肥料は有機で!「土の元気」を考えた肥料の選び方とは|トピックスファロー

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2016年6月30日
肥料は有機で!「土の元気」を考えた肥料の選び方とは

肥料は土に元気があってこそ、その効果を発揮します。今回は、栄養分だけでなく、土の環境にもやさしい肥料の選び方と、それぞれの肥料の特徴をお伝えします。

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土作りもしてくれる。肥料の基本は有機

そもそも肥料の役割とは何でしょうか。それはもちろん、“野菜に栄養を与えること”に間違いはないのですが、肥料はそれ以外にも、実は大切な役割を担っています。その役割は、「土作り」です。

野菜を含め植物は、彼らが根を生やす土にその命を預けているといってよいほど、土で育ち、土に生かされています。肥料は、その土の環境を考えたうえで選択しなければなりません。その、「土作り」という大切な役割を担うことができる肥料、それが有機肥料です。 土から新芽が発芽している写真

栄養だけじゃない!有機肥料の利点とは

・土の中の微生物が有機物を分解することで、土の生態系を安定させる(もちろん、過剰な施肥は禁物です)

・野菜にとっての理想的な「団粒構造の土」をつくる手助けとなる
団粒構造の土とは、土の粒子が結合して粒状となっているもののことで、野菜にとって理想的な「適度な水持ち」と「適度な水はけ」を備えています。この団粒構造の土は、土の中の有機物が増えることで発達します。

・堆肥などには、化学(化成)肥料※には含まれていない微量要素が含まれている
微量要素とは、窒素やカリウムなどのように多量に必要ではないものの、不足すると野菜の生育に障害を起こす栄養素をさします。

私たち人間が自然の恵みで作られた料理で栄養を摂るように、野菜も自然由来の栄養を求めています。私たちにとってのサプリメントにあたる化学肥料は、特定の栄養分が足りない時、または、時期的に特定の栄養素が必要な場合に、施肥量に気をつけながら与えましょう。

※化成肥料とは、窒素、リン酸、カリウムのうち、2種類以上の栄養成分を含み、かつ化学的な合成によりつくられた肥料です。

植物性と動物性。有機肥料の種類と特徴

有機肥料には動物性のものと植物性のものがあります。また、原料を生のままで市販しているものと、発酵させ、より安全な形で提供しているものがあります。私たち初心者は安全な「発酵済み」のものを選びましょう

以下がそれぞれの有機肥料の特徴です。 肥料として使う米ぬかの写真

植物性肥料

  • 油粕
  • タナネや大豆などから油を採ったあとのカスです。窒素(N)が多く含まれています。生のままのものは、施肥後すぐに種や苗をうえてしまうと発生するガスによって発芽などに障害を起こす可能性がありますので、「発酵済み」のものを選びましょう。

  • 米ぬか
  • 栄養豊富な肥料で、油粕などにまぜて使用します。リン酸(P)が多く含まれています

動物性肥料

  • 鶏糞
  • 鶏はトウモロコシなどの栄養価の高い飼料を食べるため、糞系の肥料の中で最も栄養分が高く、特にリン酸(P)が多く含まれています。リン酸は実や花に必要な栄養素ですので、トマトなどの実もの野菜などに元肥、追肥として使用します。

  • 豚糞
  • 鶏糞についで栄養価の高い肥料です。豚は植物性のエサを多く食べることから、豚糞には堆肥のような土壌改良効果もあります。鶏糞と同じく、割合としてリン酸(P)が多く含まれています。

  • 牛糞
  • 牛糞は糞の肥料の中で最も栄養分が少なく、一方、糞系の中では最も土壌改良効果が高い肥料です。牛糞の肥料としての働きは緩やかなことから、こちらは肥料として使用するというより、土壌改良の資材として土に混ぜ込みます。

  • 骨粉
  • リン酸(P)が多く含まれています。窒素やカリを含んだ肥料と併用します。

以上のことから、鶏糞は栄養価の高い肥料として、豚糞は緩やかに効く肥料として、牛糞は土壌改良の資材として利用するとよいでしょう。 鶏糞と豚糞と牛糞の写真

配合肥料

野菜の生育状態やそれぞれの野菜の種類に適した栄養バランスで配合した肥料で、三大要素(窒素、リン酸、カリウム)のうち、2成分以上を含む肥料です。配合肥料には有機肥料と化学肥料の組み合わせのもの、動植物を原料としたいくつかの有機肥料を組み合わせたものなどがありますが、一般的には「有機肥料を中心とし、一部化学肥料を配合したもの」が多く売られています。

配合肥料は、種類の違う肥料を組み合わせることで効きの緩急や栄養素にバリエーションをもたせていますので、初心者にとっても使いやすい肥料です。パッケージにはたいていその商品に適した野菜の種類や栄養素の割合などが記載されていますので、初心者の方は、育てている野菜にあった配合肥料を選ぶとよいでしょう。

土の環境を改善する堆肥

これまでは肥料についての話でしたが、土づくりという観点から、野菜作りには堆肥を利用することをオススメします。堆肥はもともと土壌の環境をよくするためのものです。しかしその原料であるワラや樹木が野菜に必要な栄養素を生み出すことから、堆肥は肥料としての側面ももっています。

また、鶏や豚の糞などの有機物を混ぜこむことで肥料効果を高めた堆肥も売られています。一般的に堆肥は有機肥料とは違い、はっきりとした栄養成分の比率や量は示されていませんが、野菜にとって必要な微量要素を含んでいます。 鶏や豚の糞などの有機物を混ぜた堆肥

トマトにはリン酸!肥料選びのコツとは

以上のように、肥料にはさまざまな種類や内容がありますが、選ぶうえで基準となるのが、そこに含まれている栄養素の種類や比率です。この野菜にはこの栄養が特に必要だ、という基準を理解することで、肥料選びは楽になります!

以下はその目安となる情報です。

食べる部分で選ぶ

  • 葉物野菜には「葉肥え」といわれる窒素(N)が多く含まれているものを選ぶ
  • 実もの野菜には「実肥え」といわれるリン酸(P)が多く含まれているものを選ぶ
  • 根菜には「根肥え」といわれるカリウム(K)が多く含まれているものを選ぶ

肥料のパッケージには、含まれている栄養素とその比率がN:P:K=5:2:1という形で表示されています。その比率を参考に選んでみてください。 様々な種類の野菜の写真

足りていない栄養を予想して選ぶ

  • 窒素(N)が足りない
  • 葉が黄色っぽくなり、生育が悪い。

  • リン酸(P)が足りない
  • 葉の色が濃くなり、大きさも小さくなる。葉のツヤが失われる。

  • カリウム(K)が足りない
  • 葉が黄色くなり、枯れるなどする。

野菜の葉や全体の様子で、どの栄養素が不足しているのかがある程度予測できます。肥料は彼らの状態をよく観察して選びましょう。

出展:
「育つ土」を作る 家庭菜園の科学 木嶋利男
おいしいベランダ野菜 小島理恵
菜園生活パーフェクトブック 藤岡成介
ベランダ菜園スタートBOOK 平野編集制作事務所

著者:入江佑未子

フリーライター
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濃い~時期も薄い時期もありますが、ライター歴は18年です。園芸を扱う出版社に勤務した後、地域情報サイトにてケーキ屋さんや雑貨屋さんなどの取材記事を担当し、その後はフリーで活動しています。弁護士事務所のサイトコンテンツや、生命保険の記事など、お堅い記事も書いています。