食育の重要性
突然ですが質問です。「あなたは、お箸を正しく持つことができますか?」そう聞かれて、「当たり前じゃん、こう持てばいいんでしょ?」と答えられる人は別に良いのです。しかし、中にはこういう人もいるかもしれません。「・・・私の持ち方、変かも・・・」実はこういう人は少なくないのではないでしょうか。ここで取り上げた「箸の持ち方」はほんの一例ですが、今、「食」に関する基本的な知識を身につけることが教育現場(だけではありませんが)において強く求められています。「食に関する教育」略して「食育」です。
国においても、この取り組みは既に始まっており、2005年に「食育基本法」という法律が制定されました。
とはいえ、この言葉自体は最近出来上がったものではありません。明治時代の軍医である石塚左玄が自らの著作「化学的食養長寿論」「通俗食物養生法」において「体育智育才育は即ち食育なり」という記述を行い、その重要性を訴えました。
またその後、報知新聞編集長・村井弦斎が、同新聞にて連載していた人気小説「食道楽」の中で「小児には徳育よりも、智育よりも、体育よりも、食育がさき。体育、徳育の根元も食育にある。」と書いています。
つまり、食育は今だから大事ということではなく、昔からその重要性は叫ばれていたのです。しかし、戦後の経済発展重視の教育や道徳教育の遅れにより、食育の重要性が軽視されてしまっていた部分がありました。その点を見直すべく、先にも述べた食育基本法という法律が出来上がったのです。
このような法律を引き合いに出すまでもなく、「食べる」ということは、人間の生活においてとても重要なことであり、子供たちに対し大人が責任を持って伝えていかなければいけない知識です。でも、どうやって教えて行けばよいのでしょうか?
食育のための資格「食育インストラクター」
そのための資格として注目されているのは「食育インストラクター」です。「インストラクター」という名前が「何か教える関係の資格かな」と思わされますよね。この資格が具体的にどのような資格なのか、ご説明しましょう。この資格は、「NPO法人食育インストラクター協会」という団体が認定する資格です。資格は初級にあたる「プライマリー」から最上級の「一級」まであり、当然求められる知識の習熟度や実務経験が異なります。上の級に行けば行くほど難しいのは言うまでもありません。
ここでは、「プライマリー」の資格について、取得方法をお伝えしましょう。
さらに、「実は大学が家政学部だったから、家庭科の教員免許を持っている」「今は使っていないけど、栄養士免許がある」という人はチャンスです。協会が定める一定の資格(先にあげたものの他に、看護師や保育士、幼稚園教諭なども含まれます)を持っている場合、さらに上の級を目指せる可能性があります。この資格に興味を持った方は、今一度自分が持っている資格をチェックしてみましょう。
食育インストラクターの活躍するフィールド
それでは、食育インストラクターになると、具体的に何ができるのかということについてお話しましょう。
先ほど述べた食育インストラクター協会が定める「食育の3本の柱」では、「安心・安全・健康の選食能力を養う」「衣食住の伝承・しつけは家族の団欒から教える」「食糧問題やエコロジーなど、地球の食を考える」ということが定められています。
漠然とした言い方だと、これらのことを教えることができる、ということです。しかし、活躍の場は「教える」ということだけではありません。この資格を持っているということは、食に関する幅広い知識が身についている、ということの証明でもあります。
その知識を生かして活躍できる場はたくさんあります。食を通じて人々に「健康的で『食べる』ということを大切にする生活を送る重要性を説く」のがこの資格の役割です。そのため、
最近では企業でも食育セミナーやイベントを行っていることが多いので、そういった場所で講師として活躍するのも資格の活用法の一つとなるでしょう。また、食に関する他の資格もあわせて取ることで、知識を組み合わせたイベントを行うことができるので、仕事の幅はぐっと広がるはずです。
たとえば、フードコーディネーターや調理師と組み合わせれば、「健康でおいしいメニューの開発」ということもできてしまいます。健康でおいしいメニューは生活習慣病が問題になっている今の時代、強く求められているものだからです。もちろん、家の外で活躍するだけが食育インストラクターの仕事ではありません。
あなたにとって一番大事な生徒、つまり家族に食育をすることも大事な仕事です。 普段から食材のことを教えたり、季節の行事と食事の関係を教えたり、と家の中でもやれることはたくさんあります。そのため、お子さんをお持ちのお母様にもぜひ勉強していただきたい資格です。