廃墟から蘇ったポーランドの首都、ワルシャワ
第2次世界大戦末期の1944年8月1日、東部戦線から進撃してくるソ連軍による解放も間近とみたワルシャワ市民が、ドイツ占領軍に対して一斉蜂起します。しかし、ソ連軍はワルシャワ手前で進撃を止め、援軍が届かないまま蜂起は鎮圧されてしまい、街の90%は焦土と化してしまいます。
その理由は、イギリスに亡命していた共和国政府主導の蜂起だったため、戦後ポーランドに共産党の政府樹立を目論むソ連にとっては、都合が悪かったのです。
ワルシャワ市内には、その当時を伝えるモニュメントがたくさんあります。
ワルシャワの旧市街
戦争によって街の90%が破壊されたワルシャワは、戦後、ポーランドがソ連の支配下になったため、ソ連のように画一された街並みに作り変えられました。
しかし、現代の観光名所である旧市街は戦前の状態に復元されました。
過去の絵、写真、生き残った市民の記憶を総動員して、「壁のひび一本にいたるまで」再現したと言われています。
カフェや露店が並び、観光客で賑わっている旧市街の大広場には、「ワルシャワ歴史博物館」があります。石器時代からのワルシャワの歴史を紹介し、第2次世界大戦の時のワルシャワの写真や展示も充実しています。
ワルシャワ蜂起記念碑
旧市街広場から歩いて数分ほどの距離にあるクラシンスキ公園の東側には、ワルシャワ蜂起45周年を記念して1989年に建てられた、ナチスドイツと戦う市民兵をモチーフにした「ワルシャワ蜂起記念碑」の像があります。
どの像も苦しそうな表情をしており、期待していたソ連軍に見捨てられ、蜂起が鎮圧されてしまった当時の無念さが伝わってきます。
また、ワルシャワ中央駅近くには、ワルシャワ蜂起博物館があり、当時の映像や写真、武器や軍服が展示されています。
ゲットー記念碑
第2次世界大戦中、ワルシャワには「ゲットー」と言われる、ポーランド国内やドイツが支配していた国々から集められたユダヤ人が隔離された居住地域がありました。
ゲットーでは低賃金労働をさせられ、住環境は不衛生で悪臭が漂い、疫病も流行してたくさんの人々が命を落としました。
ゲットーが各地から移送されたユダヤ人で溢れてくると、彼らは次々にアウシュヴィッツなど強制収容所に送られることになります。
ゲットーから強制収容所への移送が開始された1943年、ユダヤ人によるワルシャワ・ゲットー蜂起が行われました。しかし、1ヵ月後にはナチスの武装親衛隊SSに鎮圧されてしまいます。
そのゲットー英雄記念碑が、ゲットーが設置されていた地域だった場所にあります。
英雄記念碑の中心にいるのが、ゲットー蜂起を指揮したモルデハイ・アニエレビッチ。彼は戦闘最中に24歳の若さで戦死します。
壮絶な歴史を伝えるポーランドの強制収容所
ポーランド各地には、ユダヤ人を収容していた大規模な強制収容所跡が、博物館として一般公開されています。その中でアクセスが良い代表的な強制収容所を2つ紹介します。アウシュヴィッツ強制収容所
世界的にも有名な「アウシュヴィッツ強制収容所」は、ポーランド南部の古都、クラクフからバスで約1時間30分ほどの距離にあります。「アウシュヴィッツ博物館」として無料で公開され、クラクフから日帰りで行くパターンが一般的です。
囚人が収容されたバラック、絞首刑台、死体焼却炉、ガス室、銃殺が行われた死の壁などがある「アウシュヴィッツ」と、2km離れた場所にあるアウシュヴィッツより広大な敷地の「ビルケナウ」があります。
ビルケナウには「死の門」と呼ばれる入口の門があります。「死の門」を潜り、ヨーロッパ各地から収容者を乗せた列車が到着する引込み線の風景は、アウシュヴィッツのシンボルともなっています。
「アウシュヴィッツ」と「ビルケナウ」の間には、路線バスが運行されており、バス停の時刻表でバスの時間を確認してから見学すると効率的に周れます。
マイダネク強制収容所
ウクライナと近いポーランドの南西部に位置している都市、ルブリンには、「マイダネク強制収容所」があります。
ルブリンへは、ワルシャワからは列車で2時間20分ほどかかります。クラクフからは列車で5時間ほどかかるので、其々の都市から日帰りで行くよりは、ルブリンに一日でも滞在するのをオススメします。
ナチスの強制収容所と言うと、ナチスのアウシュビッツ強制収容所が有名ですが、マイダネク強制収容所はソ連軍に解放された直後の戦時中の1944年、世界で最初のナチスの強制収容所の博物館として公開されました。
ルブリン市内から南東へバスで15分ほどの距離に、アウシュビッツ強制収容所と同じく、ガス室、死体焼却炉、バラックなどがありますが、マイダネク強制収容所特有の特徴的な展示は、一番奥の霊廟に砂浜のような大量の囚人の灰があり、見学できることです。
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