なぜ、太陽光発電は屋根だったのか
最も大きな理由は『効率』です。 当然ながら、太陽光が無ければ発電は出来ず、そして太陽は常に動いています。 その為、1日の内で、最も長く日が当たる場所を考えた際、一般の住宅では屋根以外はあまりにも効率が悪すぎました。
さらに、太陽光パネルは『重い』という理由もあります。 メーカーにより重量に差はありますが、パネル1枚当たりの重量は15kgから18kg。 これに固定用の架台が必要になるので、十分な発電量を備えるには全体で100kg程度の重量がかかる計算になります。 これだけの重量を支えるには、屋根に載せるか庭に敷く以外の方法はなかったでしょう。
屋根置きのデメリット
このように、設置場所の限られるこれまでの太陽光発電では、「屋根の向きや角度によっては十分な発電ができない」、「屋根の耐荷重量が少なく設置できない」というトラブルが少なからずありました。
また、雪国の場合では、太陽光パネルに積もった雪は1.3倍の距離まで飛び、家屋を破壊する事例が国民生活センターに届けられています。
技術の進歩が常識を変える
2013年2月のニュースによると、日本フイルコンにて「ソーラーエッジ」取り扱いが始まりました。 またこの他にも、超薄型の太陽光パネルなど、次々と実用化が始まっています。
ソーラーエッジ
今までは数十枚のソーラーパネルを一括でしか管理できなかった欠点を1枚ごとに管理できるようにしたシステム。 ソーラーパネルの一括管理では、「一部が日陰になると全体の発電量が落ちる事」が問題とされてきました。 しかし、ソーラーエッジを導入する事で、発電できないパネルを切り離すなど、発電効率を最適化し、常に97%という最大効率での発電が可能になります。
また、パネルの一部が故障していた場合、これまでは故障個所を特定には人の手で1枚1枚チェックする必要がありました。 しかしソーラーエッジの導入により、パネル1枚ごとをモニタリングする事で、正確な故障個所の特定を自動で行えるというメリットもあります。
http://filcon-photomask.com/service/solaredge.php
窓に使えるシースルー太陽電池
これまで大きく重いパネルのシースルー化に成功したのが、シャープの太陽電池モジュール「NA-B095AA」です。
これは合わせ鏡を使う事で金属フレームを省略。パネルにスリットを施し、窓ガラスやベランダの手すり用として開発された太陽光パネルです。
変換効率こそ6.8%と従来品に比べれば低いものの、太陽の熱を約60%カット(遮蔽係数0.39)できる省エネガラスとしても活用する事ができます。 夏場の発電と防熱効果によるエアコンの負荷軽減を考えれば、大きな省エネ効果が期待できるのではないでしょうか。
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/120925-a.html
有機薄膜太陽光電池のサンプル出荷
また2011年に世界で初めて、発電効率10%の壁を超えた事で話題となった、三菱ケミカルホールディングスの有機薄膜太陽光電池。 これが、さらに11.7%まで発電効率を上げる事に成功し、2013年には住宅メーカーやゼネコンへのサンプル出荷を決定しました。
残念ながら、現在は高層ビルの窓ガラスへの設置が検討されている段階であり、デザイン住宅への応用はもう少し時間がかかるようです。
http://pv-tec.jp/blog/20130122.html
太陽光発電が常識となる未来の可能性
注目を集めつつも太陽発電の普及が進まなかった陰には、家庭ごとの発電効率のバラつき、限定された設置個所、高額な取り付け費用といった理由がありました。
しかしソーラーエッジによる効率化や、安価で設置場所に囚われない有機薄膜太陽光電池の普及により、太陽光発電を設置するハードルは確実に低い物となっていくでしょう。
また、東大やJSTでは、厚さ約1.9マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリの1000分の1)という、髪に巻き付ける事もできる薄さの太陽電池の開発にも成功しています。 これまで一部の屋根かメガソーラーと呼ばれる大型施設でしか活用できなかった太陽光発電が、光の当たるあらゆる場所に設置される日も、そう遠くないのかもしれません。