[節約の科学] 置換型節約法による無駄の削減|トピックスファロー

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2014年1月14日
[節約の科学] 置換型節約法による無駄の削減

節約の方法には、事物の廃棄・制度の廃止による方法、廉価な事物に替える方法、より廉価な料金にする使用法の工夫などがあります。それぞれ、廃棄型節約法、置換型節約法、用法型節約法と呼び区別します。本稿は置換型節約法を解説します。前半は、置換型節約法の特徴と、必要とされる原因を分析します。後半は、企業、国や地方自治体、学校法人、家庭や個人などがもつ節約の対象を分析します。

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目次

1. 置換型節約法について

置換法の特性を取り上げます。

1.1 置換型節約法とは

経費節減や原価低減のため、事物や制度を効率の良い他の事物や制度に置き換える手法です。実施の対象は相応の効果が確認できるものです。自社の所有からリースに置き換えるのも置換型節約法の一つです。実施すると、新たに置き替わったものと従来の事物とが混在する場合があります。例えば、正社員のみのグループの一部を派遣社員に替える場合です。職場の人間関係や雰囲気に気をつけねばなりません。副作用があることを認識しなければなりません。物の場合は旧来の物を廃棄する費用、新たに物を購入する費用が必要になります。回路の設計を変更する場合は、設計変更に伴う費用の発生や設計不良のリスクも考慮すべきでしょう。

1.2 置換型節約法の目的

(1) 体質強化

事物を始めるには、先発隊あるいは創業部隊の活躍が不可欠です。しかし、創業部隊がその後も仕切るとうまく動きません。創業部隊が築いた陣地を引き継ぎ、整備を進めて人心を安定させると共に、今後の発展の基礎をつくる部隊が必要です。さらにその後も、しかるべきタイミングで改革を繰り返さねばなりません。置換型節約法はこの部隊の働きをする手法です。当然、継続と発展とを前提としています。筋肉質の体に変えることを意味しています。

(2) 余力の他への転用

置換によって生じた余力を他の用途に投入します。

2. 置換型節約法の必要性

事物のなかには時間の経過と共に変質していくものもあります。事物・制度を取り巻く環境もまた時間の経過と共に変化します。このため、事物・制度と環境との適合は乖離していきます。適当な時点で事物制度の見直しが必要になります。以下はそのような例です。

2.1 外部環境の変化

社会は変化します。下記の項目は外部の環境変化の例です。昔はともかく、社会の構成が複雑になり、変化が急激になった現在は、企業も、国も、地方自治体も、そして個人も、自己の責任で変化に備えるべきです。なお、備えが不十分なら自業自得といえますが、情報が不足していたとか、変化が急な場合は責任を問えません。
(1) 資金環境の急激な変化:
例えば次のような場合です。

  • 戦争の危機による原油価格の高騰
  • 他国の信用不安による株安
  • リーマンショックやサブプライムローンによる通貨不安
  • 多量のドル放出による円高の進行

(2) 有効な対策をしなかったことによる円高の:継続
(3) 事物の必要性や重要度の変化
(4) 海外からの安価な製品の流入
(5) 高機能・高性能の危機やサービスの登場
(6) 有能な人の出現: 新人の成長や優秀人材の途中入社
(7) 長引く経済不況やデフレの継続
(8) 競合店の進出
(9) 少子化による学生・生徒の減少など

2.2 内部的な事情

以下のように内部に原因がある場合です。
(1) 新製品開発の失敗
(2) 拡大政策の失敗
(3) 製品の重大な事故
(4) 自己の変化 ・・・成長・老化・変質など
(5) 管理の甘さ

2.3 設計者の場合

機器や設備やシステムの設計者が原因となる場合です。
(1) 担当者の知識・経験の不足
(2) 上司の指導能力や管理能力の不足
(3) 誤った設計理念: 多機能、過剰性能、過大な安全設計などの志向
(4) 開発当初と成熟期での設計品質要求の差

2.4 その他

(1) 価値観の混同 : 高級志向・丁寧志向の風潮。
(2) 無批判での受容 : 従来の方法を無批判で受け入れてきた。
(3) 所有の概念 : 所有を前提にしてきた。
(4) 仕事ぶり : 丁寧な仕事、丁寧な作業が良いと考えていた。

3. 置換型節約の対象と方法

置換型節約の対象を決めたら、次に方法を検討します。要する費用と得られる効果も当然検討します。

3.1 企業の場合

企業における標準的な置換型節約の対象を以下に挙げます。
(1) 事業の見直し
それぞれの事業を全般的に見直します。下記はその例です。

  • 事業規模の見直し : 工場の数や配置のほか、生産の方法や量などを見直します。
  • 事業に属する自営の施設・設備の見直し : 社屋のほか、附属病院、寮・社宅などが対象です。
  • 類似組織の統合・集約 : 類似の技術や製品を扱う設計者集団や製造集団を統合します。

(2) 定型的業務の人材の見直し
業務によっては以下のような変更も考えられます。

  • 外部の会社に業務委託する。
  • 非正規社員の担当にする。
  • 定年退職者を嘱託として働いてもらう。

(3) 全社的な施設・設備の見直し
全社的観点から置換型節約の対象となる施設を見直します。

  • 稼働率の低い施設を見直します。保養所・研修所などです。
  • 稼働に多額の運転費を要する設備や施設を見直します。
  • 自家用車の扱い
       (a) 大型・中型車の一部を軽自動車に変える。
       (b) 所有をやめリースにする。
       (c) 低燃費車に変える。

(4) 売掛金の見直し
金額や相手企業、それらの時系列的変化などを見直します。
(5) 負債の見直し
負債の種類と額を見直すほか、高利の負債の低利借り換えを考えます。
(6) 在庫の見直し
在庫の量のほか、売れる見込みのない製品、使う見込みのない在庫も見直します。
(7) 経費の見直し
下記のような経費の諸項目を置換型節約の視点から見直します。

  • 光熱水費:照明数削減、LED照明への変更、冷暖房温度調節など。
  • 通信費: 郵便やファックスを可能な場合は電子メールにする。
  • 文具費: 清書以外の印刷制限などを含め全般的に見直します。
  • 出張費: 出張を他の方法に変えることも考えます。

(8) 広告・宣伝費
従来の広告媒体からインターネット広告を含む媒体へ見直します。
(9) コンピュータ
サーバーコンピュータやクラウドコンピュータが進歩しています。サーバー機の集約や、パブリックラウドの利用も検討します。

3.2 設計者の場合

置換型節約の観点から設計を見直ことも必要です。
(1) 処理方式の変更:  得る結果は同じだが低価格の処理方式に変える。
(2) 部品・材料の変更: 使用している部品・材料を変える。
(3) 工法・製法の変更: 新たな工法に変える。
(4) 軌道修正: 開発当初の過剰な品質(機能・性能)を緩和する。

3.3 政府機関・地方自治体の場合

行政の執行や住民サービスの内容と方法は、時と共に変わります。事業の誕生や消滅のほか、事業の遂行手段の変化(コンピュータの利用やネットワークの連携など)もあります。常に変化への対応が必要です。企業と同様、最高情報責任者(CIO: Chief Information Officer)を置き、業務の遂行方法を改善すべきです。

(1) 事業・サービス

事業の見直しを常に行います。下記はその例です。

  • 事業規模の見直し:事業規模に応じた運営費や人数に見直します。
  • 事業運営の見直し:運営業務の外部委託などを考えます。
  • 事業内容の見直し:業務内容や方法を見直します。

(2) 施設設備

施設設備の稼働状況と維持費などを見直し、遊休資産の利用を考えます。

(3) 人材

上級公務員の劣化が問題視されています。人材の育成に努める一方、有効な活用に努めねばなりません。また、定年などで生じた欠員はパート職員で補充することも考えられます。

(4) 制度・慣行

公務員の特権は自粛すべきです。時代遅れの手当があれば切るべきですし、適用する場合も民間に準じるべきです。低価格で住宅を提供することや天下りの繰り返し、官官接待なども自粛すべきです。

(5) 経費

光熱水費、通信費、旅費、文具費などは企業の場合と同様に対処すべきです。

(6) コンピュータ

ICTは事業の具体的な実現手段として重要です。公務員にも専門職を設けるべきです。

3.4 学校法人の場合

教育と研究(大学の場合)という事業に特化している学校は、事業の広がりが狭いため置換型節約の対象も限られます。
(1) 教育事業
事業の廃止は企業に比べ道義的に困難です。だから開設には慎重な検討が必要です。法科大学院や学部を持たない大学院大学の新設などは過去における失敗の例です。授業料収入のみによる経営は困難だからです。
(2) 付帯事業
  附属病院や出版事業は原則として独立採算です。
(3) 施設・設備
  施設・設備の新増設は寄付や補助をかんがえます。
(4) 人材
大学の研究の質を高めるため教員の削減は困難です。下記は置換型節約法を適用する例です。

  • 中核となる職員を除きバート職員で業務を遂行
  • 業務の外部委託の推進
  • 講義の質の向上と専任教員と非常勤講師の比率適正化
  • 図書館やコンピュータ施設での大学院生のアルバイト雇用

(5) 経費
光熱水費、通信費、旅費、文具費などの節約は企業に準じて行います。

3.5 個人経営の場合

個人企業の場合の事業の数は限られますが、3.1節に挙げた事項で可能なものは個人経営の場合にも適用します。下記は他に考えられる見直し対象です。

  • 役員報酬の見直し:
  • 各種保険の見直し: 有利な保険契約に切り替えます。
  • 親睦・啓発・同好クラブ: 不要なら脱会します。

3.6 家庭の場合

 家庭の機能を維持できる範囲で家計を見直します。下記はその例です。

  • 食費の見直し
  • 各種保険の見直し
  • 旅行の回数や費用の削減
  • 教育費: 塾の種類と数、学習教材費などを見直します。
  • 家族の小遣いを見直します。
  • 電話料金の節約
  • 光熱水費の節約 照度の見直しやLED電球の使用、クーラーや冷蔵庫の使い方を見直します。
  • 転居:より有利な条件(通勤通学の時間や費用)の住宅への転居。

3.7 個人の場合

仕事と研鑽に影響しない範囲で出費を見直します。下記はその例です。

  • 体力維持費:食費や健康維持費 ・能力増強費 ・教養増強費
  • 身だしなみの費用: 被服・整髪
  • 趣味の費用
  • 住居費と光熱水費の見直し
  • 大型機器の費用: 車、パソコンなど ・電話料の見直し

4. 結び

置換型節約法は、現行の事物・制度を他の事物・制度に置換する節約方法です。自家用車を廃止しリース車を使うことや、大学の警備業務を専任職員から警備会社に委託する改革などは、置換型節約法の適用事例です。本稿では、置換型節約法の特徴を分析すると共に、企業、役所、学校法人、家庭、個人の置換型節約の対象を検討しました。この節約法では初期費用を要する場合があります。効果の厳密な見積もりをして実施することは当然です。

著者:伊藤義雄

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書きたいものがありすぎて書かせてもらっているライターです。趣味は鉄道旅行、写真を撮ることもあるが実際に乗車して車両の個性を体験したいタイプ。尊敬する人は宮脇俊三さん。目標は全国鉄道制覇