発症すると死は免れない致死性家族性不眠症とは?
不眠症は病気の一つですが、すぐさま命取りになるというわけではありません。
眠れない日が何日も続けば、耐えられなくなった頭が根を上げて気絶するように寝込んでしまうからです。
しかし、普通の不眠症と違って一度発症すると眠れなくなるだけでなく、身体を満足に動かせなくなりやがて死に至ってしまう不眠症が存在しているのです。
命取りになる致死性家族性不眠症
発症するとやがて死に至ってしまう不眠症である「致死性家族性不眠症」は、治療方法が確立されておらず難病指定されている不治の病です。
致死性家族性不眠症は、「致死」と付いているだけあって発症すると一年以内に患者が昏睡状態に陥ってしまい、やがて死に至るという恐ろしい病気です。
致死性家族性不眠症は40歳~50歳代ごろに発症するのが特徴です。
発症すると不眠症の兆候が表れ眠れなくなり、交感神経の活発化による高血圧や発熱・呼吸が荒くなるといった症状が現れます。
そして、病状が進行すると寝不足からの幻覚や居眠り、居眠り中に見た夢と同じ動きを現実でも行う「夢幻様混迷」といった症状が現れていきます。
そして症状が進むにつれて、身体に痙攣が出るようになっていき身体が自由に動かせなくなってしまい寝たきり状態になり、やがて昏睡状態に陥ってしまうのです。
その背後に潜む異常プリオン
致死性家族性不眠症は、「家族性」という言葉通り家系で発病因子が遺伝していく性質を持っています。
その為、世界中で致死性家族性不眠症の因子を持っていることが確認されているのは40家族程度となっています。
致死性家族性不眠症の因子を持つ家族の多くはイタリア系ですが、日本でも数例が確認されているようです。
致死性家族性不眠症の患者に頭部MRI検査を行うと、運動機能を司る小脳に萎縮が見られ、採取された脳髄液からは異常プリオンを確認する事が出来ます。
プリオンとは、たんぱく質だけで構成された物質で病気の元になる感染性因子として機能します。
異常プリオンが原因で発生する病気としてよく知られているのがクロイトフェルツ・ヤコブ病です。
太古の食人が原因の可能性?
クロイトフェルツ・ヤコブ病の感染・発症は、共食い的な食事が原因になる事はよく知られています。
牛の肉や骨を肉骨粉に加工して飼料として与えて育てることで異常プリオンに感染してしまうというのがクロイトフェルツ・ヤコブ病の発病原因ですが、同じように異常プリオンが原因になっている病気は「共食いが原因になっている」と言うのが通説となっています。
致死性家族性不眠症の原因として考えられているのが「太古の食人」です。
80万年前、ヨーロッパに生息していたとされる原人であるホモ・ガウテンゲンシスは、野生動物と同じように敵対する部族を食べていたといわれています。
このような太古の時代に行われた食人が原因になり、致死性家族性不眠症へと発展していった可能性が示唆されているのです。
誰しもに起こるわけじゃない、けれど油断は禁物
致死性家族性不眠症は、発症因子を持っている家族であっても発症する人と発症しない人に分かれます。
その為、自分が致死性家族性不眠症のキャリアである事を知らないまま一生を終える人も中には居るのです。これこそが遺伝病としての致死性家族性不眠症の怖さであるといえます。
だからといって、「自分の家系が致死性家族性不眠症のキャリアではないから無関係」と高をくくるのも早計といえます。
もしかしたら致死性家族性不眠症のキャリア家系だけれども、先祖から自分の代までたまたま発症しなかっただけかもしれない、という可能性は有りうるのです。
もっとも、現状では治療法が確立されていない難病なので、打てる手はほとんどないのですが意識の端に残しておいた方が良いのかもしれません。