クロイツフェルト・ヤコブ病はどうしてプラセンタに影響する?
プラセンタとは哺乳類の胎盤のことで、胎児を短期間で育てる胎盤の高い栄養価が注目され、アンチエイジングなどの美容面、更年期障害などの治療薬として用いられています。
医療用プランセンタには主に国内の選び抜かれた安全なヒトプラセンタを原料としています。
原料となるヒトプラセンタにはさらに安全措置がなされ、医薬品のうちでも【特定生物由来製品】の指定を受け、使用に関しては様々な義務を伴い、市販の医薬品には事実上使用できません。
そ
のため、市販の医薬品や医薬品以外の化粧品・サプリメントに含まれるプラセンタはブタや羊、馬などのヒト以外の動物のプラセンタを原料にプラセンタエキスを抽出しています。
ヒトプラセンタが【特定生物由来製品】として使用の制限等を受けているのは、安全措置がなされてはいるものの、感染性因子の不活化処理にある程度の限界があること、未知の病原体による感染のリスクを理論上完全否定できないからなのです。
ですが、ヒトプラセンタが更年期障害の治療として使用されたのは今から50年以上前にも遡り、その間、医療用ヒトプラセンタが原因でクロイツフェルト・ヤコブ病(牛でいうところの狂牛病と同じ、ヒトのプリオン病)などに感染したとの報告はありません。
冒頭でも触れましたがクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)とは、認知症が急激に進行し運動機能に異常をきたし死に至る病気・牛でいうところの狂牛病(BSE)と同じプリオン病に分類されている病気で、伝達性海綿状脳症とも呼ばれます。
BSEで、最も感染の恐れのある部分は【特定危険部位】としていますが、胎盤はそのうちの第3位に危険とされています。
胎盤が美容や健康にメリットの多い部位であったとしても、クロイツフェルト・ヤコブ病などの感染リスクを理論上突破できないために様々な安全策を講じているうえ、様々な規制・義務があるようなものなのです。
(たとえば、プラセンタ注射を受けている場合は献血禁止措置が取られています。)
つまりクロイツフェルト・ヤコブ病の感染に関してプラセンタが危険だという証拠も、また安全だという証拠もないのです。
クロイツフェルト・ヤコブ病のこと
牛の脳がスポンジ状になり異常な不随意運動の末、死んでしまうという恐ろしい病気BSEが、日本でも発生しニュースになったのは10年程前のことです。
イギリスではBSE感染牛を食べた事によるクロイツフェルト・ヤコブ病が問題になりました。
‘95年よりクロイツフェルト・ヤコブ病が原因で死亡した人は確認されただけでも100名以上にもなるといいます。
クロイツフェルト・ヤコブ病の病原体プリオン(伝達性海綿状脳症・TSE)は悪性のタンパク質からなる感染性の因子で、加熱殺菌などの滅菌プロセスなどでは感染性を失わない病原体とされています。
また、治療法など未だ解明されていない部分が多く死に至る可能性が非常に高い疾患で、その診断基準は異常型プリオン蛋白質の検出・病理学的に特徴的な所見が認められたとき、PSD(周期性同期性放電)という特徴のある波形の脳波が認められるなど、一応は存在するものの、症状がアルツハイマー病に似ている為に病理解剖でないと判別が難しいともされています。
しかし現在では、異常型プリオンが脳脊髄液に出ることを利用、腰の髄液を採取して、高い精度でこの病気を判別が可能な検査方法が開発されているそうです。
病原体プリオンって何なの?
クロイツフェルト・ヤコブ病を引き起こす異常型プリオン蛋白質(プリオン)は蛋白質性感染性粒子(proteinaceous infections particle)、つまり悪性のタンパク質のことです。
ウイルスはカプシドやエンベロープと呼ばれる複数の蛋白質から構成されていますが、プリオンは異常型プリオン蛋白質のみか異常型プリオン蛋白質を主要に構成されていると考えられています。
感染性を持つようになるのは異常型プリオン蛋白質が5分子以上凝集したときで、こうなってはじめて『プリオン』と呼ばれるのだそうです。
また、異常型プリオン蛋白質が14分子~28分子凝集し構成されたプリオンが最も感染性が強いことがわかっているのだとか。
異常型プリオン蛋白質は正常なプリオン蛋白質を異常型にしながら取り込んでいき、伝達性海綿状脳症(TSE)を引き起こします。
動物では、牛海綿状脳症(BSE)、スクレイピー(羊やヤギ)が知られています。
また人のプリオン病の一種とされるクロイツフェルト・ヤコブ病は、遺伝性・感染性などの原因の違いにより4種類に分類されています。
正常型プリオン蛋白質は蛋白質分解酵素で分解・消化されますが、異常型プリオン蛋白質(PrPsc)は分解されにくいため見分けることができます。
正常なプリオン蛋白質(PrP・PrPc)は健康な人の脳にも見られますが、その働きや機能に関しては分かっていません。
プラセンタ注射に対する賛否両論
プラセンタにより病気が感染してしまった場合、命に係わる重大なものとなるかもしれないリスクがある。
反面、プラセンタは高い美容効果を持ち合わせており、さらに今までにプラセンタの副作用による発症報告はない…。
このことから、美容のためのプラセンタ注射には賛否両論があります。
女性にとって美を保つことは健康維持に勝る大事な問題であるからなのかもしれませんね。