「恐怖症」を知っていますか?
恐怖症とは、決まった状況に対して、恐怖や不安を感じてしまう状態をいいます。
動悸・発汗・口の乾き・過呼吸など、パニック障害と同様の症状がみられますが、空間や人、物など、恐怖を感じる対象がはっきりしていることが、パニック障害とは異なる特徴です。
また、恐怖をはっきり認識しながら逃れることができないという症状は、強迫性障害と似ているのですが、心の中の強迫観念が原因の強迫性障害と違って、恐怖症は心の外で起きていることが原因なのです。
ここでは世界保健機構(WHO)から発表された、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類の第10版)で分類されている、代表的な3つ恐怖症をご紹介します。
広場恐怖症
外出先・乗り物の中・人混みなど、何かが起こってもすぐ逃げられない、助けてもらえないような場所にいることに対して恐怖を感じるという、自分がいる場所や空間に対する恐怖を、広場(空間)恐怖症といいます。
この恐怖症は、パニック障害との合併が多くみられことから、恐怖を感じる場所に行けなくなってしまうことが障害となって、正常な社会生活が困難になる場合があります。
社会恐怖症
人混みとは別の、ある特定の集団の中で感じる他人から注目を浴びることに対する恐怖を、社会恐怖症といいます。恐怖を感じることで、他人や社会との関わりを持つことを避ける傾向にあるのが特徴です。
また、パニック障害のほかにうつ病などの深刻な精神疾患を併発することから、注意が必要とされています。
社会恐怖症には、他人から否定されたり、辱められることに対する恐怖が障害となって、人前で話す、人前で食事をとる、人が集まる場所に行く、などのことができなくなってしまう「社交不安障害」のほか、人前で顔が赤くなっているのではないかと恐怖を感じる「赤面恐怖症」や、過去の失敗経験が原因となり、他人の前で異常な緊張を感じる「対人恐怖症」などがあります。
また、他人の視線が気になってしまう「視線恐怖症」や、自分の見た目に過度な劣等感を持ってしまう「醜形恐怖症」、自分の表情が気になって他人とうまくコミュニケーションが取れない「表情恐怖症」なども、この社会恐怖症に分類されます。
個別的恐怖症
ある個別の状況や物に対して、恐怖を感じるのが個別恐怖症です。
「高所恐怖症」「閉所恐怖所」「暗所恐怖症」などの、特定の場所に対して恐怖を感じるものや、「雷恐怖症」「風船恐怖症」など、特定の音に対して恐怖を感じるものがあります。
また、「歯科恐怖症」「動物恐怖症」などは、過去の恐怖体験が原因となっていると考えられています。
さらに、尖ったものに恐怖を感じる「先端恐怖症」、奇抜な風貌や動作に恐怖を感じる「ピエロ恐怖症」、食虫植物や絡まりつく蔦などの植物が対象の「植物恐怖症」、洋服のボタンが対象の「ボタン恐怖症」など、一般的に恐怖の対象とされない物に対する恐怖症は、周囲の理解が得られにくいのが特徴です。