映画やドラマのロケで使われた施設が記念として残る
礼文島では小学校分校が観光施設に
吉永小百合さん主演の映画「北のカナリアたち」のため、北海道の北端に浮かぶ礼文島に「麗端小学校岬分校」のセットが作られた。そのセットは撮影後、2013年に「北のカナリアパーク」となってオープンした。
島のトレッキングコースにも選ばれているこの場所は、本州では見ることのできない、いかにも北海道らしい光景で、映画でも評判になった。
「北のカナリアたち」は2012年に公開され、日本アカデミー賞優秀作品賞を得た。また、吉永さんが優秀主演女優賞に選ばれたほか、森山未來さんが優秀助演男優賞、満島ひかりさんが優秀助演女優賞を得ている。
映画は人気作家、湊かなえ原作。礼文島で小学校教師の川島はる(吉永小百合)が6人の小学生を教える物語。
ある日、生徒の1人が海に転落してしまい、その生徒を助けたはるの夫が溺死してしまう。
その事件で追われるかのように、島を離れたはるは、20年後に教え子の1人、鈴木信人(森山未來)が殺人を犯した、と知る。
はるは、この20年に何が起こったかを知るため、教え子の戸田真奈美(満島ひかり)達に会うために、島に戻る・・・。
映画では、サハリンも望めるスコトン岬や、日本海に沈む夕日が美しい澄海岬(すいかみさき)、断崖絶壁の奇岩などの圧倒的に美しい自然が描かれている。しかし、その美しさと対比するかのように、繰り広げられる人間模様の壮絶さが印象的な映画となっている。
開拓の苦労を描くのに厳しい自然が不可欠
北海道を舞台とした吉永さん主演の映画はもう一つ、「北の零年」がある。
明治政府によって、北海道移住を命じられた開拓団の中心となったのが、小松原志乃(吉永小百合)の夫・英明(渡辺謙)だった。
日高の原野の開墾に立ち向かう人々の苦闘も虚しく、なかなか作物が育たない。
英明は厳しい大地でも育つ稲を求めて、1人札幌に旅立つ。しかし帰ってこない。待ちわびた志乃は、英明を探すために娘と一緒に札幌に向かうのだが・・・。
「北の零年」でも、ロケ地だった夕張に作られた「志乃の家」、「殿の屋敷」のセットの一部が、夕張「石炭の歴史村」に「北の零年 希望の杜」として、2005年に残された。
オープニングセレモニーを含め、吉永さん自身が現地を2回訪れ、エゾヤマザクラを植樹している。
「北の零年」は2005年に公開され、日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞。吉永さんも最優秀主演女優賞に輝いている。
広い原野にロケ地を作れるのも北海道ならでは
大雪国立公園の北に位置する上川町で映画の撮影のためだけに、野球場一つ分のオープンセットが3ヶ月かけて作られた。
その映画は、クリント・イーストウッド監督・主演で1992年にアメリカで公開された「許されざる者」の日本リメイク版。主演は、渡辺謙さんだ。
2013年に公開された日本版「許されざる者」ため、上川町に酒場、民家、警察署から人工の池まで、寂れた宿場町が作られた。
時期的にも冬眠前で餌を求めて徘徊するヒグマ対策がとられ、セットの周囲には電気柵が設置された。
スタッフやキャストも待機部屋を出ないように指示された中で、撮影された。
渡辺謙さんが演じる釜田十兵衛は江戸幕府末期に、維新の志士を切りまくった殺し屋の役。
北海道に身を隠して生活するが、わけあって再び賞金稼ぎとして修羅場に身を投じる。
この映画「許されざる物語」で渡辺さんは、日本アカデミー賞優秀主演男優賞を得ている。
残念ながら上川町に作られた宿場町のロケは、撮影後撤去された。
それでも町の入口にあった「門」と「橋」、そして「刀、銃器持ち込みを禁ず」の立て看板だけが残されている。
このロケ地に残された「門」の前に立つと、遥か向こうに大雪山系の最高峰、旭岳や愛別岳がそびえて見える。
映画の中の宿場町のシーンを思い起こすとと、この上川町に巨大なセットが作られたことが実感できる。
港町、小樽と神戸の映像が印象的
1995年に公開された「Love Letter」は、港町小樽の情緒ある風景が印象的だった。
韓国でも1999年に公開されると大人気となり、小樽に多くの韓国人観光客が訪れた。
主演は二役を演じる中山美穂さん。雪の神戸から始まるオープニングで、渡辺博子(中山美穂)は婚約者、藤井樹の三回忌に出席する。
帰りに博子は彼の卒業アルバムにあった、昔住んでいたという小樽の住所に手紙を出す。すると、いるはずのない藤井樹から返事が帰ってきた。博子は、小樽の住所を訪ねることに・・・。
藤井の働いていた図書館は、レンガ造りの旧日本郵船小樽支店。近世ヨーロッパのルネッサンス様式の石造り2階建てで、国の需要文化財に指定されている。
同姓同名の男女二人と、1人の女性との愛情が、港町の情景に浮かび上がってくる。
富良野といえば、このドラマ
今や北海道を代表する観光地となった富良野が有名になったきっかけは、テレビドラマ「北の国から」だ。
1981年に始まったドラマ「北の国から」は続編やスペシャル編と、実に21年に渡って放送され「2002年遺言」を持って終了した。
しかし、それから10年以上経った今でも、当時のロケ地を訪れる観光客は多い。
東京から北海道の故郷富良野に戻って、大自然の中で暮らす主人公一家の愛情あふれる姿が、北海道での長期ロケによって描かれた。
歌手・さだまさしさんの印象的な主題歌や、番組の随所で使われた北海道の美しい四季の自然のシーンが視聴者の心を捕らえた。
ドラマで使われた丸太小屋、石の家が再現された他、富良野市農協の倉庫を改造した「北の国から資料館」がある。
放送第1話で帰ってきた親子(田中邦衛、吉岡秀隆、中嶋朋子)が降り立った富良野市・布部駅には、原作者の倉本聡さんの筆による「北の国 此処に始まる」と書かれた碑が立っている。
人気の場所は富良野に留まらず、最終話の「北の国から 2002遺言」に登場した「純の番屋」が羅臼町に再現された。
北方領土の国後島を望む場所で、食堂として飲食できる。
他にも多くの印象的な作品が
富良野には他にもロケ地がある。
緒形拳さんのテレビドラマの遺作となった「風のガーデン」(2008年、出演:中井貴一、黒木メイサ)の舞台となったブリティッシュ・ガーデンが新富良野プリンスホテルにある。
ドラマ「優しい時間」(2005年、出演:寺尾聰、二宮和也、大竹しのぶ)で使われた喫茶店「珈琲 森の時計」は、実際に富良野の森の中で営業している。
網走であった実話をもとにした映画「抱きしめたい 真実の物語」(2014年、出演:北川景子、錦戸亮)。
映画「ハナミズキ」(2010年、出演:新垣結衣、生田斗真)のロケ地も、釧路市周辺で訪れることができる。
大都会の札幌も、映画「探偵はBARにいる」(2011年、出演:大泉洋、松田龍平)のロケ地となった。
札幌駅前地下通路、すすきのゼロ番地、ラーメン横丁や、主役の大泉洋がよく利用する喫茶店も、喫茶店トップとして実在する。
続編も2013年に公開されている。
外国作品でも多くつかわれる
韓国や中国のテレビドラマ、映画の舞台ともなり、その後ロケ地をめぐる外国人観光客も多い。
北海道というロケーションは自然、風景など、映画の味付けとして様々な表情を見せている。