交通事故でうつ病を発症する人、うつ病で交通事故を起こす人
気が滅入ってしまったり、表情がはっきり出なくなったりするうつ病は現代社会において社会問題になりつつある病気です。しかしうつ病は気分の問題ではなく、脳内物質の分泌量が低下しているという物的証拠があるにも関わらず、仮病・詐病の一種として認識されているのが現状なのです。
そして、うつ病は交通事故とも深く関わってくる病気の一つでもあるのです。
うつ病が原因で起こる交通事故
うつ病の主な症状としては「抑うつ状態が続く、感情の発露がしにくくなる」といった陰鬱な様子が挙げられますが、それ以外では集中力の欠如、睡眠障害、運動神経の低下といった活動に支障をきたす症状が挙げられます。
このようなうつ病の症状は、言うまでもなく交通事故を引き越す要因になりうるものです。
うつ病による睡眠障害の多くは不眠症で、1割程度が眠気が起こりやすくなる過眠症と言われています。
過眠症は居眠り運転が起こりやすくなり、不眠症の場合は寝不足で神経が尖ってしまって焦燥感が募って運転が荒くなりスピードの出し過ぎが頻繁に起こるというわけです。
交通事故が原因で起こるうつ病
俗に「うつ病になりやすい人は真面目な人」と言われるように、自分の置かれている立場や状況に対して深く考え込んでしまうことは、うつ病を発症する原因になります。
交通事故は、そうした「うつ病を起こしやすい状況」を簡単に作り出してしまう恐れが強いのです。
交通事故の加害者の場合、「なぜ自分は事故を起こしてしまったのか」「なぜあの時もっと周囲に気を配らなかったのか」というように自分を責めて、うつ病を発症してしまうことがあります。
逆に交通事故の被害者の場合は、事故で負った怪我の後遺症に悩まされて事故以前の生活になかなか戻れない状態が続くことで、「自分に生きている価値はあるのか」と悩んだ末にうつ病を発症してしまうのです。
もはやうつ病と交通事故は不可分
このように、うつ病は交通事故の原因の一つであり結果の一つでもあるといえます。
もしもうつ病患者が交通事故の加害者で、裁判で心神喪失または心神耗弱状態が認められた場合、刑法39条に基づき責任能力を問えなくなる可能性があります。しかも心神喪失および心神耗弱である場合、民事裁判でも免責になる可能性が高くなるのです。
交通事故の多くは命に関わる事態に発展する以上、責任が取れない人間が車のハンドルを握っている状況は誠に遺憾であるとしか言えません。しかし、うつ病患者が増加傾向にある現代では、いつうつ病患者が運転している車と道ですれ違うことになるのかわからないのです。
逆に、うつ病患者ではない加害者と被害者が事故をきっかけにしてうつ病になってしまうことも珍しくありません。うつ病とは無関係そうな人でも交通事故の加害者になって、被害者に一生ものの怪我を負わせたこと、被害者への多額の賠償金を払わなければならないことが一度にのしかかってくればうつ病にもなるというものです。
このように、現代社会においては交通事故とうつ病は不可分の関係にあるのです。