卵巣腫瘍は、女性ならみんなリスクを持っている
卵巣腫瘍は、読んで字のごとく卵巣に腫瘍ができる病気のこと。
できるだけ早期に発見・治療を行わないと、最悪命を落とすこともある恐ろしい病気です。
罹患者は年間6千~8千人、この病気で亡くなる人は年間4千人を超えるというデータもあります。
卵巣腫瘍は、40代~60代のいわゆる熟女と呼ばれる年代の女性に多くみられます。
しかし、この年代でないからといって安心はできません。稀なケースですが、歌手の宇多田ヒカルさんのように若い女性が罹患することもあります。(当時19歳の若さでした)
ですから「まだそんな年じゃない」「自分は大丈夫」と軽視してはいけません。
女性すべてが罹るリスクを持っていますので、「誰がいつ罹患してもおかしくない病気」という認識をしっかり持つことが大切です。
遺伝やストレス、食生活が関係している?
卵巣に腫瘍ができる明確な原因は、今のところ分かっていません。
しかし、家族のなかに罹患者がいる方や日々大きなストレスにさらされている方は、罹りやすいと言われています。また、脂肪やタンパク質の摂り過ぎが関係しているという説もあります。
もし心当たりがあったら、食生活を見直したり、定期的に婦人科検診を受けることをお勧めします。
卵巣が“サイレント臓器”と呼ばれる理由
卵巣は、“サイレント臓器”や “沈黙の臓器”と呼ばれることもあります。
なぜこのように呼ばれるのか。それは腫瘍ができても自覚症状が表れにくいためです。
腫瘍がトマトくらいの大きさに成長してから、やっと腰痛・月経不順・下腹部の痛み・下腹部のシコリといった症状が表れます。腹水(お腹に水がたまること)が生じた場合は、相当進行しているとみてよいでしょう。
卵巣にできる腫瘍は大きく分けて2種類あります。
1つは卵巣のう腫、もう1つは充実性腫瘍と呼ばれるものであり、前者は良性の場合が多く、後者は悪性の場合が多いという特徴があります。(割合は卵巣のう腫が80~90%、充実性腫瘍が10~20%)
手術や抗がん剤により治療を行います
卵巣腫瘍の検査方法には、触診、超音波、CT、MRI、腫瘍マーカーなどがあります。
これらの検査により腫瘍が見つかったら、腫瘍の大きさや種類などに応じた治療が行われます。
良性の卵巣のう腫であっても、腫瘍が5~7㎝と大きければ、茎捻転を防ぐために摘出手術を行わなければいけません。茎捻転が起きると、下腹部がズキズキする疼痛や発熱、便秘や嘔吐といった症状が表れるばかりか、細胞の壊死にまで発展する恐れがあるためです。
悪性の充実性腫瘍だった場合は、抗がん剤の投与や摘出手術が行われます。
どちらを適用するかは病態や医師の判断によりますが、はじめに抗がん剤で腫瘍を小さくしてから手術で摘出するといった具合に、2つを組み合わせて治療することもしばしばあります。
万全を期した摘出術か、それとも…
卵巣のう腫の手術法には3種類あります。
腫瘍のできている部分だけを切除する“のう腫核出術”、腫瘍ができている卵巣を丸ごと切除する“卵巣摘出術”、 腫瘍ができている卵巣のほか卵管も切除する“付属器摘出術”の3つです。
卵巣や卵管の有無は妊娠にダイレクトに関わります。
ですからどの手術法を適用するかは、患者さんの意思や意見を尊重した上で慎重に決められます。
今後の安全のために万全を期した摘出術を選ぶか、必要最低限の治療にとどめるか。
決断には覚悟がいりますが、自身の健康や命を守るためには避けられない選択と言えるでしょう。