農家人口の減少どころか農業自体がピンチ!?
日本における農家人口は年々減少の一途をたどっています。
就農者の高齢化や後継ぎ・嫁不足といった問題が原因の背景にあるわけですが、耕作放棄地の増加や近年の東日本大震災の影響などにより農業そのものの継続も困難になってきています。
一方でこの問題を解決すべく、行政や教育機関・大企業にて様々な対策や取り組みが実施されています。そのうちの1つが、各メディアでも頻繁に取り上げられている“ITシステムの導入”です。農業のIT化を図ると言い換えたほうがイメージし易いかもしれません。
クラウド等を活用し技術継承や品質向上を図る
具体的にはどんな取り組みが行われているのでしょうか?内容を大まかにまとめると以下の通りです。
- クラウドコンピューティングやセンサーネットワークを用いて、農場環境をモニタリングする
- それによって情報収集と蓄積を行い、後継者への技術継承や農作物の品質向上に役立てる
経験豊富な就農者のノウハウが詰まった有効なマニュアルが出来上がるわけですから、新規就農者の教育や新規参入法人への技術継承が格段に楽になります。また農作物の品質改善や向上、農業における新しいビジネススタイルやモデルの誕生&確立も期待できます。
実現や定着は容易ではありません
取り組みの概要や得られるメリットのみに注目するといかにも良策ですね。
しかしそれらの実現や定着化を図るのは決して容易なことではありません。クリアすべき難題は数知れず・現実はそう甘くない、なのです。
「農業の分野」という大きいくくりで考えるならば、確かにIT化は進んでいます。しかし個人単位で考えた場合、進んでいるとは言い難いものがあります。就農者の多くがITに強い関心を持ち、積極的に活用しているわけではないということです。
むしろ大多数が、仕事にITを取り入れることに対して「興味や必要性を感じない」「覚えるのが面倒」と後ろ向きの感想を持っています。
またコストという現実的な問題を指摘する就農者も多くみられます。具体的には「ソフトが高そう」「通信費がかかる」といった具合です。
農業のIT化は国レベルでの支援が不可欠
現状のままでは、農家にITの導入を強制することは決してできません。
もし強引に行おうとした場合、反対意見や不満の声が続々と上がり経営にも支障をきたすことでしょう。
今まで培ってきた技術や業務スタイル等が全て覆されかねないわけですから、当然のことと言えます。
農業のIT化を普及・浸透させるには、国レベルでの安定した支援が不可欠と言って過言ではありません。ITへの投資にあたり補助金制度を設ける、サービス提供を義務化するといった政策を立てなければ、最もネックとなるコスト問題の解決は不可能です。
農林水産省2010年の調査で、就業者の平均年齢は66歳と報告されています。
この結果から、個人の意識改革も容易ではないことが推測できます。このように農業のIT化実現はまだまだ発展途上の段階にあるのです。
しかしながら希望や可能性はゼロではありませんから、今後に期待する価値はあると言えるでしょう。