抗生物質を飲むと変なおりものが出る件
「疲れているときは、自分の体の中の弱い部分に症状が出る」こういうことは、誰にでもあることだと思います。私も例にもれず、疲れきってしまうと具合が悪くなります。では、私の場合どこに症状が出るかというと・・・「喉、鼻などの気管支周り」です。空気が乾燥しているところに長くいると、ほぼ間違いなく喉が痛くなるし、鼻がむずがゆくなります。
先日、仕事で長期休暇が取れた彼とニューヨークに行きました。帰りの飛行機(ニューヨーク~成田間)は14時間にも及ぶ長距離フライトです。飛行機の中はとても乾燥していたので、のど飴をこまめになめたり、飲み物をできる限り飲むようにしたり、マスクをしたり、と自分なりに対策をがんばりました。しかし、そんな自分の奮闘もむなしく、見事に喉と鼻をやられてしまいました。
「し、仕方がない・・・」と思い、かかりつけの内科へ。「あー、完全に喉やられているね。薬処方しておくから、飲んで様子見て。だめだったら耳鼻科行って」と先生はおっしゃり、抗生物質を含む「喉に効くと思われる」薬をいくつか処方してくださいました。そして、言われるがままに薬を服用していたのです。
服用し始めて数日たったある日。私の体に異変が起こりました。朝起きると、かゆいのです、あそこが。いや、そんな言い方良くないですね。局部にものすごいかゆみを感じたのです。「え!?」と思い、トイレに行って確認してみると・・・「なんか、変なものが出ている!!!」はい、カッテージチーズ状のおりものが出ていたのです。
あわてて婦人科に行ってみた
「これは明らかにおかしいだろう!」と思った私は、あわててかかりつけの婦人科を予約し、診察を受けました。まずは、先生にこれまでの経緯を説明しました。「旅行に行った→長いフライトだったので喉をやられた→抗生物質を飲んだ→カッテージチーズのようなおりものが出た」というように。
私の話をふむふむ、と聞いてくださった先生は「経緯はわかりました。早速検査しましょう」とおっしゃり、必要な検査と処置を始めました。といっても、内診台に上がり、おりものを取り、洗浄をして薬を入れてもらうだけです。ものの5分もかかりませんでした。
「カンジダ膣炎ですね」と冷静に言われた
検査と処置をしてくださった先生は、診察室に戻ると、私にこうおっしゃいました。「おりものを培養検査しないと断言はできないけど、症状からしてカンジダ膣炎ね」と。そして、こう続けたのです。「あなた、体調崩して抗生物質飲むとこうなりやすいでしょ?」と。おっしゃる通りです、先生・・・そう、私は抗生物質を飲むとかなりの確率でこうなるのです。そこで、カンジダ膣炎について調べてみました。
カンジダ膣炎ってどんな病気?
まずは、カンジダ膣炎について基本的なことをお話します。
カンジダ膣炎の症状を間単にまとめると、「膣内に異常が生じるため、おりものの形状がおかしくなり、局部にかゆみを生じる」ということです。たいていの人は、「おりものがおかしい」いうことで気付くのではないでしょうか。
では、このような症状を引き起こす原因から探りましょう。人間の体内にいる真菌が引き起こす病気です
カンジダ膣炎の原因は、「カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)」と呼ばれる真菌です。この真菌自体は、健康な人の皮膚、消化管、膣の内部に常にあるものです。だから、これがあるから悪い、ということではありません。問題は「バランスが崩れる」ということにあるのです。
女性の膣の中には、このカンジダ・アルビカンスの他に乳酸菌などさまざまな微生物がいます。普段は体の調節機能が働いていて、カンジダ・アルビカンスが悪さをすることはありません。しかし、なんらかの原因でそのバランスが崩れてしまうと、カンジダ・アルビカンスが異常に増殖し、膣内の異常を引き起こすことになるのです。
抵抗力が弱ると誰でもなる可能性があります
カンジダ膣炎は婦人科領域の病気です。そのため、(言い方は悪いですが)「遊び人がなる性病でしょ?」と誤解されることも多いです。それは違います。疲れ、寝不足、ストレスなどで体の抵抗力が弱った場合、女性なら誰でもなる可能性はあるのです。決して「この人、遊び人だから」と色眼鏡で見ないようにしましょう。
また、カンジダ膣炎自体は悪性度の低い病気ではあります。他の性病と違い、それだけで不妊の原因になることはありません。現に、妊娠中でもこの病気にかかる妊婦さんはいます。その場合も、基本的には膣に薬を入れる、という形で治療が行われます。
また、出産直前にこの病気にかかった場合、赤ちゃんにカンジダ・アルビカンスを感染させないよう、点滴を打ちながら出産をすることになります。そこまで大騒ぎはしなくてもいいかもしれません。しかし、カンジダ膣炎の症状はずっと続いているとかなりつらいものがあります。また、そんな病気になるまで免疫力が弱っている、ということは、間違いなくほかの弊害を引き起こすことになるでしょう。
きっちり治療をすること、そして、できる限りかからない生活を心がけることが大事なのは言うまでもありません。
カンジダ膣炎の治療法って?
それでは、カンジダ膣炎の治療法についてお話します。大きく分けて、次の3つの治療法があります。順を追ってみていきましょう。
方法1 婦人科で薬を処方してもらう
まず、「初めてカンジダになってしまった」という人にオススメしたいのがこの方法です。そもそも、初めてこの病気になる人は、「自分の病気は『カンジダ膣炎』というものだ」とわからないのが普通です(医療関係者なら別かもしれませんが)。ちゃんと専門家である婦人科の医師の診察を受け、薬の処方を受けることが必要でしょう。
薬の処方を受ける場合、膣の中に挿入する抗真菌薬とかゆみを和らげるための軟膏が処方されることが多いです。
抗真菌薬は大体1週間分くらい処方されるので、全部使い切りましょう。「かゆくなくなったからもういいや」と使うのをやめると、かなり高い確率でぶり返します。注意してください。
方法2 薬局で買うことができる薬で治療する
「実は前にもカンジダやっている」という人には、別の選択肢もあります。それは、薬局で買うことができる薬を使うことです。
大正製薬から出ている「メディトリート」(参考:http://www.taisho.co.jp/meditreat/)という薬がそれにあたります。
この薬を買うときは、薬剤師から説明を受け、セルフチェックシートで自分の症状をチェックする必要があります。簡単にほいほい買えるものではないのは確かですが、「事情があって医療機関に行けそうにない」という人は覚えておきたい手段の一つです。
方法3 善玉菌を増やすために乳酸菌を摂る
「これは明らかにカンジダだと思うけど、薬に頼りたくない」という人もいるかと思います。そういう人は「自然に治ることはないのかな」とも思うでしょう。このあたりのお話を少ししましょう。
女性の膣には、細菌が異常増殖しないよう、善玉菌の力で洗い流してしまう自浄作用が備わっています。そのため、症状の軽い場合であれば、異常増殖したカンジダ・アルビカンスも膣の自浄作用によって洗い流してしまうことができるでしょう。そして、自然治癒に向かう可能性もあります。
治療の原則は診察を受けること
では、膣の自浄作用を高めるにはどうすればいいのでしょうか。簡単にできる方法としては、「ヨーグルトなどを食べ、乳酸菌を摂取する」ことです。体内に乳酸菌が取り込まれることにより、膣の中にも乳酸菌が増えます。それにより、膣の自浄作用が高まり、カンジダ・アルビカンスを洗い流す効果が期待できます。ヨーグルトが苦手、という人は、乳酸菌のサプリメントを摂取してもいいかもしれません。
この方法をとる場合、注意して欲しいのは「辛くなったら医療機関や薬に頼る、という選択肢もある」ことを頭の中にとどめておくことです。あくまで初期だったら、乳酸菌だけで何とかなる可能性はあります。しかし、ある程度症状が進んでしまうと、その可能性は限りなく低くなります。どうこう言う前に、かゆくてたまらないでしょう。治療法の原則は、「医師の診察を受けること」と覚えていてくださいね。
カンジダ膣炎にならない生活の知恵
ここまで読んでこられた方は、「カンジダ膣炎って、地味に辛い病気みたい」と思っていただけたのではないでしょうか。では、カンジダ膣炎にならないためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。考えられるポイントを挙げてみました。
体の抵抗力を高める
まずやって欲しいことは、「体の抵抗力を高める」ということです。先ほども書いたように、ストレスや寝不足などで体の抵抗力が弱ると、カンジダ膣炎になるリスクは一気に高まります。そして、そういう場合は他の体の不調を引き起こしていることも多いので、必然的に抗生物質など、体内の細菌バランスを崩す薬を飲むことも多くなります。
こういう状況に陥ることをできる限り防ぐには、次のようなことを生活で心がけてください。
・睡眠不足に気をつける。
・ストレスをためない、上手に解消する方法を持つ。
・乳酸菌を多く含む食品(ヨーグルトなどの発酵食品)を積極的に食べる。
・適度な運動をする。
デリケートゾーンのお手入れをする
次にやってほしいことは、「デリケートゾーンのお手入れをする」ということです。普通に生活していれば、お風呂に入って体や髪を洗うことが多いと思いますが、デリケートゾーンのお手入れを意識している人はなかなか少ないのではないでしょうか。気をつけたほうがいいポイントを列記します。
デリケートゾーン専用の洗剤で局部を洗う
普通の石鹸やボディソープでごしごし洗っては、膣にとっていい菌まで洗い流してしまうおそれがあるので、やってはいけません。かならず専用のクリーナーを使いましょう。私が使っているのはこちら。
「ミシャイブブロッサム インナークレンジングムース」
(参考:http://www.misshajp.com/goods/details.php?goods_id=3229)です。
生理のときでも使えるので重宝しています。この他にもデリケートゾーン用の洗剤はたくさん出回っていると思うので、検索してみるといいでしょう。
通気性の悪い下着をはかない
通気の悪い下着をはいていると、どうしても湿気がこもってしまいます。カンジダ・アルビカンスも一種の「カビ」なので、じめじめしたところでは繁殖しやすいです。同様の理由で、「おりものシートを使いすぎない」「締め付ける服装をしない」ことにも気をつけましょう。
女性なら、婦人科の「かかりつけ」を持とう!
最後に、声を大にしていいたいことがあります。それは、「法的に結婚できる年齢(16歳以上)になったら、婦人科のかかりつけを持ったほうがいい」ということです。カンジダ膣炎に限らず、女性特有の病気はたくさんあります。その中には、放置しておくと将来の不妊につながってしまうものもたくさんあるのです。
また、女性にありがちな「生理の悩み」。「生理が重い」「生理前はいらいらしてしょうがない」という症状を抱えている人も多いのではないかと思います。さらに、パートナーがいる人なら、妊娠や避妊についても気を配ることが必要になるでしょう。つまり、女性の一生と、婦人科領域で扱う病気には、密接な関係があるのです。言い換えれば、「婦人科にお世話にならない女性などいない」ということです。
婦人科系の検診は未来の自分を幸せにする
病気を予防すること、そして、パートナーにめぐり合ったときに幸せに毎日を過ごすためには、自分の健康に気を配ることが強く求められます。そこで、自分では「何も異常はない」と思っていても、年に1度は子宮がん検診を含めて、婦人科で検査を受けることをオススメします。私はこれを習慣付けているおかげで、今まで大変な病気をせずにすんでいます。
確かに、婦人科の診察には「内診」と言って、専用の椅子で局部を診察する、という医療行為があるので、抵抗感がある人も少なくないでしょう。しかし、医師はあくまで仕事の一環としてそういうことをしているので、過度に恥ずかしがる必要はないと思います。「どうしても男の人に見せるのは嫌」という人は女性の先生がいるクリニックを選べばいいだけのことです。