同居トラブルを防ぐためのバリアフリー型二世帯住宅の条件とは?
親世帯・子供世帯の同居というものは一見すると親孝行がなされていて円満に見えますが、全ての同居世帯が円満というわけではありません。
親にとって子供はいつまでたっても自分の子供だから、成人・結婚していて孫がいても子供の頃のように接する親もいますし、子供の配偶者は血のつながりのない舅・姑との軋轢に悩まされたり、孫世代も祖父母の過干渉に悩まされたりするものです。
そして、親世代の高齢化によって介護の必要が出てくるといろいろと面倒なことになってくるのも二世代住宅にまつわる悩みと言えます。
こうした家庭内トラブルを防止できるように二世帯住宅を建てるためにはどのような事を念頭に置いて設計すればいいのでしょうか?
世帯ごとのプライバシー確保は最重要
二世帯住宅に限らず複数の世帯が同居する家で重要なのは「プライバシーの確保」です。幾ら家族でもみだりに踏み入るべきではない境界というものがあります。特に子世帯は夫婦生活もあるので、出来れば親世代と隔絶出来る完全分離型であってほしいと思っているものなのです。
逆に親世帯は、「家族なのだから隠し事の無い方が正しい」と核家族向けの間取りに近い同居型二世帯住宅を好む傾向にあるようです。親世帯・子世帯とは言うけれども、二世帯同居する頃には子世帯も立派な大人になっているのです。
二世帯住宅でプライバシーを確保するためには、世帯ごとに玄関を分ける、一階は親世帯・二階は子世帯というように居住域を分けるといった区切りを付けた間取りにすることが大事です。
「親しき仲にも礼儀あり」というように、プライバシーが筒抜けになっている家では心が休まらないものなのです。
バリアフリー化はポイントを絞って
段差が無く、手すりがあちこちに設置されたバリアフリー住宅は高齢者のいる家庭にとってはまさに福音と言えるものです。しかし、むやみやたらにバリアフリー化すると建築費も跳ね上がるし、逆に不便になってしまうものです。
廊下の手すりは足腰が弱った高齢者には便利ですが、手すりが不要で足が丈夫な人には廊下を狭くする原因のように思われてしまいます。段差がない玄関も便利ではあるのですがスロープ状になっていると何かの拍子で滑って転ぶ原因になりかねません。
二世帯住宅のバリアフリー化は、対象となる家族が出入りする場所に絞り込んで行うのが一番です。親世帯・子世帯で居住域を分離することもバリアフリーの一環です。
また、万が一の場合にそなえて内部に居住域を行き来できるような通路やインターフォンを準備しておくことも大事です。
外側だけでなく内側の防音性も考える
高齢になった親世代と暮らしている時の悩みの種の一つは「親世代は自分たちが出す生活騒音に無頓着」であるということです。
騒音問題というと、大抵は「近所の住人が立てる音がうるさい」という話なので外に音が漏れないように気を使うものですが、一つ屋根の下に住んでいる家族が相手になると途端に気を使わなくなってしまうのです。そして、家族の立てる騒音は外から聞こえてくる騒音よりも遥かに耳に障るものなのです。
二世帯住宅を建てる時は、住宅内部の防音性もしっかりと確保できるような作りにすることが大事です。親世帯からの騒音もですが、子世帯からの話し声なども防げるようにしなければなりません。
「スープの冷めない距離」の維持
二世帯住宅は同居型でも完全分離型でも、トラブルが起きて同居解消になってしまうケースが少なくありません。親というのは子供が幾つになっても「子供は自分がいなければ何もできない」、自分自身の一部であると考えがちだからです。
つまり、間取りだけでなく住人の意識の持ち方も二世帯住宅での生活を円満に行うための条件なのです。
一般に「子世帯と親世帯は、スープの冷めない距離がいい」と言われています。一つ屋根の下で暮らすということはいつでも熱々のスープが出てくる距離ではありますが、精神的に距離を置けるようにそれぞれの世帯が独立出来ていれば問題はないのです。