生命を脅かすような危険や重度のストレスが引き金に
離人症性障害を起こすと、自分の体、精神、感情、あるいは意識から遊離している感覚に襲われることがあります。
多くの患者は、自動制御されているような非現実的な感覚に陥ることがあり、夢の中なのか、どこか別の場所にいて現実世界から離れて遊離しているようだと訴えます。
確かにそこに居るのに、自分だけ別の場所に居て、その光景を遠くから見ているような感覚になることもあります。
症状は持続して起こることがしばしばありますが、約3分の1の患者には繰り返し現れ、約3分の2患者では絶えず症状があるといわれています。ときには一時性の症状が持続型になることさえあるのです。
自分に起きている症状をうまく説明できず、正気を失いかけているのではないかと恐れてしまう、あるいは正気ではないと思いこむことがよくあります。
しかしながら患者は常に、自分の非現実的な体験が実際のものではなく、ただ自分がそう感じているだけであるということをきちんと認識しているのです。
主にどんな時におこりやすくなるのか?
有効な治療方法とは?
離人症性障害の多くは、治療しなくても改善することがあります。
それでも、障害が持続性であったり、または再発性の場合や、本人に苦痛が伴う場合に限り治療を行います。
離人症性障害は、他の精神障害、たとえばパニック障害などが関係していたり、それらが引き金となることもあることから、そのような場合には治療が必要になります。
発症に何らかのストレスがかかわっている場合には、その対処も必要となります。
その場合、何がストレスとなっているのかを、しっかりつきとめることも必要なことになってきます。
治療法には次のものがあります。
• 行動的技法は、なんらかの課題に没頭させることで、患者の気を離人症そのものからそらすのに有用です。
• グラウンディングの技法は、五感(聴覚、触覚、嗅覚、味覚、視覚)を使い、自分自身や現実世界と結ばれているという感覚を得るのに有用な技法です。たとえば、大音量の音楽をかけたり、手のひらに氷のかたまりを乗せたりします。このような感覚は誰しも無視することが難しいため、患者は現実に生きる自分自身の存在を認識することができるということです。
• 力動的技法は、患者が意識と解離している耐えがたい葛藤やそれに伴う感情を克服できるよう手助けすることに重点を置いている技法です。
治療により、通常はある程度の効果が得られます。
多くの患者が完全に回復し、特に発症に関連するストレスが治療により対処可能な場合には、ほぼ確実に回復します。治療を行ってもあまり効果がみられない患者もいますが、やがて自然に快方へ向かう場合もあります。
ですが、その一方で、どのような治療を施したとしても、残念ながらあまり効果がみられないケースも少数ながら存在していることも事実です。その場合、抗不安薬および抗うつ薬が、特に不安や抑うつも併発している場合に、ときとして有用に作用することもあります。
離人症性障害は、決して治らない病気ではないのです。
このストレス社会で生きている私たちは、誰しも何らかのストレスを抱えて生きていることの方が多いのも現実ですが、それらと上手く付き合っていくことも必要なことだといえます。
とはいえ、職場など、どうにもならないストレスがあるのもこれまた現実です。そんな時は、ひとりカラオケなど、誰にも気を使わない時間を持ってみるなど上手くストレスを発散させる方法をみつけておくのも有効なことです。