日本テレビ「嵐にしやがれ」内コーナー「相葉雅紀の代行調査」。4月25日の回では「乗り物に酔ってしまったとき一瞬で治す方法は?」でした。番組で紹介された内容、そして番組内で触れきれなかったと思われる詳細について、ご紹介します。
乗り物酔いの原因
乗り物酔いは「三半規管」と密接な関係があります。三半規管とは、平衡感覚をつかさどる部位です。この働きにより、人間は足場の悪い場所でも容易に二足歩行ができています。二足歩行のできるロボットが「高い技術」として評価されているのは、2本の足でバランスを取ることの難しさの表れ。
三半規管の働きは、プログラムで再現することが難しい複雑なものなのです。人間の体の、特に複雑な働きを持つ部位は、何かのきっかけで正常に機能できなくなる場合があります。乗り物酔いも、その影響を受けた結果のひとつなのです。
自己暗示
精神的な問題は意外に軽視できません。「自分は乗り物酔いをする体質なんだ」という意識が、自己暗示として影響するケースがあります。三半規管の働きにより、人間は二足歩行を可能にしていますが、だれしも生まれたときから立って歩けたわけではありませんよね?
成長とともに筋力や平衡感覚を鍛えて、徐々に安定した二足歩行ができるようになって、大人になっていくものです。つまり、幼い子供ほどまだ三半規管が発達しておらず、平衡感覚も未熟ということになります。
子供の頃乗り物によく乗っていた場合
三半規管が未熟なうちによく乗り物に乗っていた場合、そのたびに乗り物酔いに悩まされることになります。長い期間をかけて「乗り物酔いをする自分」という暗示が刷り込まれるケースです。
子供の頃あまり乗り物に乗らなかった場合
人間の体は、反復練習によって鍛えられるものです。乗り物に乗る機会が少なければ、そのぶん三半規管の発達が遅れてしまいます。その結果、大人になっても平衡感覚が未熟で、乗り物に酔いやすくなるというケースです。
心身のあらゆる不調
肉体・精神の両面から「本調子ではない」方は乗り物に酔いやすい傾向にあります。不調の原因には「睡眠不足」「疲労がたまっている」「悩みを抱えている」など、さまざまなものがあるでしょう。
また、上記の「自分は酔う体質である」という思い込みから「長時間乗り物に乗らなければいけないが、またきっと酔ってしまうだろう」という不安につながります。その不安からますます乗り物酔いを引き起こす、悪循環が生まれるのです。
目への刺激
風景の流れるスピードに眼球がついていけずに混乱を起こし、乗り物酔いにつながります。 同じく、眼球を狭い範囲で細かく動かすこととなる読書やゲームプレイなども、乗り物酔いの原因のひとつです。さらに、目への刺激は動きばかりではありません。強い光が目に入ることも、乗り物酔いの原因のひとつとして考えられています。視覚情報と平衡感覚の不一致
「流れる風景を見ていて酔うのなら、動かない1点を見続けたり、目を閉じていれば酔わないのでは?」そう思うかもしれませんが、答えはNOです。
この場合、目から入ってくる情報、つまり「動いていない」というものと、体が実際に受ける刺激、つまり「動いている」という情報が一致しないことから混乱が起きます。その混乱が、乗り物酔いにつながるのです。
また「自分で運転していると酔わないけど、他人が運転する車に乗ると酔う」という方がいます。自分で運転している場合には、スピードの上げ下げや左右の移動など、自分の意思で車を操作し動かしているので予測がつきますよね。しかし、他人が運転している車では動きの予測がつきにくく、このケースの乗り物酔いが発生するのです。
交感神経と副交感神経って?
「視覚情報と平衡感覚の不一致により、人間の体に一体何が起きているのか?」それは「副交感神経」の過剰反応です。副交感神経とは、肉体の修復を役割としています。乗り物酔いの原因のひとつとして上記した「心身のあらゆる不調」のうち、特に体の不調を感じるとき、副交感神経は活発に働きます。
乗り物に乗っていないのに乗り物酔い!?
体が「動いていない」のに、目から入ってくる情報が「動いている」ことで混乱が生じて「酔う」ケースを「映像酔い」といいます。3Dグラフィックスを使ったゲームなどで乗り物酔いに似た症状を訴える方が増えたことから「3D酔い」とも呼ばれるのです。映像酔いは、視覚情報と平衡感覚の不一致だけではなく、光刺激が原因となるケースもあります。
鼻への刺激
普段は気にならないような、ささいな匂いであっても、酔いやすい方にとっては乗り物に乗った瞬間から強い刺激となります。「排気ガス」「同乗者の体臭」「飲食物の匂い」などが、特に「乗り物酔いの原因」としてあげられるものです。
タバコの匂いなどは喫煙者には気がつきにくいものですが、普段タバコを吸わない方にとっては気になる匂いのひとつ。同じく、香水などもつけている本人は鼻が慣れてしまい気がつきにくくなっています。周囲の人間にとっては、乗り物酔いの一因となってしまう可能性があるので、注意が必要です。
番組内で紹介された方法について
番組内では、以下の実験が行われました。
コーナーを担当する相葉さんは「乗り物酔いを経験したことがない」という体質の持ち主。「乗り物酔いを克服したいと願っている方」と「徹夜明けで疲れきっている番組スタッフ」が実験に参加します。
あらかじめ、海や船に関係するさまざまな職業の方にアンケートをとり、船酔い克服法を集めて、クジを作っておきました。船酔いが発生したところでクジを引いてもらい、出た方法を実行。本人の体感で何パーセント船酔いが改善したかを申告してもらいます。
参考:http://tinyurl.com/l53vpxp
1.気合を入れる
釣り船の船長からの情報です。番組内では、検証されることはありませんでした。
精神面が原因なら効果アリ?
船に乗ることを職業としている方は「酔うから船に乗れません」などと言ってはいられないですよね。船酔いがあっても、気合で体を動かして働いているうちに、船酔いを克服したのかもしれません。船長は、その経験を語ってくれたのでしょう。
「病は気から」という言葉があります。乗り物酔いの原因に「自分は酔う体質」という思い込みや、そこから来る不安があげられていることからも、有効な手段のひとつと言えるかもしれません。しかし、旅行などで乗り物を利用する方が、そこまでの気合を持って乗り物酔いを克服できるかどうかについては、疑問が残るところですね。
2.ツボを押す
番組内の検証で最も効果の高かった方法です。プロの足ツボマッサージ師に同行してもらい、乗り物酔いに効くとされるツボを押して検証しました。本人の体感では、なんと80%~100%の効果があるとの申告が!そのツボとは小指と薬指の間です。番組では足で行いましたが、手と足どちらでも効果があります。痛いと感じるくらいに圧迫しましょう。
番組内で紹介されなかった他のツボ
乗り物酔いに効くツボは、番組で紹介されたものの他にもあります。そのツボは、腕の内側、手首のシワからヒジ側に向かって指3本ほど下がったところ。
市販されている酔い止めグッズのなかには、リストバンド状のアイテムがあります。このツボを刺激するための玉を、リストバンドの内側に縫い付けてあるのです。なお、あえてこのようなグッズを購入しなくても、米粒大から小豆大ほどの小さな粒を絆創膏(ばんそうこう)で貼り付けておくだけでも効果が得られます。
痛みから逃れるために100%申告?
番組内で最も高い効果の報告があった方法ですが、足ツボマッサージ師に押された本人の反応は「船酔いが治った!」というより「ツボ押しが痛い!」という状態。相葉さんに至っては「痛いツボ押しから逃れるために『もう船酔いは治った、100%効いた』と言っているのでは?」と思わせられる反応。
確かに乗り物酔いに効くツボは実在してはいるのですが、どちらかといえば「痛みに気をとられて船酔いから気持ちがそれた結果」のようにも感じられました。
3.炭酸飲料を飲む
元ダイビングショップ店員からの情報です。番組内で検証はされませんでしたが、専門医からの見解が紹介されました。医師によると「炭酸は酸性なので胃酸の分泌を促進し、吐き気を起こさせる」とのこと。
炭酸は酸性?アルカリ性?
インターネットで検索をしてみると「乗り物酔い対策に炭酸飲料を飲む」という方法は情報として広く知られています。ですから、この情報を寄せてくれた元ダイビングショップ店員が特別間違ったことを言ってしまった、というわけではないようです。
ウェブ上の情報によると「炭酸水の『アルカリ成分』が効く」とのこと。ん? 番組では「炭酸は『酸性』だから悪化する」と言っていたけど?Wikipediaによると、清涼飲料水には酸性度の強い飲料が多い。参考:http://tinyurl.com/7lxb3nt
「炭酸水のアルカリ成分」の根拠はどこから出てきたのかはわかりません。炭酸飲料は、飲むとスッキリするイメージがありますよね。プラシーボ効果も作用して実際に乗り物酔いが軽減した方がいたかもしれませんし、その事実に基づいて記事を書いた方がいたのかも?
4.唐辛子を食べる
効果が出るのは、唐辛子を食べてから約3分後です。番組内の検証では、体感で70%の効き目という申告がありました。
専門医の話では「動物実験でも効果ありという結果が出ている」とのこと。唐辛子に含まれる「カプサイシン」という成分が、乗り物酔いを抑える効果を持つのだそうです。
ただ、実験に参加した方の報告では、そんな専門的な話よりも「唐辛子の辛みで気がまぎれた」という意見でした。どちらにしても、乗り物酔いが70%も軽減するという成果はスゴイ!
5.サングラスをかける
ボート免許の教習所教官からの情報です。番組内の検証では、5%~20%の効果がありました。
乗り物酔いの原因のひとつに「光による目への刺激」があるので、理にかなっているといえる方法です。なお、サングラスのデザインによる効果の違いはないとのこと。
活用法次第で効果の割合は上がる?
番組内実験の結果を見るかぎり、酔い止め効果はあるものの、その割合は高いとはいえませんね。
ただし、これは実際に酔ってしまってから試した結果です。「酔う前から『酔い止め』としてあらかじめサングラスをかけておけば、より高い効果が得られるのではないか?」と推測できます。
デザインによる効果の違い、本当にナイ?
デザイン違いのサングラスの比較は、番組内で笑いをとるための意味のない実験のように感じました。しかし、光刺激が乗り物酔いの一因であることを考えると、より目に光刺激を受けにくいよう、レンズは大きめで色は暗めのものが良いのではないでしょうか?
なお、マジックミラータイプのサングラスは、光の反射によって周囲の人に乗り物酔いを促進させてしまう危険性があるので、あまりオススメはできません。
6.自己暗示をかける
釣り船船長からの情報です。「自己暗示」とのことでしたが、番組では催眠術師が同行して暗示をかけました。自己暗示の技術を持たない素人が、無理に思い込もうとするよりは、プロの手を借りて暗示にかけるわけですから、より高い効果が期待できます。・・・と思いきや、かけられた方の体感では効果ゼロ!
番組の実験だけで結論を出すのは早い?
船長の情報は、上記の「気合を入れる」といい、ご本人が根性論だけで乗り切ってきた感がありますね。しかし、実際に「悪い方向で無意識に自己暗示をかけてしまっている」ことが乗り物酔いの一因であることをふまえると、一概に「理論的ではない」とも言い切れないでしょう。
番組での結果は、暗示をかける催眠術師の実力に問題があった可能性も・・・。「催眠術にかかりやすい体質」「かかりにくい体質」には個人差があります。もしかすると、この方法で効果が出るという方も存在するのかもしれません。とはいえ、やはり「催眠術師に同行してもらう」ということ自体が非現実的です。一般的な選択肢としてあげられる方法とは言えないでしょう。
7.氷をなめる
オーストラリアのダイビングショップからの情報です。ここまでのさまざまな方法について番組スタッフがお話を聞いた、専門医からの情報でもあります。医師ご本人が海外旅行中に船酔いをしてしまったところ、ダイビングショップ店員だというオーストラリア人に教えてもらった方法。番組中、実際に体験した方の申告では、効き目70%と高い割合です。
なぜ氷が乗り物酔いに効くの?
乗り物酔いには、副交感神経の過剰反応が密接に関わっています。副交感神経と交感神経は互いに反比例の関係にあり、副交感神経が活発に反応しているとき、交感神経は活動を抑えられている状態です。
「氷をなめる」という行為は、重要な神経が多く通っている脊髄に近い場所を体の内側から冷やす効果があります。神経を冷やし刺激を与えることで、副交感神経の働きを抑え、交感神経とのバランスを取り戻すことができるのです。
他番組でも紹介されていた!
NHK「あさイチ」では「遊園地を10倍楽しむ方法」という特集が組まれました。その中で紹介された乗り物酔い解消法が「氷をなめる」というもの。「乗り物酔い」というと、まず移動手段を思い浮かべるものですよね。
この番組では、主に遊園地の遊具の酔いをさます方法として紹介していました。そして、なんとこの方法は「二日酔いにも効果がある」というのです。確かに「酔う」原理が同じなら、酔いの解消法はさまざまなシーンで活用できそうですね。
番外.水をかける
元アメリカ海兵隊伍長からの情報です。しかし、さすがに番組内の実験で「水をかける」という行為ははばかられたようで・・・。最初からクジの内容に含まれていませんでした。
他番組でも紹介されていた!
朝日放送「探偵!ナイトスクープ」で放送された「船酔いが一瞬で治る!?」という検証。ここで紹介された方法は「首筋に冷水をかける」というもの。「嵐にしやがれ」内では実験できなかった方法を、いともたやすく実行できる「探偵!ナイトスクープ」さすがです。番組内では「驚かせなければ意味がないので、対象者に気付かれないように後ろからこっそりと」と念を押していました。
しかしこの方法、実は「氷をなめる」と同じ効果が出ていると考えられます。脊髄を冷やすことで刺激を与え、交感神経と副交感神経のバランスを整える効果です。そう考えれば、対象者に気付かれていても効果は出る可能性があります。
ただ「嵐にしやがれ」内の実験でも「氷をなめる」だけでは100%ではありませんでしたよね。そこへ「驚きにより乗り物酔いから気をそらす」という追加効果をプラスして、より効き目を高めているのかもしれません。ただし、高齢の方や心臓に疾患のある方には危険な行為なのでご注意ください。
参考: http://tinyurl.com/ljjdw24
ぜひ試したい!乗り物酔い撃退法ベスト3
番組での実験の結果、効果が高いと思われる乗り物酔い撃退法ベスト3は、以下のとおりです。
☆ツボを押す☆氷をなめる
☆唐辛子を食べる
しかし、専門医が最もオススメする方法は「乗り物に乗る前にあらかじめ酔い止め薬を飲んでおく」というもの。酔ってから飲んでも効くタイプの薬も販売されていますが、やはり予防タイプが最も高い効果を得られるようです。
この方法のデメリットは、眠くなってしまうということ。「眠くなりにくい」とうたって販売されている酔い止め薬もありますが、あくまで「眠くなりにくい」であって「眠くならない」ではないのです。車を運転する立場なら、薬に頼らずに今回ご紹介した方法を試してみると良いかもしれませんね。