニューでも太りにくさが変わってくるのです。
食べたいものをガマンする必要がないので、食いしん坊のダイエットにはピッタリ。また、極端な食事制限がないということは必要な栄養素を存分に摂取できるので、健康的にやせられるのです。
低インスリンダイエットは△
血糖値の上昇率が低い食品で空腹感を和らげてから炭水化物をとることで、血糖値の上昇を抑える「食べる順番ダイエット」に対して、血糖値の上昇率の低い食品のみを狙って食べる食生活に切り替える、という方法が「低インスリンダイエット」です。
高い効果が期待できますが、栄養の偏りが懸念されます。食事内容が炭水化物を避ける傾向になってしまうためです。管理栄養士さんが低インスリンダイエットをオススメしなかった理由は、ここにあるのでしょう。
レコーディングダイエットは○
食べたものとそのカロリーを詳細に記録していくだけ、という方法です。記録する行為自体には全くダイエット効果はありません。しかし、自分が食べたものを改めて振り返り、そのカロリー量を冷静に見つめることで、意識が変わってくるもの。
長く続けるうちに、毎回調べなくても、よく食べるもののカロリー量は記憶に残ります。食べるときにどれだけのカロリー量を摂取しているかが意識できるようになるのです。
自然と食べる量を減らす方向へ意識が向く・食べた分を運動で消費しようと考えるようになる、そんな効果が期待できるでしょう。
1カ月後、体脂肪率が減り不眠症も解消した!
相談から1ヶ月が経過しましたが、予定通りにマイナス1kg達成とはいきませんでした。しかし、体重とともに記録を続けている体脂肪率を見れば、少しずつ減ってきています。自分では、運動不足を解消することで、筋肉量が増えてきた結果ではないかと思えるのです。
最初は筋肉痛がひどく、毎日シップを貼って過ごす日々。徐々に使うシップの量が減ってきたある日、用事で少し遠出をして、長く歩くことがありました。「明日は絶対筋肉痛だな」と思ったのですが、いざ翌日を迎えてみると、拍子抜けするくらい平気だったのです。
これも、毎日30分の運動を取り入れた成果ではないでしょうか?普段からよく動いている方から見れば「少しお出かけしたぐらいで大げさな」と思われるかもしれませんが、私にとっては大きな変化なのです。
また、生活に運動を取り入れたことで、不眠症の解消にもつながりました。寝つきがよくなると自然と目覚めもよくなり、日中は頭がスッキリして、仕事がはかどるようになった気がします。
その人に合った指導を受けられるのが最大のメリット
今回ご紹介した方法は、私個人が管理栄養士さんから受けた指導内容です。これは、私の普段の生活をベースとして考えられたものであり、誰にでもあてはまるものではありません。例えば、30分間の運動。普段通りの生活に「プラス30分」が追加されるから効くのです。
「普段から30分程度の運動をしている人は何もしなくてもイイ」のではありません。その生活を基準として、さらにプラス運動、もしくはマイナス食事量を課す必要があるのです。
「どんな手段をどの程度実行すれば良いのか?」
「どれくらいのペースを目標とするのが良いのか?」