高度で深いスキルが求められる手話通訳士
多くの手話通訳士の仕事は、主に行政機関や病院などの公共機関で、受付、相談、仕事に関する仲介等で聴覚障害者の支援をボランティアとして無料で行っています。各地域のボランティアセンターや手話派遣協会へ登録し、要請をうけて出向くのが一般的です。
聴覚障碍者と第三者が意思疎通をはかる際に、交渉事などがスムーズに運ぶよう手話通訳士が介入しますが、通訳が単なる会話とは違い難しい点は話し合う双方が何を求めていて、何を伝えたいのかを正確に理解したうえで、手話通訳士の私情を挟まず公正な判断のもと交渉のサポートを行なうことです。
手話の高度なスキルと共に豊富な知識を備え、『何を言いたいのか?』を察知、伝達できる資質が手話通訳士には求められます。
厚生労働省認定/手話通訳技能認定試験内容
全国で3068人の手話通訳士資格取得者が登録されています。(平成25年3月21日現在)
試験概要 |
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受験資格 |
20歳以上 |
試験日程 |
年1回/筆記試験:9月下旬/実技試験:11月上旬 |
受験会場 |
東京、大阪、熊本 |
受験費用 |
18,000円(税込) |
試験内容 |
【筆記試験】 |
合格率 |
11.1%/受験者数948名 合格者数105名 |
公式サイト |
社会福祉法人聴力障害者情報文化センター |
勉強方法
英語などの語学勉強と同じく、日常的に手話に触れる機会の有無によって、手話の習得スピードに違いが出るでしょう。地域の手話サークル等に参加するなど、積極的なアプローチが成果につながります。
また、学歴が問われることはありませんが、一般常識や世間の動向などと云った幅広い情報に目をむけて知識を深めておくことは手話通訳士としての質を高める武器となるでしょう。
社会福祉法人聴力障害者情報文化センターの公式ホームページには、「障害者福祉の基礎知識」「聴覚障害者に関する基礎知識」「手話通訳のあり方」「国語」など、試験対策、スキル向上にも役に立つ参考書の一覧が掲載されています。
手話通訳士になり進みたい道は?
手話通訳士の資格取得を目指す人の目的は、以下、2つのいずれかに当てはまる場合が多いと思います。
- 手話通訳士を生業にしたい
- 手話の高度なスキルを身につけて役に立ちたい(ボランティアでも良い)
職業として収入を得るために手話通訳士の資格取得を目指している人は、その前に厳しい現実を知っておく必要があります。ハード、ソフト、両面でのバリアフリー化の必要性が高まるなかで手話はとても需要の高い技能ですが、手話通訳士のみで生計が成り立っている人は日本国内でも十数人と極稀です。
しかし、実際に手話通訳士の収入で生活を立てている人が存在するのも事実であり、可能性はゼロではありません。自身が身につけた手話の技量で聴覚障碍者のコミュニケーションサポートを行ない、実績を積むことによって信頼される手話通訳者として各方面からのニーズが高まり、収入へと結びつくことも考えられます。
ボランティアの印象が強い手話通訳ですが、団体等によっては通訳、および講師として有料で依頼されることもあります。以下は一般的な相場の金額です。
手話通訳の講師:1回2時間/1万5千円~2万円
手話通訳:時給2,000円
手話通訳士の職業病
「全国手話通訳問題研究会」の調査では、大きな身振り手振りで時には身をかがめてコミュニケーションをはかることが多い手話通訳士は、「手、肩、腰」などの痛みが慢性化し、手話通訳士の約2割が頸肩腕障害を発症し、約8割が肩こりの悩みを抱えていると言われています。