1. 無駄について
無駄の全貌を明らかにします。なお“適切な余裕”は無駄ではありませんし、趣味に関係する事物も対象外です。
1.1 無駄の種類
無駄の種類を考えます。
- 作業の無駄 ・・・・・作業に無駄がある場合です。
- 消費の無駄 ・・・・・事物の消費に無駄がある場合です。
- 設備の無駄 ・・・・・機器や設備に無駄がある場合です。
- 機能品質の無駄 ・・・造りこまれた機能や品質に無駄がある場合です。
- 人の無駄 ・・・・・・人が活用されてないという無駄です。
- 資金の無駄 ・・・・・資金が有効に活かされてない場合です。
- 土地建物の無駄 ・・・土地建物が有効に活用されてない場合です。
- 使い方の無駄 ・・・・機器や設備の使い方に無駄がある場合です。
- その他の無駄 ・・・・上記以外の無駄です。
1.2 無駄の発生原因
無駄が発生する原因を考えます。なお、すべての事物や人が無駄なく活用されるべきとは思いません。本稿では活用されるべきものが活用されない場合に無駄とみなします。
- 指導者・担当者の知識・経験の不足によるものです。
- 指導者・担当者の思考力不足や検討不足によるものです。
- 経営や技術に関する管理能力の不足によるものです。
- 技術進歩による生活様式の変化、政治経済などの政策の変化によるものです。
- 流行や自然の脅威その他によるものです。
1.3 無駄の発生部門
無駄を発生させる当事者を考えます。
- 国と地方自治体 国や地方自治体が発生させる場合です。公金のため問題となります。
- 設計者 機器や施設やシステムの設計者が無駄な設計をする場合です。なお、開発時点では大事をとった設計をする場合があります。
- 企業経営者 事業経営で、資金、人材、設備などに無駄を発生させる場合です。
- 個人事業者 飲食店、理髪店、各種商店などの事業者が発生させる場合です。
- 家計 家族が発生させる場合です。
- 個人 それぞれの個人が発生させる場合です。
1.4 無駄への対処
無駄を削減する方法として次の3つが考えられます。
- 置換型無駄削減法: 対象を、より負担の少ない事物に置換する方法です。
- 廃棄型無駄削除法: 対象を廃棄または廃止する方法です。
- 用法型無駄削減法: 使い方の変更で無駄を削減する方法です。厳密には置換型節約法ですが、変更の主体が“もの”でなく“こと”にあるので分けます。
2. 無駄とりの標準的工程
組織や無駄の規模に関係なく適用可能な標準的な無駄取りの手順を考えます。
2.1 目的の作成
人材の無駄対策、時間の無駄対策、資材の無駄対策など、明確な目的を定めます。必要なら数値目標も含めます。目的に対応した作業手順を作る必要があるからです。
2.2 現状分析
目的に適う精度で対象の現状を分析します。
(1) 企業の場合
- 事業部門別に売上高・原価・損益を求めます。貸借対照表も必要です。
- 人員構成も把握します。
- 金融機関からの借り入れと利率を把握します。
- 経営状況に関する将来の見通しも必要です。
- 出荷後の製品の障害発生情報も必要です。
- 人・物・書類の動きを具体的に把握します。
(2) 国・地方自治体の場合
- 事業部門別に支出額と収入額をまとめます。
- 事業部門別に保有する施設・設備、従事する人員をまとめます。
- 借り入れ金額と支払利息も求めます。
- 経営状況に関する将来の見通しも必要です。
(3) 個人事業の場合
基本的には企業の場合と同じです。
(4) 設計者の場合
機器や施設設備やシステムの設計者が原価低減のために行う原価分析です。原価構成を材料費と加工費などに分けて求めるほか、作業方法や作業の難易、不良発生件数と不良対策工数などを調べます。
(5) 家計の場合
年間の支出の明細を月単位に住居費・光熱水費などの種目別にまとめます。それぞれの項目の必要度も検討します。
(6) 個人の場合
基本的には家計の場合と同じです。
2.3 分析結果の整理
分析の結果を必要となるすべての角度から点検し整理します。無駄の程度、発生部門、発生原因などのほか、関連する項目などがわかるようにまとめます。
2.4 改革方針策定
- 整理された分析結果を1項目ずつ事実の確認します。
- 改善の可能性を吟味します。
- 可能性のある項目について大筋の改善方法を考えます。
- 目標改善額を設定します。
- 額の大きい順に改善の要否を検討します。
2.5 無駄の削減方法の検討
改善の詳細な方法を検討します。
- 検討対象の現在のやり方を細部まで把握し、1.1節で挙げた無駄に該当する事項を摘出します。
- 作業が改善対象の場合、段取り時間と作業時間に分けて無駄を把握します。
- 使用部品や機材などの“物”が対象の場合、過剰品質、非標準品の使用、過大な数の使用の有無などに着目します。
- 対象が製品の場合は不良品の発生割合、商品なら売れ残りの処分方法や数などに着目します。
- 対象が機器の使い方の場合、機器の原理、作りや構造、機器の特性などの理解度と使い方の実際を把握します。
2.6 改善の実施
改善の実施段階です。
(1) 実施案作成
改善を実施する具体的な計画を策定します。担当者、方法の確認、実施時期などを明確にします。
(2) 実施検討
改善責任者は実施の判断をします。担当者が仕事をしやすいように関連部署には事前に連絡されねばなりません。
(3) 実施
実施担当者は定められた方法で改善を実施します。詳細は記録され、実施責任者に報告されます。
2.7 効果の評価
実施した効果は項目ごとに評価されます。皮相的な数値だけでなく精神的な効果や影響なども考慮します。なお、最終的な報告書がまとめられます。
3. まとめ
節約の元となる無駄について多方面から分析をしました。無駄を発生させる経済単位に、国や地方自治体、大小様々な企業、学校法人のほか、家庭や個人があります。これらの経済単位で等しく適用可能な無駄削減手順を提案しました。図1がそれです。
まず、ステップ1で現状を分析します。ステップ2ではその結果を整理し、ステップ3で改善方針を策定します。次のステップ4で改善の方法を考え、ステップ5で実施案を策定します。続くステップ6では改善責任者が実施の最終判断をし、ステップ7で改善を断行します。最後のステップ8では改善の結果を把握し、改善の効果を評価します。