温泉の「妊婦さんお断り」の真実
前提として【妊婦が温泉に入浴しても、問題はありません】
では、「妊娠初期や後期の妊婦には温泉は禁忌」の表示は、なぜされているのでしょうか?
それには2つの理由が考えられます。
理由1:法令による義務
温泉法第18条によれば、温泉を提供する者は注意事項を施設内に掲げる必要があります。
その注意事項の一つに、「禁忌症」があり、『妊婦は心臓病や、貧血と並んで、禁忌症の1つ』としてあげされています。
妊娠は病気なのか?
この場合の禁忌症とは、「温泉浴に注意、もしくは利用を避けた方が良い症状」の事。
それではタブーとされている「一般的禁忌症」の症例を挙げてみます。
- 急性疾患(特に熱がある場合)
- 活動性の結核
- 悪性腫瘍(がん)
- 重い心臓疾患
- 呼吸不全
- 腎不全
- 出血性の疾患
- 高度の貧血
- その他一般に病勢進行中の疾患
- 妊娠中(特に初期と末期)
これらは、妊娠を除けば、日常生活にも支障をきたす病気ばかりに思えます。
つまり、以上の10項目中に『温泉だから危険』という内容はみつかりません。
事実、温泉による健康への作用を研究している「日本温泉気候物理医学会」においても、『温泉が胎児と妊婦に与える危険性』は確認されていません。
理由2:施設のリスク回避
妊娠初期では15%の発育不全。後期では破水といった危険が常に付きまといます。
また足元が見えにくく、バランスを崩しやすい妊婦さんは転倒するだけで大変な事態を引き起こす可能性もあるでしょう。
施設側はトラブルを避ける必要がある
万が一、自身が提供する施設内で事故がおきてしまった時、施設はその責任を問われることになるでしょう。こういった事態が起きた場合、「施設は面倒事になった」では済まされません。
このような、取り返しのつかないトラブルを避ける為の対処として、入浴を制限する事は当然の措置とも考えられます。
妊婦と温泉の危険性は明らかになっていない
以上の事からも分かる通り、「温泉そのもの」に危険性はありません。
危険なのは、「転倒」と「のぼせ」。他には「敏感肌による肌トラブル」などがありますが、これらは入浴方法や、事前の準備で十分に対処可能なリスクです。
妊婦が“安全”に温泉を楽しむポイント
温泉に危険はない=安全であるとは言えません。
特に、旅行など環境を変える事はストレス発散に効果的ですが、とっさの場合に対処が難しくなります。
いつも以上に、安全に気を配る必要があると言えるでしょう。
そこで、安全の為のポイントをまとめてみました。
清潔な温泉を選ぶ
感染症の心配をする人が多くいますが、温泉浴が感染の原因となる可能性は低いと考えられています。
しかし、脱衣所などでの感染は否定できません。
また、ほぼ毎年のようにレジオネラ菌の感染が確認されていますが、これは妊婦かどうかは関係なく、成人男性であっても注意しなければなりません。
入浴は10分以下。長時間の入浴は避ける
妊娠中は普段よりのぼせやすくなります。
この為、1度の入浴は10分以下とした方が良いでしょう。
また、42℃以上の高温。30℃以下の低温では血圧が上昇するので避ける事が推奨されています。
刺激の強い温泉は避ける
温泉浴には、刺激の少ない『単純温泉』が良いでしょう。
中でも「弱アルカリ性単純泉」は、古い角質を分解し、すべすべの肌を作る『美肌の湯』とも呼ばれます。
単純泉の代表例としては、箱根などが有名です。
「マタニティプラン」のある宿を選ぶ
予約の段階で妊娠している事を伝えれば、どの旅館でも配慮を行ってくれるでしょう。
しかし、より安全を考えるなら「マタニティプラン」を用意している温泉宿が望ましいと考えます。
貸し切りのお風呂の使いやすさや、スタッフの対応、地元も産婦人科との連携などをあらかじめ確認しておくと、旅がより安心なものとなるでしょう。
旅行スケジュールはいつもの半分が鉄則
妊婦が温泉旅行にいき、大切な夫婦二人だけの時間を過ごすのは素晴らしい事でしょう。
しかし、せっかくの旅行だからと言って、予定を詰め込みすぎるのはよくありません。
デリケートな妊婦の体を気遣うなら、スケジュールは普段の半分程度に控え、空いた時間で生まれてくる赤ちゃんの名前を話し合うのもいいのではないでしょうか?