新規就農を目指す人に贈る!脱サラ農家への道|トピックスファロー

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2012年7月11日
新規就農を目指す人に贈る!脱サラ農家への道

朝日と共に目覚め、土と共に生きる――都会暮らしの人は農業に対して、こんな牧歌的なイメージを抱いているようです。そして突如として安定したサラリーマン生活を捨てて新規就農を志してしまう人たちが居るのです。彼ら「脱サラ農家」の実態を探ってみました。

企画やWEBサイト製作までも手掛ける、ライターもどき
  

「脱サラして就農」は賢い選択なのか?脱サラ農家の天国と地獄

男なら一生に一度は、「独立して一国一城の主に」という夢を多かれ少なかれ抱くものです。
そして独立を実現する為に資格を取ったり、独立後のための顔つなぎをして人脈を作ったり、前職とは全く違う分野に飛び込んでみたりと、夢の為にわき目も振らず邁進していくのです。

そして「無機質な数字やコンピューターと格闘するよりも、土に触れて生活するのが人間のあるべき姿」みたいなキャッチコピーで脱サラして新規就農を目指す、脱サラ農家もそういう独立の夢を見る男たちなのです。

脱サラ農家には二種類ある

一口に「脱サラ農家」と言っても、実際には2種類に分かれます。

一つは全く畑違いの分野からの転進や農業の「の」の字もない都会生まれ・都会育ちからの「完全新規就農組」です。
彼らが脱サラして農業を志すのは、「これは本当に自分のやりたかった仕事じゃない!」といういわゆる『自分探し』の結果であったり、農業の企業化にビジネスチャンスがあると信じている起業者としての決断の結果であったりするのです。

もう一つが引退や相続によって親の跡を継ぐことになり都会を離れざるを得なくなった「既存農家後継組」です。
元々実家の生業が農業で、子供の頃から作業を手伝わされていたので勝手も知ってる、だけど農家を継ぎたくなくて都会に飛び出してきたのに結局戻ってきて家業を継ぐ羽目になった…という背景があります。

新規と後継、どっちが有利?

成功への夢に燃え、農業への情熱をたぎらせる「完全新規就農組」。
なし崩し的に親の跡を継ぎ、農業を始めることになった「既存農家後継組」。
この二つの脱サラ農家のどちらが成功しやすいのでしょうか?

答えは、後者の「既存農家後継組」です。
なぜかと言うと、親の代から家から農地から引き継いでいるので初期投資が全く要らないからです。しかも、元々地元出身なので信頼関係も強く、周囲の協力も得られやすいのです。

逆に完全新規就農組の場合、家・農地だけでなくトラクターなどの設備をゼロから揃えなければならず、出費はかさむばかりです。周囲の既存民からは「よそ者」と見られ、協力してくれる人を探すだけでも一苦労です。

そして何より大きいのが、「作物の販路の確保」です。
後継組の場合、親の代からの伝手やJAとの取引があるので販路がすぐに確保できて、一年目から確実に収入を得られます。
逆に新規組の場合、JAや外部業者との取引を開拓するところから始めなければなりません。

このように新規組と後継組では、これだけの差が最初から付けられているのです。

農家には経営感覚も必要

そして脱サラ農家が失敗する原因の一つが、「経営感覚の欠如」です。
これは農業に限らず、脱サラ起業全てに共通することなのですが自営業を始めた途端、「入ってきたお金=自分の収入」と勘違いしたり、人件費などの払うべきお金を払うのを渋って事業全体を揺らがせたり、「市場のニーズを無視することが成功する経営者の鉄則」とか致命的な思い込みに振り回されてしまうのです。

作物を育てるには、苗や肥料の代金、収穫の為のトラクターやコンバインを買うお金に動かす為のガソリン代、毎年新調するビニールハウス、輸送の為に作物を詰め込むダンボール代、毎日の食費、家の光熱費など色々な出費が必要になります。入ってくるお金を使いたいように使っていては、作物を育てる為の必要なコストが捻出できなくなってしまいます。

どのような商品としての野菜が市場で求められていて、そのニーズに応えるにはどうすればいいのか。
必要経費を圧縮するには、何が無駄になっているのか。
何を削ったら今の生産体制が維持できなくなるのか。

そういった自問自答を重ねて経営のシェイプアップを図り、利益の向上を目指すのが経営感覚というものなのです。

法人化は夢のまた夢…?

脱サラ農家に多いのが、「将来的には農業法人化を目指す」という夢を熱く語る人です。

要するに個人単位の自営業としての農業は通過点で、最終的には会社を立ち上げて農業を行なうという大きな夢です。実際のところ、経営的に成功しているかどうかはともかく日本国内の農業法人は増加傾向にあるようです。

農業法人化することのメリットは、従業員として小作人を雇い入れることが出来る、個人経営では難しい農地の大型化が出来る、従業員を雇ったことで休日を考慮したスケジュールが作れる、法人なので雇用保険・健康保険などの社会保障制度が適用できるなどが上げられます。

しかし、法人化することによって発生するデメリットもあります。経営規模が一定以上の大きさでなければ法人課税が個人税よりも高くつくこと、社会保障制度への加入が義務付けられるので事業主負担が発生すること、収支を複式簿記で記帳することの義務化などです。

農業を法人化できれば、まさに一国一城の主に相応しい功績と言えます。しかし、農業法人化したからといって必ずしも成功するというわけではありません。

新規就農で成功するには夢だけでなく、現実も見なければならないのです。

著者:渡辺芳樹

企画やWEBサイト製作までも手掛ける、ライターもどき
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学生時代からライターとして活動。小さな会社に就職したおかげで、ライター以外に、編集からWEBサイト製作など、幅広く経験。現在はフリーランスとなり、いくつかの会社と契約を結んで執筆活動してます。